高護のSFC音楽出版が白夜書房を通じて発売した日本のロックに関する書籍は、どれも素晴しいものですが、今でも追随を許さずその価値を保っているのが「定本」シリーズです。第1弾が「定本ジャックス」、第2弾が「定本はっぴいえんど」でした。SFCが制作したCD「幻野EVIDENCE」(SOLIDレコード)の解説によると、頭脳警察について「いずれ小社からきちんとした研究書の発行を予定している」とあるので、もしかしたら第3弾は「定本頭脳警察」になる予定だったのかもしれません。 定本シリーズは、主に次の項目で構成されています。●インタビュー:多数の関係者に対する詳細なもので、貴重な証言が得られています。様々な事実関係や当時の考えなどが明らかになります。●写真:レアな写真が掲載されています。●歴史:通史としてまとめたものです。●年表:出来事を日ごとに示しています。●原詩:楽曲の詩のルーツを追ったものです。
1 定本ジャックス

著者:高護、編者:黒沢進・高護、発行日:1986年2月3日、帯:至極のロックグループ ジャックスの完全無欠研究本
目次:(Ⅰ)写真編/(Ⅱ)解析編 1 ジャックスの歴史、2 ジャックスの音楽性/(Ⅲ)資料編 1 年譜、2 ディスコグラフィー、3 作品リスト、4 バッキングディスコグラフィー、5 早川義夫ディレクター作品リスト、6 カヴァー作品リスト、7 関係メディア解説、8 原詩紹介/(Ⅳ)インタビュー編 ●木田高介、1 水橋春夫、2 谷野ひとし、3 朝妻一郎、4 相沢靖子、5 つのだひろ、6 高橋末広、7 松原絵里、8 早川義夫
ジャックスに対するリスペクトは1969年の解散後すぐに始まります。1972年には、早川の「サルビアの花」が「もとまろ」により歌われヒットします。しかし、早川は音楽業界から引退し本屋になり、また、「からっぽの世界」が「唖」という言葉を歌詞に含んでいることから発売・放送禁止になったりしたため、この本の出た当時、ジャックスは既に伝説化していました。それが、からっぽの世界を含めオリジナル盤で聴けるようになったのは、ひとえにSFC音楽出版の多大なる尽力によるものです。1989年に「ジャックスCDボックス」(SOLIDレコード)による復刻などの功績があったからこそのものであり、その偉大なる第1歩が、この本です。
2 定本はっぴいえんど

編著者:大川俊昭・高護、発行日:1986年12月15日、帯:日本語によるロックの先駆者 はっぴいえんど研究の決定版!!
目次:(Ⅰ)写真編/(Ⅱ)歴史解析編 1 はっぴいえんどの歴史、2 はっぴいえんどレコード解説/(Ⅲ)インタビュー編 1 大瀧詠一、2 小倉エージ、3 鈴木茂、4 石浦信三、5 松本隆、6 三浦光紀、7 細野晴臣/(Ⅳ)資料編 1 推敲前の詩の原型、2 年譜、3 系譜、4 ディスコグラフィー、5 チャートグラフィー、6 バッキングディスコグラフィー
はっぴいえんども解散直後から伝説化していきますが、メンバーは解散後も積極的に音楽活動に取り組み、キャラメル・ママ~ティン・パン・アレー(細野、茂)、ナイアガラレコード(大瀧)、作詞家(松本)、YMO(細野)、ロング・ヴァケーション(大瀧)など業績を残していきます。その都度はっぴいえんどの記事が雑誌に掲載されたり、何度もレコードが復刻されたので、音楽に触れたり、情報を得ることはできました。また、「はっぴいえんど伝説」という単行本も出ていました。しかし、それらの記事や本を凌駕するのがこの「定本はっぴいえんど」です。メンバーがアマチュア時代に在籍したバンドを全て網羅しているところから、もう凄いわけです。「かくれんぼ」の歌詞の変遷にも驚きました。この本と同時期に、SFCは「はっぴいえんどGREEEATEST LIVE! ON STAGE」(SOLIDレコード)というレコードをリリースし、「ロック反乱祭」でのデビューステージを初めて収録します。そのレコードとこの本の二重の衝撃により当時はとにかく興奮しました。
この2冊が、現在絶版であるのはもったいない話です。