西表は無数の濁った川が海に流れ込む島なので、船で沖に出ない限りは海の蒼さや透明度は過剰に期待できないところが多い。(そのあたりを求めるのであれば川の無い宮古諸島の方が最適)
その代わりにその川が運ぶ栄養分がよいのだろうか、サンゴの種類の豊富さや魚影などは群を抜いている。
難点はGoogle Mapの航空写真で見れば分かるのだが西表は総じてリーフエッジが非常に遠く、島の大きさの割にはビーチエントリーで簡単に素潜りができる場所は多くない。
今回、そんな西表の2箇所で素潜ってみた。
まずは「まるま海岸」。今回初めて潜る場所。
上原港のすぐ横にあって、隣の中野海岸と比べて駐車もしやすいし砂浜なのでエントリーもしやすい地元民向け隠れビーチ。
少々リーフエッジが遠いが、ここの沖のサンゴがなかなか凄いらしい。
かなり泳いでリーフエッジに到着。西表とは思えないような透明度と有人島らしくない健全なサンゴの群生。
港に近いほど水深が深くなってダイナミックだが、あまり近づくと航路なのでほどほどの所まで。
そしてもう一箇所「うなり崎」。
この「うなり崎」とその対岸にある「トゥドゥマリ浜」に関しては好ましからざる遍歴がある。
そもそもこの二つの場所は西表でも神聖な場所だったらしく、「トゥドゥマリ」とは「神がとどまる」の意味を持つらしい。
実に美しい岬だが、以前は不気味な巨大廃墟が岬の先端に建っていて景観を害していた。その昔、島の有力者が拝み所を無理やり破壊して建てたものの、そのままポシャったらしい。 今は取り壊されてセンスは良くないながら公園になってマシになったが、もはや神聖な雰囲気は感じない。
そしてうなり崎から見たトゥドゥマリ。
優美な浜はそのまま浦内川のマングローブの茂る広大な河口に続き日本でも屈指の美しい浜なのだが、その真後ろにある住民の反対を無視して建てた某豪華リゾートが環境と景観をぶち壊している。こちらは今でも絶賛営業中だ。
トゥドゥマリは神聖な浜から風光明媚な浜にグレードダウンしてしまったように感じる。
同社はこれに懲りずに舟浮のイダの浜も食指にかけようとしているという話も聞く。
どうして(ごく一部だろうけれども)人は権力や富を持つとこういういらんことををしたがるのか…なんとかならんものだろうかといつも思う。
さておき、幸い彼らも海の中の景観までは荒らしてはこない。うなり崎は西表で一番好きな素潜りポイントのひとつ。
公園が出来てから隣の浜からエントリーしやすくなった。
無数の水路は迷路になっており、全体的にさほど深くないので通り抜けて遊ぶことができる。
個人的に勝手に「アントニオ・ガウディ」と呼んでいる水中洞窟。天井に美しい穴が開いていて光が漏れてくる。
探せば自分だけの遊び場がいくらでも見つかる。
こんな面白い素潜り場所のストックを各地にいくつも持っておきたいものだ。