「おおきく振りかぶって」と、ちばあきおの関連性

先日、アニメの「おおきく振りかぶって」と、
続編の「夏の甲子園編」までを全部観ました。
野球はあまり詳しくないんですけど、
試合シーンで全ての配球を飛ばさず
試合に負けた人達の気持ちとか
野球部員を息子に持った両親の心理描写まで
詳細に描き込むという手法は
観ているうちに惹きこまれていきました。
この作品を観て思ったことは、
ちばあきおの「プレイボール」の影響を
かなり受けているということでした。
彼の作品の場合「キャプテン」の方が有名だと思います。
だけど、こちらは、それなりにチームに厚みがあり、
強豪校と戦って勝ち抜くストーリーだったのに対し
「プレイボール」は、地区予選で負けてしまうレベルのチームの話なんですね。
なので、ひたすら練習しまくって全国レベルの野球を目指す
「キャプテン」とはちょっと雰囲気が違っていて
ゲームメイクが主体の展開だった印象が強いです。
「プレイボール」はアニメ化もされています。
原作の雰囲気に合わせてとても忠実に作られているんですけど、
やっぱり見るなら原作の方をオススメします。
アニメ版と一番違うのは、
冒頭で谷口がサッカー部で先輩からシゴキを受けるシーンでしょう。
私自身、ここが一番印象に残ってるシーンでした。
まあ、アニメでも結構頑張っているのですが、
作品自体が13話(二期でもう13話作られました)しか無く、
全体的にここのシーンで使っている尺が、あまりに少ないので、
どうしても迫力に欠けてるのが残念でした。
原作の方はもっと壮絶で、
「なんでこんなにシツコク描いてんだろう?」って思うぐらい
めちゃくちゃ執拗にコマを使って描いてるのが本当に凄いです。
ちばあきおの作品全般に言えることですが、
ある1シーンが強烈な密度で描かれることがあって、
それが何十年経っても記憶に刷り込まれるところがあるんですね。
この人が描いた壮絶な特訓シーンは
後にいろんな漫画家がチャレンジしてますけど
彼の作品を超えて描けてる人は居ないと思います。
一方、
「おおきく振りかぶって」の凄いところは
主人公の三橋が、本格派速球投手じゃないところに尽きます。
これは、パンチ力の無いボクサーが主人公の
ボクシング漫画と同じぐらいありえないことで
よほど緻密な配球パターンで強さをアピール出来なければ
ストーリー自体に無理が生じて
リアリティが無い作品になっていたと思います。
まあ、他の作者がこのような作品を描いた場合、多彩な変化球を持っ
技巧派投手のキャラを作れば、話が作れるかもしれませんが、
この作品の場合、超高校生級の選手は殆ど出てきません。
なので、三橋も、他人よりもコントロールが良い選手
といったレベルにしか設定されていません。
その様な、貧弱なキャラ設定で、試合に勝ち進める
説得力のある作品を作ってしまう
作者の力量は本当に凄いんですね。
こうして両作品を見比べてみると
視点と切り口、人物描写の掘り下げ方などはかなり違いはあります。
だけど、基本的に、弱いチームが工夫して勝ち進んでいくというスタンスは
極めて似ている部分があると思うのです。
これまで、ちばあきおが作った
正統派少年野球漫画路線の壁は物凄く大きいものでした。
ジャンプスクウェアの前身だった、「月間少年ジャンプ」は
ちばあきお作品の影響をあまりに強く受け過ぎたため
新しい作風の作家が出てくることが難しい雰囲気になり
部数が下がっていった様な気がします。
なので、その偉大な作家の
壁を初めて超えたといえる
「おおきく振りかぶって」の存在は
非常に大きいのですね。
