事業責任者と話しているときにも、1年目の育成をサポートしてくれているトレーナーと話しているときにも、よく上がるのが「目標設定が難しい」という話題です。人事のみんなで事例を集めてフレームワークをつくる取り組み「ジレームワーク」で目標について議論してみました。

 

目標設定が上手なリーダーの共通項を列挙し、そこから特に重要な要素を抽出して独自のフレームワークにまとめてみました。

 

このフレームワークは「目標のIMPACTモデル」と呼びます。一つ一つの文字に意味を込めて、それぞれを配慮するとインパクトのある目標につながるというものです。

 

 

■目標のIMPACTモデル
I inspiring              ワクワクするか?
M memorable         覚えられるか?
P praiseworthy       感謝されるものか?
A achievement       成果物が想像できるか?
C contribution        貢献につながるものか?
T timely                今の目標として適切か?

 

 

I inspiring ワクワクするか?
面白い、楽しそう、実現できたらすごいなどワクワクする目標は自然と集中力が上がります。目標においては定量要素と定性要素で整理する方法がありますが、定性の部分はむしろ個人の感情面を意識して燃えるものや楽しいものを考慮して意味づけするのがおすすめです。ワクワクするものであれば、その目標が自分のものになっている度合いが高まり、達成までの粘りも生まれます。

 

M memorable 覚えられるか?
自分はもちろん周囲の仲間が、本人の目標を覚えているかというものです。達成確率が高い人の共通項に、目標をいつも見ているというのがあります。何か見えるところに置いておくでもよいですし、リマインダなどで工夫して見えるようにするでもいい。最近では目標を部署内でオープン化して周囲の仲間にも見えるようにしたり、リーダー陣であつまってメンバーの目標を議論したりするなどの取り組みが社内でも増えていますが、見えるようにするのはとても良いですね。周囲の人に覚えてもらうと、自分が何を挑戦しているのかが伝わって、応援が増えます。結果として達成確率も上がっていきます。

 

P praiseworthy 感謝されるものか?

目標を達成した時に、その目標が賞賛されたり感謝されるものになっているかどうか。上司や周囲の人に感謝されるものがイメージできれば良い目標だと言えます。部署などで表彰されるイメージなどがわくかどうかもチェックポイントです。上司や周囲からの褒めセリフを目標にする「セリフメソッド」などは、感情面での褒められるというポジティブな状態を目標設定する時点で盛り込むのでこの感謝を具体的にイメージすることができます。


A achievement 成果物が想像できるか?
目標を達成したその先にある成果物がきちんとイメージできるかどうか。目標設定の時に陥りがちな罠の一つに、「◯◯をやる」「◯◯をがんばる」などの動作だけを目標にしてしまい、成果物までイメージしないというのがあります。『目標はDOではなくBE』という表現があります。DOのような「やること」ではなく、BEのように成したあとの状態がイメージできるものを目標にするのがおすすめです。一方、DOでも目標として良いものもあります。「◯◯なサービスをつくる」「◯◯な事業をつくる」などはDOの表現が入っていますが、その先にどういう状態が生まれるかがイメージできれば、成果物が想像できるものとして良い目標になります。

 

C contribution 貢献につながるものか?
その目標は誰に対して、どのような貢献になるのか。チームや部門の貢献につながるものかどうかを確認することで、独りよがりの目標にならないようになります。自分で考えた目標は、視点が低かったり視野が狭かったりすると、自分としてはチームのために良い目標だと思っていることが実は上司や周囲の仲間からすると別のことをやってほしいと思われることもあります。組織や仲間への貢献がイメージできるものかどうかを周りの人に相談してみるとより効果的な目標にブラッシュアップすることができます。

 

T timely 今の目標として適切か?
今このタイミングにふさわしい目標かどうか。たとえば部署や役割が変われば目標をきちんと変える。上司が変わった時にも現状の目標で良いかをきちんと確認することが大切です。半年や1年などの大きな目標の場合には、状況に合わせて組織目標や戦略が変更になることがありますが、個人の目標もそれに合わせて変化させることが重要です。状況が変わったのに目標が変わってないという時には自分から周囲に相談して納得性の高い目標にしていくのがおすすめです。

 

以上がこのモデルの説明です。


今回のIMPACTモデルには、自分軸と組織軸の両面が入っています。特に大事なのは自分軸。「I inspiring ワクワクするか?」「P praiseworthy 感謝されるものか?」などは、個人の視点が強く入っています。目標はつい組織の目線が優先になりがちですが、組織軸と自分軸が両方高められるものだと、お互いが納得できる良い目標になります。

 

上記の全ての要素で完璧を目指す必要はありません。もっと良い目標にしたいと思った時に、考える際の網羅性を広げたり、効果性を高めるヒントとして見てもらえればと思います。逆に、「この目標が何かいまいちだな」と感じるときには、上記の要素のどれかが崩れていることが多いので、複数人で目標をすりあわせする際などに議論の材料に活用できます。


良い目標にできたら、達成したも同然。

 

同じ成果を狙う場合でも、ワクワクしたり感謝がイメージできる良い目標にできたら、その分思考も働き粘りも生まれて達成確率があがります。

 

 

目標は、IMPACTで考える。