西表島~秘境・網取への遠い道 | Nature | Photography | Music | Art

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これが今回の西表島での主目的だったりします。

西表の中でもとりわけ秘境とされているのが西側の道路の通っていない無人地帯で、陸路なり海路なりでここを突破するのが西表でもトップクラスの冒険となっており、同時に少なからず遭難や犠牲を出している場所。

今回、ここに少々足を踏み入れたのはそんな大それたことではなく、別の理由。

西表の西側にある無人地帯にある二つの湾、崎山湾と網取湾は「崎山湾・網取湾自然環境保全地域」として海域としては国内唯一の自然環境保全地域として保護されており、国内でも有数の貴重なサンゴの生息地となっている。(昨年の異常水温でかなり白化してしまったそうだが)


そのサンゴの海で素潜ってみたいというのが以前からの念願だった。

しかしその実現にはいろいろ障壁が。

楽に行くには網取湾へ行くボートスノーケルツアーが催行されているのだが、昨今海難事故が多くツアー業者は当局からフロートジャケット着用を義務付けられているらしく、要は海面からサンゴを眺めるだけらしい。それではつまらなさ過ぎる。

そうなると自由に素潜るには自力で網取まで行くしか方法はない。

その場合、拠点となる船でしか行けない陸の孤島・舟浮はキャンプ禁止の上に宿も満室だったので連絡船で日帰りする必要があった。 始発の08:45で舟浮に行き、17:10の最終便で帰ってくる必要がある。 


撮影時間・食事時間や途中の道迷いによる時間ロスも考慮に入れるとかなりぎりぎりのスケジュール。

その行程は、まず舟浮から一山越えた場所にあるイダの浜からエントリーして1.5kmほど海岸線を延々と水中歩行、その後標高100m弱の岬(サバ崎)を越えるために悪路+ルート不明瞭な山道を行くと網取湾に着く。更に海に入ってサンゴポイントまでは泳ぎで片道約1kmほど。
これらを往復する変則的なトライアスロンを制限時間内にこなす必要がある。

さて当日、雨予報だったが大ハズレで晴天。気分よく探検ができそう。朝一番の連絡線で舟浮に向かう。

船でしか行けない陸の孤島・舟浮集落。メディアでも時々紹介されている。ここが西表北側終端の集落となる。今回は泊まれないが、のどかで居心地はよさそう。




舟浮から15分ほど山越えした場所にあるイダの浜。一般観光客にとっては西表の最果ての場所だが、今回はここが始発点となる。

 


幸い探検を終えた人とタイミングよくすれ違ったのでいろいろ最新情報を得られた。

荷物を防水バッグに詰め、この浜の左端から入水して海岸線の水中歩行から網取への探検が始まる。干潮時間を逃したので時折胸あたりまで水に浸かってしまう。とりわけイダの浜出発直後が足元が悪くてハード。前半は荷物を浮かせながら泳いだほうが楽かもしれない。

時折上陸して休憩。プライベートビーチがそこかしこにある。




海岸線歩きが終わってサバ崎へとりかかる場所はこんな感じ。

 

 

白いウキが目印と聞いていたのだが、遠目に見るとそれっぽいもの(別のウキとかゴミとか)が多くて見つけるのに若干の時間ロスをした。
分かりやすい見つけ方は遠くから見て森の部分と崖の部分の境目を目指せばよいことを学習した。

こんな湾を徒歩で横断してきた。 水深は深くても膝上くらい。

 


サバ崎の山越え道は先ほど聞いた最新情報によるとテープを追っていけば迷わないとのこと。
確かに種類や色はまちまちだがテープやら紐やらがルート上の樹に括り付けてある。トレースが不明瞭な箇所も多く、もしテープがなければかなり迷ったと思う。

滑る岩が多い以外は危険箇所や通行困難箇所はない。




一番の難所。垂直ロープ3段+よく滑る+足置き場が乏しいという三重苦の場所。




峠の地点。あちらこちらにイノシシが作ったヌタ場がある。スケートリンクかと思うくらいに滑る。

 


撮影を忘れたが、途中に炭焼き小屋の残骸のようなものがあった。こんなところに人が住んでいたのか。

立派な板根があちらこちらに。




あとは滑りやすい急登を慎重に下っていく。

着いたようだ。




ずっと念願だった網取湾。
プライベートビーチならぬプライベートベイ。(他の探検者がいなければだが…)



 



こちら側にもこんなブドウのようなウキが取り付きの目印。




イダの浜からここまでの所要時間は2時間ほど。
対岸には東海大学の研修施設がある。
この湾から更に島を縦断して南岸にある桃源郷・鹿川湾へ抜ける上級コースがあるが、今回の目的はそこではない。

これからがクライマックスになる。湾外に向かって1kmほど泳がなければならない。
防水バッグを帰りの目印になるよう高いところに吊り下げておいて出発する。サンゴポイントはよく見ると沖にブイが浮いているのでそれを目指せばよい。

当初は砂の浅瀬が長く続く。




しばらく進むと一面こんな海藻の森になる。八重山ではよく見るが名前が分からない。




よく見ると幾何学的・数学的な形状をしている。フラクタル図形によく似たものがあったような、Hopalongだったか。




ぼちぼちと水深とサンゴが増えてくる。まだまだ平均的な沖縄の海で、すごいという感じではない。




沖に行くにつれてサンゴの量が増えてきて地面がだんだん見えなくなってくる…これはすごくなりそうな予感。




そしてブイの周辺でついには多様なサンゴで埋め尽くされた森になる。やはり白化はしているが、生き残っているものも多い。圧巻。

 

 


-20mほどまで潜ってもまだまだ下にサンゴが続く。

 


こんな海中風景はあまり見たことない。似たような風景があるのは国内では小笠原の製氷海岸くらいしか思いつかない。白化前はどんなに凄かったのだろう。




耳の状態が持つ限り夢中で撮影する。




さて、一通り撮影を終えて同じルートをピストンして最終便まで一時間以上の余裕を持ってイダの浜に戻ってくる。往路の時は楽しむ余裕がなかったが、美しいビーチだ。

 



時間も余ったのでアウトリーフまで泳いでみたが、結構な急深だった。


という感じで、なんとか無事に本望を果たすことができました。

今回は行けなかったが、もう一つ岬を越えた崎山湾は話に聞くと更に凄い海中風景らしいが、スノーケリングでは太刀打ちできないとのこと。
相手にとって不足はないので、次の機会があれば途中一泊でチャレンジしたくなっております。