「そういえば、結局教えてくれなかったけど、陸はいったい何処に電話をしていたの?」

「別にたいした事じゃないよ、偶然友人から電話がかかってきてそれに応対してただけ。」

「そっか、陸が電話を閉じたと同時に2台もヘリコプターが来たから、てっきり陸が呼んだものかと思ってたのになー。」
雫は凄く残念そうにそう言って、椅子にもたれ掛かった。

「残念ながら僕は病院に知り合いはいないよ、時乃さんは小説の読みすぎ。」
陸が軽くため息をついて、コップに入っているお茶を一口飲んだ。

「最近色々あったから感覚が麻痺しちゃってたのかもね、そんな事も普通にあるんじゃないかって思うぐらいに。」

「色々って?」
陸が興味深そうに聞いた。

「今日の通り魔とか、小学生が年齢を詐って転校してきたりとか。」
雫は少し考えた後、そう言って私の方を見てニヤリとした。

「まだそのネタを引っ張るのか。」


≪ タイトル未定(23) ≫ タイトル未定(25)

「相変わらず涼子が怒ると怖いね~、普段大人しいから怖さ10十割増だわ。」
雫がコップに入ったジュースを飲み干した後にそういった。

怪我人二人を救護ヘリに乗せた後、警察に色々と聞かれるのが面倒だからと言う理由で帰るバスに乗って町まで帰り。
そして、晩御飯を食べて解散しようかという流れになり、皆で九段坂の麓にあるファミレスに来ていた。

「うぅ、なんですぐカッとなってしまうのかな。」
涼子さんがテーブルに両腕を乗せて、顔を埋めた。

「それだけ正義感が強いってことじゃないか」

「そんなに正義感が強いとは思ってないのですが。」
涼子さんは少しだけ富迫くんの方を見て、また顔を埋めた。

「いや、強い、とっきーもそうだけど、ナイフを振り回しているやつに向かって行く事なんて簡単にできないよ」

「私は止血してただけだけどな。」

「でも、りょーちゃんがいなかったらとっきーはあいつに向かって行ってただろ。」

「そうですね、多分行っていたと思います。」
そして、呪いの力を使ってしまっていた気がする。


≪ タイトル未定(22)  ≫ タイトル未定(24)

レイが承諾した理由は旅は人数の多い方が楽しいだろうと言うことと、女性がレイ以外居なかったから。
ウィルが承諾したのは正直意外だったが、サラを狙っている組織の方興味があるらしい。


「サラが旅に同行するのはいいとして。」
ウィルはそう言って、スルトの方に視線をやった。


「魔族が旅に同行するのは反対だ、ディノスも俺が魔族が大嫌いなのを知っているだろ。」
ウィルのスルトを見る目つきが鋭くなった、

ルトも同行してもらうのはウィルの魔族嫌いを緩和する狙いもあったんだけど。


「まぁね、とは言えサラを狙う組織に僕達も目を付けられることになるんだし

相手の力量が解らないから少しは危機感を持ってレベルアップに励まないと

スルトは教えるのが上手いし色々な事に精通してるから適役だとおもうんだけどな。」

「魔族に教わることなどない。」


「ふむ、このままでは埒があきそうにありませんね。」
スルトは首の後ろに手を当てて、軽く首を振った。
そして、ウィルの目の前に指を一本立てた。


「そうですね一撃

一撃でも私に喰らわせることができたなら貴方に教えることは何も無いと言うことで私は去りましょうか。」
スルトは挑戦的な笑みをした。


「俺も嘗められたものだな、いいだろうその言葉を後悔させてやる

逆に貴様が俺に一撃でも喰らわせることができたら同行を認めてやるよ。」
ウィルがいっそう強くスルトを睨んだ。


「それは有り難いですね、同行を許してくれると捉えていいですよね。」
スルトがそう言って、ウィルから数十メートル離れた。

「大丈夫なの?」
レイが心配そうにウィルとスルトを交互に見ている。


「大丈夫だよ、多分大きな怪我とかはないと思う。」
ウィルには悪いけどどういった結果になるかは目に見えていた。


「そうだ、私はハンデとして左足しか使わないようにしましょう。」
スルトはウィルと充分な距離を置いた後、そう言って自分の左足を二回ほど叩いた。


「ふざけるな、貴様は魔法を得意としているはずだろう、魔法も使わず左足だけだと。」
ウィルが左手に剣を構えてそう言った。


「魔法を使ってもいいですが。」
スルトが右手の手のひらをウィルの方に向けて、それを下に返した。


「ぐっ」
ウィルが膝をついた体の上に何かが乗っかったかの様で剣を地面に刺して体を支えるのが手一杯の様だった。


「このように、一瞬で勝負がつくのが解ってるので今回は左足だけでって事で。」
スルトがふぅと軽く溜息をついて、魔法を解いた。


「なめやがって。」
ウィルは体を起こすと同時にスルトに向かって走り出した

スルトはその場を動かずにウィルを待ち構えていた。

ウィルがスルトを射程圏内に捉え左手を思い切り振った

スルトは後ろに体をずらしてそれを躱す

間髪入れずに左足でウィルの顎に一撃入れた。

ウィルはカウンター気味に入ったその一撃で意識を失った。


≪ 監獄の町(56) ≫ 監獄の町(58)

