私はそのとき、灼けた 砂浜にいた。
ギンと照りつける真夏の太陽の中
額から流れ出る 汗もそのままに
私は この砂浜にいた。
私は麦藁帽子を深くかぶり、
波打ち際で 時折ひくく、時折高くなる波と
戯れながら、手にもったスコップで
時折波をすくってはかえす。
2度4度3度5度
何回も何回もやってみては
ため息をつく。
そしてまた
おなじことを 反芻していた。
私はさがしていた。
見つけられない宝石を
私はあきらめられなかった
あの日の約束、かならず枕元に
貝殻をとどけるということを。
その貝殻は 薄いピンクで
その貝殻は 耳をすませば 波のおとがきこえる
伝説の宝石だった。
耳元におけば、そこに
いまから 数年前 から
私の妹は海にくることができなくなっていた。
夏がとても大好きだった 妹。
紫の名も無き 花が描かれた 浴衣姿がとても可憐だった
たったひとりの妹。
難治(なんじ)の病を宣告されてから
ずっと彼女は海にいくことができなくなっていた。
あの日白い手術室でつないだ
ゆびきりげんまん ひとつ。
それから私はずっと さがしつづけていた。
その日から
いったい何日経ったのだろう。
なんかい ゆびきりのきずなは
結びつけたのだろう。
今日も私は砂浜に立つ。
そして波打ち際に座り、スコップを手にしていた。
「あと・・何回・・私は・・・・」
そこまでいって、私は背後に広大なツバサの音をきいた。
「え・・・!?」
そして 私は 黒いつばさと 合体する。
意識は黒き飛翔をとげ
世界は錆色(にびいろ)にそまる。
私の唇には憎しみの笑みひとつ・・・
<<この言死(し)詠んでみませんか?>>