②の続き
個人的には大満足な公演でしたが、脚本のツッコミどころはまぁちょっと
鎌足の人生をそれこそ幼少期から死の間際の時期まで描き切るので早足感は否めず。
1幕は入鹿暗殺をクライマックスにそれぞれの心情を細かく描いていて
ともすれば入鹿の方が感情移入してしまいそうになります。みつるさんの入鹿が最高に
カッコよかったので個人的には良かったのですが、もう少し鎌足に焦点あててもよかったか。
2幕は入鹿と同じ修羅の道に歩む皇極帝。そして権力を持ったもの特有の
猜疑心に見舞われる中大兄。その二人の様子はさながら入鹿の亡霊がなせる業か。
政治家としての道を進む中で亡霊たちによって志を失いかけた鎌足が
ヨシコという志(またの名を愛)を最後までもがき離さなかったからこそ進めた道。
そんな様子を描いているのですが・・・愛の側面が濃すぎて鎌足の政治家としての
面が薄いのがちょっと。白村江の戦い辺りは描いてほしかったです。
他にも正室の鏡皇女どこいった?状態ですが、そこまで描き切るのは困難か。
今回キーとなった言葉が“こころざし”まだ幼い3人は誓い合います。
入鹿は国を豊かにすること、鎌足はその入鹿と共に国を盛り立てる事、
そして与志古はこの穏やかな時がずっと続いていくこと。
その“志”ですが、鎌足に関してはどうにもぼんやりとした印象が否めない。
最終的に「志は与志古か~い!」ってなりますし、鎌足がなしたかったことや
得たかったもの、その先にあったものはなんだったんだろうか。
ただ、ここで思うのは“志”っていったいなんだろうと。ふと思い辞書を引いてみる。
1・心に想い決めた目標
2・相手のためを思う気持ち
3・相手を慕う愛情
4・死者への追善供養
こう見てくると、案外“志”というのも一本筋が通っているのかなとも。
入鹿はもちろん1、与志古は2、そして鎌足は1にみせかけて3だったのか(4でもありますね)
そんな鎌足に時にはお尻を叩き、時には包容力をみせてきた与志古は
その名の通りずっと鎌足に対し“志を与える存在”だったのかもしれませんね。
そうは言っても、流石の殿中でのくんだりは『あかねさす』をパクオマージュしすぎというか、
ちょっとそれはどうなのよと思わずにいられない(演出面も含め)
冷徹な天智天皇なら「狂ったか~!」と切り捨て御免となるんじゃないかと戦々恐々でしたが、
それは『あかねさす』の天智のイメージ。ここでも先入観の強さを主知らされます。
(それにしても、弟には槍を向けられ最大の重臣に刀を振り回されw)
老年の鎌足は鎌足の描かれ方にしても紅さんがこれまでに演じられた役にしても新鮮。
一時の緊張感も解け、優しい空気の流れる鎌足と天智。不比等が出てきたときの
一瞬の緊張感と全てがわかったであろう二人の暗黙の了解が良いですね。
そして鎌足と与志古。それまでの流れもですが、まるで二人が歩んできた宝塚人生を
象徴するかのようなシーン。よしこの言葉に「強い殿方が好き」「弱い鎌足が好き」と
相反するセリフがありましたが、前者は鎌足への叱咤激励、後者は弱り切った鎌足に
寄り添う言葉なんですよね。とどのつまり、鎌足が好きってのが前提にあるわけで。
(それなのに鎌足は言葉の通り受け取るから頑張っちゃうところがまた可愛いんですがw)
それを経ての最後のよしこの独白。それまでの過程を経て、辛いこともあったけれど
「幸せだった」と。まるであーちゃんの宝塚人生そのものの言葉ですね。
鎌足は望んでいた姓を得て「嬉しくない」との言葉。その裏で一体どれほどの血が流れ
そして得た先に自分が思い描いた未来はなかった。一方で、その名を得る以上の
“志”をすでに鎌足が見つけていたとも言えますね。目線を変えますと、天智天皇目線では
自分の落とし子にせめてもの姓を授けたかったというのもあるかもしれませんね。
わが子不比等。そして未来へ想いを馳せ志を託した鎌足。
それはまるで次期トップの礼君、そして星組に重ね合わせているかのよう。
そんな星組の歴史は恵尺さんに被られないようw語り継いでいきたいですね!
続く