GW前半を利用して、なるべく観光客が少ない極力ユルい南の島へ行こう…ということで那覇からフェリーで数時間、渡名喜島で過ごしてきました。
そもそものきっかけは、以前久米島へ渡った途中にわずか10分ほど停泊したこの島、船上から見ただけで「居心地のよい雰囲気」がプンプン。
それ以来いずれ滞在してみたいと思っていたのです。
どうやらこの島、コアな沖縄離島ファンの間ではかなりの頻度でランク上位に挙げられるみたい。
行って見て納得、とにかく観光化がほとんどされておらず、(観光向けでない)古民家が多い唯一の集落はこじんまりとして時間がほとんど止まっている。



集落の南北には結構標高の高い(といっても200mに満たないが)山が聳えており、調べたところによるともともと2つの島の間が埋まって一つの島になったらしい。なので、南北で山の雰囲気はかなり異なります。
なんといっても美しいのが奇岩が散在するカルスト地形の南側の山稜で、一部を切り出してみると北アルプスと言っても騙せそうな佇まい。
ハブわんさかの島なので恐ろしくて遊歩道のあるところ以外は登ってませんが。



…というのは前置きで、
渡名喜島、南の楽園というほかに実はダイバーにとっては別の側面を持っており、那覇のダイビングショップなどからは「渡名喜島特別遠征」とか銘打った企画を催すほど人気のダイビングスポットなのです。
潮通しがよく急深なこの島周辺の海中は「渡名喜ブルー」と呼ばれる他所では見られない深いブルーに包まれるらしい。
特にそれが顕著なのが、島の南端にある「グルクの崎」という水深-2mくらいから一気に-50mほど落ち込むダイナミックなポイント。
ここを沖縄ベストポイントに挙げるダイバーもいるらしい。
ここで潜るには、渡名喜島そのものにはダイビングサービスは存在しないため、那覇などのショップが企画を出して参加者を集めてボートをチャーターして来るのが一般的なようで、スケジュールや天候・海況などの条件をクリアしなければならず、他地方の人間にはなかなかハードルが高い。
そこで、どうせなら島旅を兼ねて自力で「グルクの崎」まで行って、スクーバ機材などの機械の力を借りず体一つ素潜りで渡名喜ブルーに包まれることはできないだろうか…? というのが実は今回の旅の主目的。
もちろんWeb上にそんなニッチな情報があるわけはないので、現地で状況を見ていろいろ判断するしかない。
第一のハードルはこのポイントは集落から山を越えた南端の崖下に位置すること。アプローチが容易ではないのは旅行前からGoogleMapなどで下調べをして分かっています。
まず考えたのが、南端に遊歩道があるのでそのあたりの切れ目から海岸に降りる方法。
一見崖で下りられなさそうな場所でも、実は磯釣り用の崖下りルートがある場合も多いのでまずはそれを探す。
現地に行ってみて、唯一下りられそうな場所がここだった。右の岩の裏側にブルーホールという巨大海底洞窟があり、そこから泳いで1kmほどでグルクの崎。
降りられればおそらく最短距離で目的地に行けるはず。

写真ではのっぺりしていますが、実は結構な高度差があります。
良く見ると残置ロープもあるので釣り人が下りている形跡。 これは下りられるかもと思い残置ロープをつかんで少々下りてみる。
しかしながら、ロープは途中で終わり、地盤は非常に崩れやすい砂と石で出来ていて滑りやすく、落石の恐れもある。
長いロープがあれば懸垂下降もできるのだろうが、そういうものは持参しておらず、ハブわんさかな島であることも理由でこのコースは断念。
そうなると唯一の選択肢はエントリーできる最も近い浜から遠泳する方法。それでも片道2km、往復4kmほどありそう。
エントリーして見ると、浜そのものの海中はかなりサンゴが死滅して荒涼としていて、水の色も蒼というより緑で、少々気分が落ち込んでいく。
岬を一つ越えてみても様子はあまり変わらず。
沖に出れば様子は変わるかもしれないが、第二のハードルである潮の早い島なのであまり沖出ししないよう慎重に。
しかしながら、グルクの崎一つ手前の岬を越えたあたりから様子が変わってくる。
ほぼ無傷なサンゴの群生。人がほとんど立ち入らない証拠。

更にグルクの崎に近づくにつれて明らかに海の色が今まで見たこともないような深いブルーに変わってくる。
おそらく潮通しのよさと水底の深さがこの色を作り出していると思われる。

巨大なアオサンゴと渡名喜ブルー。

そしていよいよグルクの崎。巨大な建造物のような岩々が深みめがけてほぼ垂直に落ち込んでいる。
潜っても潜っても水底が見えない。ただただ深いブルーに包まれて心地いい。


悔しいことに、カメラではこの壮大さは捕らえきれませんでした。ただ雰囲気を切り取るだけ。
こういうときにカメラの表現の限界というものを感じます。

終わってみると、往復時間を含めて総時間3時間半ほどの体力勝負の耐久素潜りとなりました。
カヤックでもあればもっと楽に行けるのかも。
帰宅した今でもあの深いブルーが脳裏に焼きついています。
ちなみに、渡名喜島の素潜り事情ですが、基本的に集落から楽に行ける範囲の海岸はいずれもリーフがすこぶる遠く、リーフ内のサンゴもあまりないのであまり素潜り向きではないかもしれません。
唯一アンジェラ浜の沖に巨大なチャンネルがあり、ここはウミガメお触りスポットとしてダイビングポイントにもなっているみたいだが、今回は遠泳で力尽きたので行ってません。
ちなみに沖縄本島に戻った後も連日連夜数時間の素潜りをこなし、いささか心身が燃え尽きています。