低温蘇生の後遺症に悩むマイルズは、救出作戦で最悪の失敗を犯す。
突然の発作に、助けたはずの味方の両足をプラズマ・アーク銃で分断してしまったのだ。
「ネイスミス提督」という失いたくない立場を守るために、マイルズは偽りの報告書を作成してしまうのだが――
- ロイス・マクマスター・ビジョルド, 小木曽 絢子
- メモリー 上
- ロイス・マクマスター・ビジョルド, 小木曽 絢子
- メモリー 下
マイルズという、この我の強くて強烈なコンプレックスを持つ、せかせかしたエネルギー過多な主人公が、
私はまったく好きではないのです。
そもそも、マイルズとは何者かというと。
閉鎖的な惑星バラヤーのヴォルと呼ばれる貴族階級(貴族であり軍人なのですね。日本の武士のよーなものだと思っていただけるとよろしいかと)の、それもかなりの名門であるヴォルコシガン家に生を享けるわけですが。
母は外星人、父は摂政閣下。
マイルズは母の胎内にいる時に、テロの標的となり、かなりのハンデを背負わされてしまうのです。
この障害は、閉鎖的で時代遅れなバラヤーでは「突然変異(ミュータント)」として、物凄い差別の対象となるわけで。
それがどの程度の差別かというと、実の祖父から命を狙われるほど。
軍人であることが絶対的な価値を持つバラヤー社会で、身体的なハンデを背負ったマイルズが生きていくこと……
ここまで説明していくと、アレ? マイルズは大変な人生をおくってるよーな……。
これでは我が強くても仕方がないかも。やたらと自分の頭の回転のよさをひけらかし、目の前の人間に先んじていなければ気がすまない、という性格であるのも、ムリもないのかも……?
えーと、それはさておき、
マイルズの人生としては、この先が本題なのです。
士官学校の入学試験に失敗して旅に出たマイルズは、ある事件から持ち前の舌先三寸で傭兵部隊をのっとり(あれはホントーにのっとりだった)、司令官「ネイスミス提督」という立場をでっちあげて(あれもホントーにでっちあげだった)しまうのです!
その功績により、軍への入隊を許され、
「ネイスミス提督」、その実態はバラヤーの秘密工作員(実際にはまだ中尉だったり……)として、数々の作戦を成功させていくのです――が。
この二重生活が終わるときが来ようとは!
しかもこの私が、マイルズがプロポーズを断られる場面を読んで、
「そんな女は捨ててしまえ!」
とか思う日が来ようとは!
さすがビジョルド、おそるべき筆力ですね……。
いやー、でも、エリ・クインが好きなのは「ネイスミス提督」でしかないわけで、
相手の男の一部分しか愛せないような女など捨ててしまえーと思うのですよ。
というわけで、いたずらにマイルズの人生を振り返ってしまっただけで、
何のレビューにもなっておりませんが、本作はシリーズにおける重要なターニング・ポイントとなっております。
言ってみれば、
「マイルズ、オトナになるの巻」
でしょうか。
ははー、相変わらずビジョルドは素晴らしい物語作家であるなーと感心しました。
「自分の本当の望みとは?」
というのは、誰しも人生のある時点で考えることで、私自身も思うところのあるテーマであるだけに、とても興味深く読みました。
出版事情もいろいろあるようですが、まだまだ続くこのシリーズ、次の訳出を楽しみにしております。








