人事や広報IR、経営本部などが全員集まる朝会で月一回、考えてることや思ってることをスピーチさせてもらう機会があります。

 

先日、みんなにお願いしたことは

 

「捨てることも大事な決断」

 

という話でした。

 

これを感じたのは、サイバーエージェントの役員会です。サイバーエージェントの役員ミーティングは毎週実施しているのですが、1回あたりの会議の人数を8人から7人に減らしました。取締役は候補を含めて11人いますが、そのうち社長の藤田と全社機能の中山、人事担当の私の3人が毎週参加し、他の8人の取締役がランダムな組み合わせのもと4名づつ参加しています。

 

人数が8人から7人になったことで、感覚的にですが一人一人の発言量がより増えたように感じています。今後もこの会議体自体はいろいろ試しながら変化していくと思いますが、人数を1人減らしてみる、つまり捨ててみるということでも新たに起きる変化があるものなんだなという発見がありました。

 

今回は取締役の体制変更というタイミングと同時に起こした変化ですが、

 

「変化のときこそ、捨てるチャンス」

 

というのはとても大事な考え方で、全社機能の朝会スピーチでもこの点を意識して話しました。

 

戦略の変更があったタイミングや、組織変更があったタイミング。自分が部署を異動したタイミングや昇格などをしたタイミング。こうした「変化のとき」というのは、組織の状態や仕事のやり方などに「ゆらぎ」が生まれやすく、変化もしやすいタイミングです。まさに絶好の捨てるチャンス。これまでの「もっとよくできるもの」「イマイチ機能していないもの」を見極めて、思い切って変えることができる機会となります。

 

捨てるものの例としては、会議や資料などが代表例です。

 

たとえば会議。その会議は本当に効果を発揮しているのか?100点満点つけるとしたら、何点なのか?

 

・会議そのものを一度やめてみる(やめると本当の大切なことがわかる)

・時間を半分にしてみる(だらだらやるのがなくなって、重要な議題にしぼることができる)

・時間や曜日を変えてみる(他の会議との連動性を考えるとずらすだけで効果が上がることも)

 

資料もやめることができます。

 

・複数のシートを一枚にまとめてみる(一覧性が高くなって正確な判断ができる)

・印刷をやめてプロジェクタやモニタを使う(みんなで同じ画面を見ることで議論が進む)

・会議で持ち寄るのをやめて、事前にチャットなどで共有する(参加者が事前に考えられる)

 

などなど。

 

会議や資料というものには、実は非常に怖いワナがあります。

 

会議や資料は、増える一方である。

 

というワナです。とにかく増えるだけ。減らすには努力が必要だということです。

 

「○○について、会議をやろう!」「定例ミーティングをいれよう!」というのはすごく簡単です。ただ、その分参加者の時間を「奪う」ことにほかなりません。気づいている人と気づいてない人に大きくわかれますが、目的がわからない会議を入れたり、会議に呼んでおいて自分が遅刻するなどの「時間泥棒」は社内外問わず評判がよくありません。一方、仕事ができる人や周囲から評判良い人は、時間を大切にする人というのが共通することです。見えない「時間を奪うことの重要性」を理解し、丁重に扱っています。

 

基本的に「始めるのは簡単、やめることは難しい」ものです。これは新規事業も同様で、「新しいことを始める」という言葉の響きが何より美しく、やらないことに異論は出にくいものです。一方で「やめる」というのは誰かを傷つけるのではないかとか、誰かに迷惑をかけるのではないかという不安を思いつきやすいため、だったらそのままにしておいたほうが無難だ、という着地になりがちです。

 

よくあるのは、会議がやめられないケース。参加者(とくにメンバー)は意味がないと感じているのに、上司が気づいてないために参加メンバーがそのままになっていたり、むしろ参加者を臨時で呼んだらそのまま定例で参加する前提になっていくなど、増える一方になるものです。


会議を始めることは、誰でもできる。

会議をやめることは、オーナーでないと難しい。

 

この構図があるので、会議のオーナーや上司から「一回やめよう」と発言してもらうことがとても効果的です。

 

 

仕事ができる人の会議マネジメントを観察してみると、いくつかの共通項があります。

 

人数上限を決める。

 

サイバーエージェントの役員では、8人以上では議論が機能しないと決めています。

 

増やしたら、減らす。

 

会議や資料をひとつ増やしたら、ひとつ減らす。増やす人が、そのかわりに減らす会議も提言する。

 

すぐにやめる。

 

効果がない、機能してないと思ったらすぐにやめる。できる人はこの判断が早い。

 

 

ちょうど今月、サイバーエージェントは「全社・棚卸強化月間」として事業責任者のみなさんに棚卸をお願いしたり、業務改善につなげる棚卸会議を実施しています。この1か月だけでも、約1000人の棚卸会議を実施します。

 

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ここでも会議や資料の棚卸リクエストが出てきており、上司が一緒になって改善活動を進めてくれています。

また、来月12月にはGEPPOを通じて各部署の棚卸の状況をヒアリングする予定です。

 

この棚卸会議で、よく見かけるシーンがあります。

 

「こういうやり方、すてたいんです・・・」

 

「え?そんなことをやっていたの?!もちろんやめていいよ!」

 

というやりとりです。パソコンなどを通じて知的労働をしていると、他の人の作業プロセスは見えないものです。だからこそこういうやりとりも起きうるのです。

 

捨てたいものがあるときには、ぜひ思い切って上司に相談してみてもらえると意外にさくっと解決するかもしれません。また、上司や先輩のみなさんは何かメンバーに困っているものや捨てたいものがないか、聞いてみてもらえればと思います。

 

意外なボトルネックが見つかることで、大きな業績の飛躍のヒントが見つかるかもしれませんし、何よりその対話を通じて一緒に改善すれば信頼関係のプラスにもなっていきます。

 

捨てることも大事な決断として、意識して私も捨てるものがないか見ていきます。