前回の続編。
以前からずっとやってみたいことがあったことを思い出して蔵書を漁ってみた。
これ、初版は1992年となっている。買ったのはそれよりかなり後だがいずれにしても前世紀のこと。
価格は\8800とかなり高額だったが、大型書店でたまたま見つけて立ち読みした際に余りに美しすぎたのでその場で衝動買いしたもの。
中身は終始こんな感じ。そこらの現代アートの写真集より格段に刺激的この上ない。
これは何かというと、いろいろな化学物質を薄い結晶にして上下から偏光板で挟み、下から光を透過させたものを拡大すると(要は「偏光顕微鏡」だが)多彩な色模様が見えるというもの。
著者の秋山さんはこの分野の先駆者で、当時はまだ科学とアートの融合というのはさほど一般的ではなかったし、時代を何十年も先取りしていた方なのだろう。
使用する物質によって、または温度や湿度などその時の周辺環境によって一期一会のパターンが生み出されるという「偶然性」。
そういうのが好きな人間にとっては非常にアート心をくすぐられる被写体だと思う。
結晶が持つ複屈折とか干渉とかそういった性質が起こす現象だが、素人がヘタに解説してもアレなので理屈の詳細は割愛。
この本で使用されている素材には一般人に入手が難しいようなものや現在では法的にヤバい物質もあるが、とりあえずキッチンにある凡庸な物質で同様のことを試してみる。
構成は前回と同じく一眼の望遠レンズの先端に対物レンズをくっつけたお手軽即席顕微鏡。
コンパクトで明るい照明が必要だったので秋月電子で買ってきた白色LEDモジュール。
点灯すると直視できないほど明るい。
CPLフィルタなど撮影手法の研究用に買った偏光板二枚を流用。
その上に試料。今回はお手軽材料としてグラニュー糖と味の素をそれぞれ水で溶かしてスライドグラス上に薄く析出させたもの。
そのままだと白い粉が付着しているようにしか見えない。
乾燥に時間がかかったので結構埃がついてしまった…
更にもう一枚の偏光板を載せる。
板を回転させる機構が必要だったので物色してみると、行きつけのジョイフル本田で見つけたテレビ台用の回転金具がベアリング完備でジャストサイズだったので採用。
セットアップ完了。対物レンズは10x。カメラとレンズ以外は非常に安上がり。
それぞれの偏光板はクロスニコルと呼ばれる互いに直交させる位置が基本で、そこからいい色になるように回転角を調整する。
このあたりCPLフィルタの操作と感覚はほぼ同じ。
偏光方向が直交していることで、LEDからの直接光はほぼ遮られて複屈折した光のみが通過する。
まずはグラニュー糖の結晶から。
もっと高価な対物レンズがあれば更にシャープな絵になるのだろうがこれでも十分綺麗。
次に味の素。本名・グルタミン酸ナトリウム。
グラニュー糖より高周波成分があってトゲトゲしい美しさ。
面白いのが、同じ場所で偏光板を90度回転させるとそれぞれの補色に変化する。
結晶内で色(波長)によって偏光方向が分離(用語正しい?)されるために起こるらしい。
ミクロの世界で偏光板を通すと光にも「和音」のようなものが存在する?
PhotoshopやAEなど弄っている時におなじみの色相環の理屈を生で体感できることなんてあまりない。
光の性質というものはやはり奥深くて面白い。
梅雨の引きこもりがちな季節ゆえ、折角なので時間を見つけてミクロの世界をもう少し掘り下げて遊んでみようかと思ってます。