②の続き
演出、セットについて。サイトー先生にしてはあまりプロローグで盛り上がらないかなというのと、
脚本自体が場面の繋がりでできているので幕前芝居が多い気がしました。
観ている側の問題かもしれませんが、あまりに幕前芝居が多いと暗転の際に
ふと集中力が切れてしまうんですよね(あと幕を引くときの音が気になったりで)
逆に目を引いたのが吉岡一門との戦い。吉野太夫が奏でる琵琶の音色に合わせて
一気に畳みかけるような演出は迫力あり。ある意味剥き出しの武蔵の感情を
表している部分でもあるので、先ほども述べた巌流島での決闘が
研ぎ澄まされ不要なものをそぎ落とした大海の様な武蔵であるあるために
演出効果としては静であるのは必然でもあり、演出面では惜しいと思う部分でもあり。
コロス的存在である黒烏は死を象徴するものであり。その中で1羽の白烏。
対比的に生を表現しているのかと思っていましたがそういうわけでもなさそう。
死者にしろ生者にしろ、目指すべき所に導く存在なのかなと思ったりです。
(白い烏と聞けば思わず凛さんを思い出してしまう星組ファンw)
演出面で一番気になったところは、やはり心の声の多用でしょうか。
『桜華』の時も気になったし、その時も言った気がしますが
その“声”が無くても演技で十分に心情なりを表現できるはず。(演者の技量的にも)
今回はその『桜華』よりも多く、しかもその心の声がお通にも通じているんかい~!って
思わず突っ込んでしまった最後の「約束してたのに~」(いや、声には出してませんよね?)
心の声を使うとするなら武蔵と小次郎のファーストコンタクト時ぐらいでいいし、
あまりに入れすぎると舞台独特な“余白”が損なわれてしまう気がして。
衣装、音楽について。武蔵は地味、ひたすら地味。小次郎しかり又八然り、
割と周りの人物が派手な衣装を着ている事が多いのでその地味さが余計引き立つ。
というのも変な話ですがちょっぴり薄汚れたあの武蔵っぽい(ていうか武蔵だけれどw)
衣装をたまき君に着てほしい!というサイトー先生の願望はビンビン伝わってきました(笑)
個人的にはあのむさ苦しい作務衣にむさ苦しいお髭姿のむさ苦しいおっさん武蔵姿な
(褒めてますよw)たまき武蔵が一番好きなビジュアルだなと(笑)髭が本当に良くお似合いで
音楽もあまり心に残るものが無いのが残念。だから余計にプロローグが
パッとしない気がしますが。お通とのデュエットは良い曲だなぁと頭に残っています。
とまぁ、ちょっとネガティブな感想が多めとなってしまいましたが。
サイトー作品らしい良さもあるなと思ったのは、多くの組子に出番があり
それがただの背景ではなく少しの出番であってもしっかりとインパクトを残している事。
勿論それは組子の演技力によって昇華されている部分もありますが。
(本来なら脚本力で組子の魅力を更に引き立てなければいけないところですけれど)
どうしてもあちら目線になってしまう美弥ちゃんは置いておいて
(いや、でも本当にこの役の難しさたるや。ただただ銀橋をあるいているだけでも
あの存在感を出すのはやはりこれまでの経験と実力がなせる業でしたね)
個人的に良かったなと思ったのが、紫門無二斎、晴音阿国、海乃太夫、吉岡千星。
(もっと言ったらキリがないので、比較的出番が多かった人達から)
ずっと若いロイヤルなイメージが強かったゆり君ですが、ここ最近の頼もしさたるや。
役柄も落ち着いたものが多くなり、舞台に良いスパイスを与えてくれます。
はーちゃんはとかく舞台がパッと切り替わる。一人で持たせる技量も素晴らしいですね!
正直舞台を見るまでは本来朱実は海ちゃんだったのかなとも思っていましたが、
いざ見てみるときちんと海ちゃんに宛てた役でした。いいお役でしたね!
そしてあり君。これまでにない引き出しのお役でしたが、今まで押せ押せだったのが
『エリザ』あたりから引く演技も上手くなりましたね!京言葉も素敵でした
もっと一人一人語りたいほどに役として生きる組子が魅力的で、
若手中堅の台頭も頼もしく思えた舞台でした。
なので、なんとも惜しいと思える作品ではありますが。。。
今回も美弥ちゃん始め上級生が退団していきますが「芝居といえば月組」
その魂を受け継いで舞台に華咲かせてほしいですね!
続き続きはショーのお話