4月7日19時 ミューザ川崎

ピアノ:イム・ユンチャン

曲⽬
シューベルト:ピアノ・ソナタ 第17番 ニ長調 D850《ガスタイナー》
スクリャービン:
ピアノ・ソナタ 第2番 嬰ト短調 Op. 19《ソナタ・ファンタジー》
ピアノ・ソナタ 第3番 嬰ヘ短調 Op. 23
ピアノ・ソナタ 第4番 嬰ヘ長調 Op. 30
アンコール
ラフマニノフ:ヴォカリーズ

ユンチャンは、これまで2回コンチェルトを聴いている、最初は皇帝、2回目はラフマニノフ4番、
卓越したテクニックの持ち主であることは分かったが、今一つ共感度が低い演奏だった
しかし、そう感じられたのは、必ずしもユンチャンだけのせいではなく、伴奏のオケ側にも原因が有ったように思える
リサイタルを聴くのは初めて、今日はオケのせいにはできない

当初発表のプログラム、ショパン/幻想曲 ヘ短調 Op.49、シューベルト/ピアノ・ソナタ第18番「幻想」ト長調 D894、シューマン/幻想曲 ハ長調 Op.17から変更になったこのプログラムを見て、チケットを購入した
スクリャービン好きとしてはうれしい変更であったのだが、会場に空席が目立ったのは何故だろう、やはりプログラムも影響したのだろうか

最初の17番は、実演で聴くのは初めてかもしれない、当初予定は、ゆったりとした18番だったが、なぜ変更したのだろうか
ユンチャンからのメッセージでは「この度、静かで長い迷いの時間を経て、ようやく自分の内奥に本当に息づいている音楽として、今、皆様にもっとも聞いていただきたいプログラムに変更する決断に至りました」と語っている

17番は「海辺のカフカ」で「フランツ・シューベルトのピアノ・ソナタを完璧に演奏することは、世界でいちばんむずかしい作業のひとつだからさ。とくにこのニ長調のソナタはそうだ。とびっきりの難物なんだ」と語られた作品
村上春樹自身がシューベルトのソナタでは17番を好んだという

ステージに現れたユンチャンは数年前に見た時より大人びて見えたが、それでも22歳だ、
さてユンチャンの17番は、テクニックが完璧であることは言うに及ばず、ダイナミックかつ抑制の効いた素晴らしい演奏だった
優等生的な演奏は影を潜め、様々な曲に野心的に取り組んだ結果が、今回のプログラム変更だったと推測する
緩徐楽章でこれほどまで十分なパウゼを取るシューベルトは初めて聴いたかもしれない

後半のスクリャービン3曲も良かった
最初の2番ソナタは実にきらびやかかつ抒情性に富んだ演奏、
そして2楽章の余韻が残る間に、ユンチャンは3番ソナタの一撃を振り下ろした
実演で聴いた3番ソナタの中で最もドラマティックな演奏だった、
終楽章の回想のメロディは美しいが、この曲がもうすぐ終わってしまうのかと思うと切ない
そして、3番の興奮の残る中、密やかに4番は開始された、
形式的には1楽章だが、演奏時間10分足らずの4番は実質的には単一楽章の作品と見做せる
ユンチャンは、この4番を実に爽快に駆け抜けた、左手で強奏される和音は、スクリャービン後期の神秘主義の門を叩くが如き

一皮も二皮も剥けたユンチャンが聴けたリサイタルだった

4月5日15時 東文

指揮:アレクサンダー・ソディ
ダーラント(バス):タレク・ナズミ
ゼンタ(ソプラノ):カミラ・ニールンド
エリック(テノール):デイヴィッド・バット・フィリップ
マリー(メゾ・ソプラノ):オッカ・フォン・デア・ダメラウ※
舵手(テノール):トーマス・エベンシュタイン
オランダ人(バリトン):ミヒャエル・クプファー=ラデツキー
管弦楽:NHK交響楽団
合唱:東京オペラシンガーズ
合唱指揮:エベルハルト・フリードリヒ、西口彰浩
音楽コーチ:トーマス・ラウスマン