「ごめん、多分この槍のせいだ。」
ディノは右手で顔を押さえて、左手に例の白銀の槍を持った。


「それはコルトの魔法を尽く打ち消した不思議な槍、それもあたしの持っているナイフのように特殊な効果が?」


「うん、この槍には魔力を打ち消す効果があるんだ。」


「もしかしてそれでコルトの呪いって消せたんじゃ」


「うーん、どうだろう呪いはまた魔力とは違うからな。」


「今回、コルトに掛かっていた呪いは魔力を含んだ痣を媒体としていましたから

 その槍で解呪できましたよ、まだまだ勉強不足ですね。」
ふぅとスルトが軽く溜め息をついた。


「反省します。」
ディノが俯いた、結構へこんでいるようだった。


「よし、ディノにあたしに掛かっていた魔法を解いた責任をとってもらおっかな。」


「え?」
ディノがキョトンとした表情でこっちを見た。


「ディノは魔王って事だから強いんでしょ、だからあたしを狙う輩からあたしを守ること。」


「俺はやることがあるからこの街に留まることはむりだよ

俺にできることはサラの力が外部に分からないようにする魔法を掛けるぐらい。」
ディノは首を左右に振った。


「酷い、両親が命がけで掛けた魔法を解いておいて、同じ魔法を使うから良いだろうみたいなことを言うなんて。」


「そうだよね。」
ディノは一段と沈んだ表情になった。


「それに、その魔法を掛けてもらう必要もないし、ディノがこの街に留まることもしなくて良いよ。」
ディノはあたしが次に言おうとすることに気がついたのか、凄く困った顔をしていた。


「あたしがディノ達に付いていくから、そして、あたしの力を利用しようとしている輩を返り討ちにする

それにあたしの力の事や本当の両親の事も色々調べたいからね。」

ディノは頭に手をやって、手前に傾いた、そして大きな溜め息をついた。


「ウィルとレイに相談してみるよ、反対しそうだけどね。」


翌日、サラが旅に付いていくとにはウィル・レイ共にアッサリと承諾した。


≪ 監獄の町(55) ≫ 監獄の町(57)

「これじゃよ。」
コルトが手紙を差し出してくれた、その手紙は少し血で滲んでいて開くのが怖かった。
決意をして手紙に目を通した、所々血が滲んで読めないところがあったけど

内容はあたしの力が狙われていること

両親の名前

何処から来たのか

最後にあたし宛に何か書いていたらしいけど大部分が血色に染まって読めなかった。


「赤ん坊の時から狙われているって、あたしは一体何者なのよ。」
深く溜め息をついた。


「それに、あたしの事なんて放っておけば良かったのに。」
右手をギュッと握りしめる、クシャリと音を立てて手紙が潰れた。


「それが親という者じゃよ、自分よりも子供の事を優先してしまうんじゃよ

人によっては命さえ惜しまないほどにな。」


「まったく、残された子供の身になってみろって話よ。」
あたしなんかの為に・・・


「でも、あたしが狙われてる筈なのに、なんで今まで無事だったんだろう。」
物心がついてから今までで一度もそんな事はなかった気がする。


「ライド夫妻から聞いたのは、サラの両親は最後の力を使って赤ん坊だったサラに一つの魔法を掛けたらしい。」


「魔法?」


「サラの力を外部に感づかれることのないようにとな。」


「でも、そんな魔法があるなら初めから使っていたら良いのに。」
そうすれば逃げる事も簡単だったのに。


「それがな、両親の方に追跡用の魔法が使われていたらしくての

一緒に逃げている時には意味がなかったんじゃ。」
コルトは残念そうに呟いた。


「そう、ってコルトの目の力でその魔法ってきえてんじゃない。」
ディノやスルトがコルトの目はあらゆる魔力の流れを絶つとか何とかいってた気がする。


「この目は乱す魔力の流れを制御することができるんじゃよ、サラに掛けられている魔法はずっと残しておる。」
コルトは自分の目を指さした、その後何かに驚いたように急に固まった。


「・・・その魔法、消えておるのぉ」
コルトが信じられないといった目つきであたしを見ていた。


≪ 監獄の町(54) ≫ 監獄の町(56)