- ジョン J.ナンス, 菊地 よしみ
- 軌道離脱
平凡で善良な中年男性が、宇宙旅行に当選し、
いざ宇宙へ旅立ったところ、トラブルに見舞われてひとり孤独に軌道をまわることになり、
そこで死を覚悟して綴った彼の半生記が知らぬ間に地上に届き、世界を変えて(?)いくという感動作、
だそうです。
面白そうなあらすじに惹かれて購入した本作ですが、これが実際に読んでみると――
あらすじ以上のことは何もないというか。
始まりも展開も結末も、予定調和から一歩も出ないという、退屈でたまらない小説。
うーん。
まるで映画のノベライズか、演劇の台本を読んでいるかのようなのですよね……。
映画であれば演出によって凄く面白いドラマに出来そうな気もするのですが、あいにく小説としての面白さは感じられません。
目立つ欠点もない小説なのに、どうしてこれほど面白くないのか、不思議なほど。
これは何故なのかと考えてみたのですが、結末が見えている(この内容で主人公が地球に戻れないとゆーのはありえんだろ……)ということの他に、キャラクターの魅力の薄さがあるかもしれません。
平凡な人物として設定されている主人公が本当に平凡でありすぎて、感情移入できないのです。
ほどほどに善良で、ほどほどに不器用で、二度目の結婚も上手くいっておらず、息子ともぎくしゃくしている――
作者はあえて「アメリカ人の一般的な父親像」としてこの登場人物を造形したのだろうと思われますが、平凡であることイコール実在感があることではないのでは。
早い話が、読者である私自身が、ぜんぜん彼を応援したくならないのですよね……。
世界中の人々が固唾をのんで彼の動向を見守り、その文章を読み続ける、となっているのですが、
(えー、ホントかよ。こんなの退屈で読んでいられないよ……!!)
と現実の読み手である私は唸ってしまいました。
だいたいこの主人公の手記というのが、説教くさい。
自分の人生を振り返って反省を書くのは構いませんが、
「あなたがた(主人公は地上でこれを読まれているとは知らない、という設定なのですが)も〇〇すべきだ」
とか言われても、「アンタだって地上にいるときは出来なかったじゃないかよ」と思ってしまい、意外と感銘を受けないのです。
それなのに作中の地上のひとびとは熱狂的に彼を受け入れるわけです。
あー、そうですね。このあたりは「電車男」(TV版の)を思わせるキモチ悪さかもしれません。
この「作品上の読み手」と「現実の読み手」との温度差は、いったいどうしたらいいのでしょうね……。
ラストはなかなか気持のよいハッピー・エンドではあるのですが、それまでにこの主人公に感情移入しているわけではないので
「あー、そう」
と、すごく他人事で終わってしまいました。
結局のところ、主人公が平凡であるから魅力がない、というよりも、本作では平凡な人物が魅力的に書かれていない、ということなのかもしれません。
いつもの航空小説はハラハラドキドキして大好きなのですが、ざんねん。