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(2024/9/15)

 このページでは展覧会の前半(2階)、主に90年代の有名作家の作品を紹介する。


 高橋氏がコレクションを本格的に始めたのは1997年だという。自分が美術館に通い始めたのも1997年だった。90年代は村上隆とか奈良美智が若手として出てきて美術館で取り上げられ始めたころ。自分は97年にいわき市立美術館で森村とか草間の作品を見たのが初めての日本現代美術だったと思う。

 本展覧会も草間彌生から始まる。
 見たことあるような作風の作品が並ぶ中で、70年代のコラージュ&アクリルの絵がいいと思った。よく見る70年代草間のコラージュのような作風で、しかし水彩・パステルで描いた部分もある。ネットがあり、ドットもある。双頭の横顔が組み合わさった顔。現在の草間につながる、カラフルでポップな作風。
 マカロニマネキンもあり、結構気持ち悪い。もこもこの中に靴が取り込まれている「アンニュイ」など。

 村上隆は代表作を持っているわけではないが、初期の「ポリリズム、赤」(1989)がある。アメリカの影響のもとに日本で作られたプラモデルのアメリカ兵をコラージュしている。兵士を貼ることで、アメリカ抽象表現主義風絵画の赤いうねりが戦場のように見えてくる、かもしれない。

 

 


 「ズザザザザザ」(1994)はほとんどがフラットな赤い画面で、中央に白いしぶきとDOB君、という大胆な構図。赤に白い線はバーネット・ニューマンを参照しているのかもしれないし、しぶきは日本絵画を参照しているのかもしれない。


 会田誠「紐育空爆之図」(1996)。
 自分が現代美術を好きになるきっかけとなった展覧会の一つが1999年・水戸芸術館の「日本ゼロ年」展だった。自分は この展覧会で、既に有名だった村上隆、ヤノベケンジの作品を初めて見て、横尾忠則の絵画作品を初めて知り、会田誠、大竹伸朗小谷元彦、できやよいを知った。ここに挙げた作家は全て、今回の高橋コレクション展でも見ることができた。
 その日本ゼロ年展で「紐育空爆之図」を含む戦争画リターンズを見て、会田誠を好きになったのだった。やまと絵風の屏風に、日本の零戦がニューヨークを空爆するという、起こらなかった場面を描く。ふすまに描かれ、ビールケースに乗っている。

 

 


 展示の前半である1階は、90年代の日本の現代美術の有名作家は何でもあるのであはないかというくらいに揃っている。個人コレクションだが網羅的で、偏った好みはあまり感じられない。ただ、その作者の中でも特に良品が多いように思う。
 高橋コレクションには90年代の日本美術の代表的作品がそろっていてすごい。しかし、こういうコレクションは本来、東京都現代美術館が作っていないといけないと思う。実際は東京都現代美術館は2000年代に(確か石原都知事の時代に)購入予算が0円になった。2001年に展覧会を開いたにも関わらず村上隆を持っていないのだったと思う。


 太郎千恵蔵。「Girl」(1998)、「Desire of Machine」(1995)。アニメのキャラクターみたいなものを大画面に大胆に描く。ばかっぽくてけっこう好き。

 


 ヤノベケンジ「イエロースーツ」(1991)。鮮やかな黄色の、ずんぐりしたタンクのようなスーツ。鮮やかな青の天秤のような機械。左に植物の入ったボックスがあり、そこからチューブがつながり、スーツの人物が呼吸できるようになっている。ヤノベの作品によくあるがガイガーカウンターを持っている。恐らく、核戦争で汚染されて空気を吸えなくなった未来の世界。

 

 



 天明屋尚(てんみょうやひさし)。「ネオ千手観音」(2002)。千手観音は合唱する手以外の40手に様々な持ち物を持つが、天明屋の千手観音は銃や刃物など様々な武器を持つ。正面に組んだ手は爆弾を持っているようだ。日本画風に見えるがアクリル絵画で描かれている。表面には汚れがあり古びたような感じを出している。日本画っぽい平面的・装飾的な現代絵画で、一時期ちょっと気になっていた画家。

 



 奈良美智「人面犬」(1989)。紙に描かれたゆるい絵だが、かなり初期の作品。目の吊り上がった女の子を描くより前の作風。

 


 鴻池朋子「第4章 帰還-シリウスの曳航」(2004)。オオカミ、少女の赤い靴、剣が出てくる連作絵画の最初の1点。何度も見たものだが、微細に描かれた大作で好きな絵。

 


 加藤美佳「パンジーズ」(2001)。少女と骨。粒子のような白い点。まつ毛の細い線。当時水戸芸術館で見たのを覚えている。懐かしい。
 

 


 前本彰子「BLOODY BRIDEⅡ」(1984)。よく知らなかったが今回常設展を合わせて複数の作品を見ることができた。花が描かれた、割れた鏡のちりばめられた絵画に、大胆にドレスが貼り付けられている。ポップな感じとおどろおどろしさ。ふざけた感じの招き猫が左にいる。ドレスには花やキューピーが装飾されている。赤いドレスだと思ったがタイトルによれば血染めのウエディングドレスである。


 

 

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 小谷元彦。「ファントム・リム」(1997)。小さい女の子が手を赤く染めて寝ている写真が並ぶ、有名な初期作品。女の子の手はラズベリーで赤く染まっている。キリストの磔刑図を連想する。
 「Human Lesson(Dress 01)」(1996)。オオカミが左・右に口を開けるコート。おそらくこのコートを着ようとしたらオオカミの口から手を出すことになる。

 



 


 小林正人「Unnamed 2004 #14」。金髪の裸婦がぼんやり描かれた絵。髪の黄色と背景の組み合わせが美しい。画布はきっちり張られていなくて、壁に立てかけてある。画布を張ってから描き始めるのでは遅い、と手でじかに描きながら画布を張っていく(画布を張り終えると絵も完成している)のが小林の特徴。絵の具のチューブが1本、絵の下側に置いてある。青の絵の具チューブだから、絵を描くのには使われていない。
 2000年に宮城県美術館で回顧展&作者ギャラリートークを見たのが懐かしい。当時は抽象的な表現だったが、2003年から裸婦を繰り返し描くようになった。


 

 後半(B1F)はここ10年くらいの作品が多く知らない作家も多い。面白い作家をたくさん知ることができた。

 

 

つづき;

 

 

 

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