第九条~幻燈狼狐伝3 <非公開作品群>
●コウエン●
メリーさんの人形の事件が解決してから
僕たちの中では些細な喧嘩が起こる
■ツキ■
その内容は、先に進むのか
●コウエン●
それともカマド猫の鍵の報酬をもらいに行くのか
■ツキ■
先に進むんだ!!
俺はもうこんなところとはおさらばしたい
●コウエン●
報酬を貰いに行こう!
もらえないとまた食いっぱぐれてしまう
■ツキ■
俺は先に進みたい!
先に進まないと元の世界には帰れないんだぞ
●コウエン●
何を言っているんだ
報酬の回収が先だ
もしもらえなくてただ働きになったらどうすんだ
■ツキ■
お金もらったって元の世界に戻れりゃ、紙くず同然になるだろう
●コウエン●
でも、出口がわからない以上、ここで少しは生活することになる。
もしもこんなところで行き倒れたら
それこそ時の忘れものになっちゃうんだぞ!
■ツキ■
でも僕は帰りたい
●コウエン●
でも僕は死にたくない
■ツキ■
ぬぬぬぬぬ・・・
●コウエン●
ぬぬぬぬぬ・・・
■ツキ■
そのとき、俺は、心惹(ひ)かれるものの姿を見て、
心トキメク感情を覚える。
●コウエン●
その時僕は邪なものの姿を見て毛を逆立たせる
あ!あれは!!あれは!!!
■ツキ■
黒猫ちゃんだーーーー!!
■ツキ■
んーヨシヨシっと
●コウエン●
すごい・・愛(め)いでている・・・
それに引き換え僕に対しては・・・
イテテテテ・・・・
ひっかかなくてもいいじゃないかよ
■ツキ■
ハハハハハ・・・・
コーエンはえらい嫌われてるな
●コウエン●
いいなあ。ツキは。
イケメンはいつも得をするって本当のことだな(シュン
■ツキ■
キャハハハ 
 ハハハハハ
●コウエン●
くっそーくやしいなー
●コウエン●
結局、黒猫と行動に一緒にすることになった僕たち・・・
相変わらず月にはよく懐いたが
僕にはまったくなついてくれなかった
■ツキ■
よしよし~
じゃあ新しい街に着いたら猫じゃらし買ってやるからな
●コウエン●
僕は思う。なんて態度の変化だ
人が変わったかのようだ
●コウエン●
道を歩いて行くと僕たちはまた一つの町に差し掛かる
■ツキ■
あ!町だ!! まってました~~~~!!
●コウエン●
到着するなり、一目散にツキと黒猫はホームセンターへと走っていった
●コウエン●
いつもは到着しても
興味を持たないくせに
まるで人が変わったかのようだ・・・・・
●コウエン●
ホームセンターのレジにて・・・・・
■ツキ■
店員さん!すいません・・・かるかんじゃなくて
かるかん EX ありませんか?
●コウエン●
かるかんEX!?
猫の餌になんか全く興味がなかったのに
まるで人が変わったかのようだ・・・・・
■ツキ■
おいコーエン。次はこっち行くぞついてこい
遅れんなよ
●コウエン●
わかったよ。まってよぉ・・・・・
●コウエン●
今まで先頭なんか切ったことなんかなかったのに、
まるで人が変わったかのようだ
まあいずれにせよ、前向きになったことが非常に嬉しいのだが
それにしてもどこか動きが不自然ぽい。
ツキのやつ疲れているのか?
それとも、なにかバチでもあたって、何かにとりつかれちゃったか?
■ツキ■
ん?コーエン?何か言ったか?
●コウエン●
い、いや? なにも言ってないよ・・・・
■ツキ■
そうか・・・・じゃあ。いっておくがな
おれは取りつかれているわけじゃないからな。
勘違いすんなよ。
まかりまちがって、陰陽師なんかよんでくれるなよ!?
●コウエン●
わかったよ・・・まちがえないよ・・・・・
■ツキ■
・・・・フン!
●コウエン●
ツキを先頭にした僕たちはやがて街の大通りから
日本中に入りやがて住宅地に入り・・・
ついには赤茶けた煉瓦造りの家に着いた。
■ツキ■
コウエン!ついてこい!!入るぞー
●コウエン●
お、おい!そこは人のウチだよ!
●コウエン●
ツキは、ボクが止めるのも聞かずに、家の裏口からドアの上に
隠してあった合鍵を見つけ、開けるとドアに入った。
●コウエン●
おいおい。なんで、そんなところにあることがわかるんだよ・・・・!
●コウエン●
ボクが驚愕の声を上げた、その瞬間・・・・・
ツキの腕の中からさっきの黒猫が飛び出した。
黒猫は、ベッドに横になっている男の側に行くと、
そこにちょこんと座り込んだ
●コウエン●
うわ・・・うわあああああ!!
死んでる・・・・死んでる・・・・・!
●コウエン●
ボクはその男の方に行って絶句する。
男はすでに息絶えていたのだ
■ツキ■
・・・・そうか・・・・結局、こうなったか・・・
そこに、意外と冷静なツキのこえが響く。
●コウエン●
つ、ツキ! こ、これはいったい・・・・・
こうなったかって・・・どういうことだ!?
■ツキ■
おれ、操られていたんだよ。実は・・・・・
●コウエン●
ツキは声を落とす
どういうことだ!?
■ツキ■
こいつ、すっげー強力な魔力もってんだよな・・・・
全然太刀打ちできなかったもん
●コウエン●
なんだと
■ツキ■
ただ、わかってやってほしい点もあるんだ。
こいつが魔力で俺に話しかけた。
自分は会いたい人がいると。
でも自分一人ではどうすることもできないから
手伝ってほしいと
●コウエン●
おい・・・・ツキ・・・・・
■ツキ■
もちろん魔力の猫だから嫌な予感はしていた
だが猫は心を振り絞って訴えてきた
だから、あえて、許したんだ。
●コウエン●
それで・・・黒猫はなんと?
■ツキ■
主(あるじ)が病気にかかっていて助けてほしいのだと言っていた
寝たきりになって、声をかけても返事がない!!ってことだそうだ
●コウエン●
だけど・・・・残念ながら猫の言葉が人に通じることはなかったようだ
主は死に供養もされないまんまこのようにミイラになってしまっている
じゃないか。
■ツキ■
そうなんだよな・・・・・
人間は孤独なものだな・・・・
他の動物と感情すらかわすことができないなんて
●コウエン●
だからせめて言葉でも使えるになったのかもしれない
■ツキ■
コウエン・・・・・
●コウエン●
ずっと考えてきたことがあるんだ
確かにヒトは賢い。だが、人間が生まれてから12000年。
コミュニケーションの研究が続けられてきたにも関わらず
人間以外の生物とやりとりができないというのはどうして
だろうって。
ずっとずっと 後の時代になってからやっと・・・・
心を通わせられるようになるのかもしれないな
■ツキ■
・・・・・・・
●コウエン●
寒い風が吹きすさぶ中
黒猫はやがて白い霧に包まれ大空へと帰っていった
■ツキ■
魔力の気配がなくなり、静寂に包まれた瞬間・・・・
妖狐は巫女服のまま鎮魂の舞を踊り。
ヒトに近い狼は虚空にむかって遠く吠えた。
●コウエン●
これは、とある寒空吹きすさぶ夜の話。
■ツキ■
いつまでもその声は響いているかのように思われるのだった
●コウエン●
そして、翌日・・・。
僕たちはまた見果てぬ旅に旅立っていくのだった。
■ツキ■
次の事件はなんだろう。それを話すのは またこんどだ!
おわり