ワーグナー:歌劇《さまよえるオランダ人》

今年のワーグナーシリーズを振るソディは、2022年の東京春祭で何故か合唱シリーズで取り上げられたマーラー3番を聴いたが、あまり印象に残っていないが、ネットで調べると、劇場でキャリアを積んでいるそうだから、マーラーよりは良い演奏が期待できるかも
客席は8割程度の入りか、最近の春祭は大作ものも完売は厳しいようで、これには景気も多分に影響しているように思える
春祭後にメンテナンス期間に入る文化会館だが、会場周囲の小旗には、来年はリニューアルを終えた姿でお会いしましょうというメッセージが見られた

今日の演奏は休憩なし、オランダ人には、1幕版と3幕版の異稿があり、近年は1幕版が多いと聞くので、休憩なしはソディの要望なのであろう
オケは16型、コンマスは長原さん、

演奏は、サクサクと進められた、序曲からソディの指揮は全く淀みがないが、面白味がない
歌手陣はタレント揃いで、特に不満は無いのだが、
父親のダーラントとオランダ人が何れもスキンヘッドで、両者のやり取りには違和感があった、
オランダ人は音楽が魅力的だが、ストーリーが何だかなあ

そして2幕のゼンタ、歌いだしは声量がどうかと思ったけれど、圧倒的な歌唱だった
登場機会は少なかったけど、マリーのダメラウはいい歌手だと思った

そして3幕、やはり悲劇的ストーリには全く共感できないし、文化会館で2時間越えはきつかった
全体的には、歌手も良かった、特にゼンタ役は最も大きな喝采を受けていた、
オペラシンガーズの合唱は特に男声の力強さが際立っていた
ソディの流れるような指揮は悪くなかった
しかし、前回聴いたマーラー同様、まったく感動できなかった
ワーグナーシリーズ、来年は誰が振るのだろうか

 

3月31日19時 サントリーホール

指揮:高関 健(常任指揮者)
ソプラノ:森野 美咲
メゾ・ソプラノ:加納 悦子
合唱:東京シティ・フィル・コーア
(合唱指揮:藤丸 崇浩)

マーラー:交響曲第2番 ハ短調「復活」

今シーズンの特別演奏会2回目はマーラーの復活
実のところ高関さんのマーラーの演奏は、個人的には好みが分かれるところがあり、前回の6番はピント来なかったが、今日はどうだろうと雨降る中サントリーホールに向かう

事前情報として、今日は前回の特別演奏会には無かったプレトークが予告されていた
とは言っても18:55からのごく短いものだが
また、驚いたのは、1楽章のあとに20分の休憩が設けられているという、これはいったいどのような意図なのだろうか

そんなことを考えながらプレトークを聴く
本日の演奏は、遺された楽譜に基づいて、何作曲者の意図に沿ったものになるという
ネタバレになるから具体的には言わないが、色々なところから音が聞こえるとの予告が有った
また、マーラーは自身の指揮での演奏会でも、当初は1楽章の激しい演奏の後に5分の休憩を設定していたが、演奏を重ねるごとに、それは「少なくとも5分の休憩をとる」という指示になったそうだ。しかし、ステージ、客席で5分待機しても仕方ないので、通常通りに休憩することにしたそうだ

さて、特別演奏会は今回も16型、コンマスは戸澤さん、
1楽章は、ゆっくり目のテンポながら緊張感あふれる演奏、
だがプレトークのせいもあってか、終了後ほとんど拍手は起きずにいったんステージはバラケる

そして後半、合唱団やオケの入場で拍手が起きかけるが広まらなかった、しかし、高関さんが入場すると拍手は止まず、高関さんもそのまま合唱団とオケに起立を促した、劇音楽以外で曲の途中に拍手があるのは抵抗があるが、高関さんもプレトークでマーラーが指揮をしていた当時は、交響曲の楽章ごとに拍手があったという話なので、目くじらを立てるほどのことではないのだろう

以下は簡単に感想を
2楽章はマーラー流の洒脱な曲調で管楽器が活躍、3楽章のピチカートと2台のハープは息がぴったりだった
そして4楽章の加納さんのしみじみとした歌唱、
5楽章の森野さんのソプラノはコーアの合唱を引き立てていた
P席の最上部やステージ裏でバンダは、演奏のスケールを大きくしていた
最後はいつの間にか現れたオルガン奏者と共に壮大なフィナーレを迎えた

今まで聴いた高関さんのマーラーで一番良かった、休憩もありかなと思った
一般参賀あり