4月11日18時 NHKホール

指揮:ファビオ・ルイージ
チェロ:ヤン・フォーグラー

ハイドン/チェロ協奏曲 第1番 ハ長調 Hob. VIIb–1
アンコール
バッハ:無伴奏チェロ組曲3番、サラバンド
ブルックナー/交響曲 第9番 ニ短調

今月は、先ごろ、2年先の退任後に桂冠名誉指揮者の授与が発表されたルイージ
サバリッシュ、ブロムシュテットに続く3人目という
ケチをつける気はないが、このタイミングでの発表に違和感を感じる人は多かったのではないだろうか
スウィトナー、マタチッチ、ホルストシュタイン、そして、デュトワには名誉はついてるけど桂冠は無い

最初のハイドンVc協は、そこそこ取り上げられるが、個人的には食指が動かない、オケは12型コンマスは長原さん
曲は退屈だが、フォーグラーの音色は良く、アンコールのバッハは素晴らしかった

そして休憩後はブルックナー
オケは16型、後列の金管の並びが通常と異なり、向かって左の前列4人がホルン、後列4人がワーグナーテューバで、その右にテューバ、トロンボーン、トランペットと通常と逆順に並んでいた

第1楽章、トレモロの後のホルンは福川さん、安定しているホルンが聴けるのがこんなに幸せだとは、
首席ホルン奏者を募集していたN響であったが、結局は福川さんの期間限定の復帰という形となった
しかし、復帰は期間限定なので、引き続き首席ホルンのリクルートは必要だろう
今日の演奏はホルンに限らず金管に殆ど傷がなく、それだけで非常に満足度が高い演奏だった、
そもそも、弦楽パートも木管も優秀なのだから、
ルイージはエキセントリックな指揮が少なくて良かった
聴衆の拍手も多めで、ソロカーテンコールが有った

 

4月11日14時 サントリー

指揮:カーチュン・ウォン[首席指揮者] 
ソプラノ:森谷真理
メゾソプラノ:林美智子
テノール:村上公太 
バリトン:大西宇宙
合唱:晋友会合唱団


ベートーヴェン(マーラー編曲):交響曲第9番《合唱》 ニ短調 op.125

シーズン開幕を4月に変更した日フィル、70周年の開幕コンサート
早々に70周年プログラムが発表されたが、定期会員権の発売後に、ネーメ、ラザレフの降板が発表されるという有り得ない事態を迎えた
会員が納得すかどうかは別にして、開幕前に一応の代替案が示されたが、色々思うところはある

さて、今日は4月なのに第九、と言っても普通の第九ではなく、マーラー編曲だという
マーラー編曲というとシューマンの交響曲が有名で、実際に何回か実演を聴いたこともあるが、さすがマーラーと膝を打ったことはない
マーラー以外でも、最近では、展覧会の絵やショパンPf協1番のオーケストレーションに手を加えた演奏も聴いたが、何れも原曲と比べ代り映えのないように感じられた

ということで、特に期待もせずに臨んだ
マーラー編曲はホルンが8で木管が4、トランペットが4でチューバが加わり、ティンパニが2に増強されていた
これが効果抜群だった
オケは16型、コンマスは田野倉さん、会場は満席

細かいところは、プロのレポートを参照されたいが、ホルンと、フルート、そしてティンパニの増強が効果的に思えた
カーチュンの指揮は、マーラー増強のツボを的確に指示するものだった
久しぶりにカーチュンを見ると、指揮の仕草のレパートリーが豊富になっているように思えた、

歌手陣の中では、林さん村上さんの熱唱が印象的だったが晋友会合唱団も大熱唱
実は日フィルの第九を聴くのは初めてだが、今後は差別化を図りマーラー版というのはどうだろうか?
コバケンに要相談かな、
昨年、聴きには行かなかったがN響の第九での試みも含め、早くも今年の年末に思いは飛ぶのであった
オケの退場後にも拍手は止まず、歌手陣と共にカーチュンがステージに呼び戻されていた

4月7日19時 ミューザ川崎

ピアノ:イム・ユンチャン

曲⽬
シューベルト:ピアノ・ソナタ 第17番 ニ長調 D850《ガスタイナー》
スクリャービン:
ピアノ・ソナタ 第2番 嬰ト短調 Op. 19《ソナタ・ファンタジー》
ピアノ・ソナタ 第3番 嬰ヘ短調 Op. 23
ピアノ・ソナタ 第4番 嬰ヘ長調 Op. 30
アンコール
ラフマニノフ:ヴォカリーズ

ユンチャンは、これまで2回コンチェルトを聴いている、最初は皇帝、2回目はラフマニノフ4番、
卓越したテクニックの持ち主であることは分かったが、今一つ共感度が低い演奏だった
しかし、そう感じられたのは、必ずしもユンチャンだけのせいではなく、伴奏のオケ側にも原因が有ったように思える
リサイタルを聴くのは初めて、今日はオケのせいにはできない

当初発表のプログラム、ショパン/幻想曲 ヘ短調 Op.49、シューベルト/ピアノ・ソナタ第18番「幻想」ト長調 D894、シューマン/幻想曲 ハ長調 Op.17から変更になったこのプログラムを見て、チケットを購入した
スクリャービン好きとしてはうれしい変更であったのだが、会場に空席が目立ったのは何故だろう、やはりプログラムも影響したのだろうか

最初の17番は、実演で聴くのは初めてかもしれない、当初予定は、ゆったりとした18番だったが、なぜ変更したのだろうか
ユンチャンからのメッセージでは「この度、静かで長い迷いの時間を経て、ようやく自分の内奥に本当に息づいている音楽として、今、皆様にもっとも聞いていただきたいプログラムに変更する決断に至りました」と語っている

17番は「海辺のカフカ」で「フランツ・シューベルトのピアノ・ソナタを完璧に演奏することは、世界でいちばんむずかしい作業のひとつだからさ。とくにこのニ長調のソナタはそうだ。とびっきりの難物なんだ」と語られた作品
村上春樹自身がシューベルトのソナタでは17番を好んだという

ステージに現れたユンチャンは数年前に見た時より大人びて見えたが、それでも22歳だ、
さてユンチャンの17番は、テクニックが完璧であることは言うに及ばず、ダイナミックかつ抑制の効いた素晴らしい演奏だった
優等生的な演奏は影を潜め、様々な曲に野心的に取り組んだ結果が、今回のプログラム変更だったと推測する
緩徐楽章でこれほどまで十分なパウゼを取るシューベルトは初めて聴いたかもしれない

後半のスクリャービン3曲も良かった
最初の2番ソナタは実にきらびやかかつ抒情性に富んだ演奏、
そして2楽章の余韻が残る間に、ユンチャンは3番ソナタの一撃を振り下ろした
実演で聴いた3番ソナタの中で最もドラマティックな演奏だった、
終楽章の回想のメロディは美しいが、この曲がもうすぐ終わってしまうのかと思うと切ない
そして、3番の興奮の残る中、密やかに4番は開始された、
形式的には1楽章だが、演奏時間10分足らずの4番は実質的には単一楽章の作品と見做せる
ユンチャンは、この4番を実に爽快に駆け抜けた、左手で強奏される和音は、スクリャービン後期の神秘主義の門を叩くが如き

一皮も二皮も剥けたユンチャンが聴けたリサイタルだった