太陽が真上に来る。
「もう、お昼か・・・」
私はつぶやくと見張りやぐらに向かう。
やぐらは高さ3メートルくらいに設置されていて、
ここで、異変が無いかを望遠鏡などで監視して、
異変を感じたときにすぐに行動しなくてはならないことになっている。
そう、私は遊泳中の人の安全を守ることが目的のライフセーバーだ。
ショッキンググリーンのワンピース水着がトレードマーク。
すっかり焼け付いて小麦色を飛び越して、真っ黒になった体を時折ひやしながら
監視を続ける。<注 こんなライフセーバーいません>
おとしもの、まいご、怪我、よっぱらい おぼれた・・・
海の事故は後をたたない。
そのほとんどが、海をナメてかかったことでの事故とくれば
レジャースポーツという言葉を見出した人を心憎くもなる。
もし、ここで事故なんぞがおきたら・・・当然助けにいかなければならないが、
周囲への連絡、応急処置の初動など、しなきゃいけないことはたくさんだ。
今日もなにも起こりませんように・・・
そう思ったところで、不運がおきる。
「こどもがおぼれたぞー!!」
本能的に連絡をすませると、やぐらを飛び出す。
深みにはまったのだろう。私は砂浜を蹴り、波を割き、沖へ進んだ。
「波が高くなりはじめている・・!」
脳裏に少しだけ不吉がよぎる。
「私は・・守ってみせる!!」
そう心につぶやくと、一目散に、潜る。
「水が・・冷たい?」
更なる不吉が脳裏に重なった。
溺れた子供の直下から浮上。そのまま抱きかかえるようにして落ち着かせて
そのまま陸揚げする<注:こんな救い方しません マネしないでネ>
「よし、直下だ・・いくぞ・・・」
そう、心の中で掛け声をかけると、背後から子供の体をだきしめ、一気に水上に上がる。
水圧のせいで負担がかかる・・・肺臓が・・頭が・・悲鳴をあげる・・・
そのなかでも、私は腕に力を入れたまま、海面への距離を縮めてゆく・・
「あとすこし・・負けるか!!」
しかし、その次の瞬間、私は心臓のあたりに激しい痛みを覚える・・
「い・・いたい・・・助けて!!」
その一方で子供は無事に救出されていく・・・
「お・・おねがい・・わたしも・・た・・す・・け・・て・・・」
ゴーグルのなかに浮かんだ一筋の涙が眉間のそばから流れ落ちたとき、
私は気を失った・・・
しかし、そんな気が遠くなる直前・・私は背後に広大なツバサの音をきいた。
「え・・・!?」
そして 私は 黒いつばさと 合体する。
意識は黒き飛翔をとげ
世界は錆色(にびいろ)にそまる。
私の唇には憎しみの笑みひとつ・・・
<<この(し)詠んでみませんか?>>