羅紗バサミ(裁ちバサミ)は洋服の仕立屋さんが使う布を切るために使うものです。伝世舎では主に表具裂を切るのに使っています。
このハサミ、本来は布用、紙用と分けて使うべきもので、併用すると切れ味が落ちてきます。
伝世舎で使っているハサミは、50年以上に渡って使い続けてきたものですが、表具用として使用してきた物ではありません。親が仕立屋だった頃使用していたハサミです。日本橋の木屋で購入したとのこと。
職人は道具を大切にしますが、仕立屋の場合はとくにハサミにこだわります。
親も研ぎ師をわざわざ呼んで研いでもらい、切れ味をチェックしながら何度も研ぐ作業を繰り返していました。納得しなければ終わらないほどこだわります。
「仕立屋と理・美容師のハサミの研ぎは割に合わない」とは研ぎ師さんの言葉です。
羅紗バサミ
しかし、そのような羅紗バサミを譲り受けながら、普段は布と紙を余り考えずに併用していました。反省しきりです。
なおかつ、あろうことか金襴を切るという暴挙に出てしまいました。金襴は金箔の糸で文様を織り出しています。金はいくら柔らかいと言っても金属です。当然ながら刃こぼれが生じてしまい、布が切りにくくなってしまいました。
金襴 金箔の糸で模様を織り出す
ハサミは研ぎの中でも特に難しく、おいそれとできるものではありません。ですから日本橋のコレド室町にある木屋さんに研ぎをお願いしました。
江戸から続く老舗である木屋は、言わずと知れた刃物の店です。ここで販売した製品でないと研ぎをしてくれません。
「かなりひどい状態ですね」と言われてしまいました。こちらとしても本当に申し訳なく思っています。木屋では銘を確認して実際にここで扱っている商品だと言うこと、ハサミを製作した工房はまだ健在と言うことが分かりました。研ぎ師の手に負えなければ直しは不可能ですが、何とか頑張ってみる、とのこと。
東鋏 TOKYO Kamekichiの銘がある
さて、研ぎをお願いして10日ほど、できあがってきました。
ハサミを止めるネジが駄目だったので交換してもらい、綺麗に仕立てて頂きました。
これで税込み2,700円也。安いです。
綺麗に蘇りました
切れ味も元に戻りました
このハサミは布専用として使い、大事にしようと思っています。
やはり道具のメンテは大切だなと思った次第です。
そうなると金襴はどのハサミを使ったらいいのだろう?