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水の中。

海外小説のレビューと、創作を。

13世紀、ケルン。市場で売り物を掠めどりながら暮らす赤毛の男ヤコプは、盗みの最中に殺人を目撃してしまう。
殺された男はケルン大聖堂の建築監督ゲーアハルト。
ただひとりの目撃者ヤコプは、悪魔のような暗殺者に追われ始めるのだった。

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「深海のYRR」の著者が放つ歴史サスペンス
――というのは帯の謳い文句ですが、デビュー作は1995年作品であるこちらのほうだそうで。


えー、ものすごくおおざっぱに譬えればー、


「悪大名の陰謀を知った長屋の住人たちが、花のお江戸(なにが江戸)を舞台に大活躍!!」



みたいなお話です。



いやホント、ドラマ的にはそれくらいの物語であるのですが、本作がスバラシイのは、やはりそのディテールではないでしょうか。私のようなケルンのケの字も知らないような頭のゆるい読み手にも、しっかりはっきり情景が浮かんでくるところがスゴイ。
当時の経済状況や政治などのマクロな背景から商魂たくましいケルン市民の独立不羈の気風までも、すべて物語にからめて書き込んでくる丁寧な仕事ぶり。
ややもすれば退屈になりかねない説明部分も、ヤスパーが教養のないヤコプに問答を仕掛ける、という形で処理してしまうのは上手いですよねえ……。
まるでその場に居合わせたかのような、面白い中世体験でした。



それにしてもヤコプを追い立てるオーヴァーシュトルツ側の秘密結社ってさー、あれはどうよ。
彼らはヤコプをつけねらう敵、つまり読み手にとっても敵方である存在なのですが、最初から最後までワーワーキャーキャーと内輪もめばかりして、いっこうにまとまる気配がない。
最後までまとまらない。
その様子にしだいにイライラしてきたわたくし、ついには「なにやっとんじゃ! こんなんで大義が果たせるのか!」と叱咤するキモチにさえなりました。
稀有な悪役……。



あ、そうそう。こーゆー翻訳物によくある登場人物紹介ってあるではないですか。
本作はもちろん主人公(たぶん)であるヤコプが筆頭なのですが、



ヤコプ…………こそ泥





であるのには度肝をぬかれました。

(すごい。三文字で紹介される主人公。しかも「泥棒」とか「物乞い」でなく「こそ泥」って……)





な、なにやら「スキーに行ってきますv」以来、更新がストップしているここですが、
もちろん遭難とかはしていません。
ぶじ志賀高原から(なんかダンナがですね、『おれ中級者のころ、ここらへんでよく滑ってたから、お前にちょうどいい』とか、よく考えたら驕った発言してやがったわ……! )戻って来ております。


しかし体力低下中の自分……、もう来シーズンまで行きたくありません。



わたくし「ヤダあんなとこまで行くのヤダ!! 掘れてボコボコな斜面こわいイヤー!」
ダンナ「あー、大丈夫大丈夫、おまえの板わりとオールラウンドにどこでもイケるやつだから」
わたくし「今、今してるのは板の話じゃなくてっ」


(いつも以上に会話噛み合わない)


とか、


ダンナ「心配ない心配ない、おれずっと見ててやるから」
わたくし「あ、ありが……」


と礼を言い終わらないうちに、シャーッと滑りさるダンナ。
そして米粒ほどの大きさになってから、振り返って手を振るダンナ。


(見てるだけじゃねえかよオイ!!)



……みたいな様子でした。



そういえば映画「銀色のシーズン」を観せられたのですが、
あれはひどい映画だったなあ……。


主役ふたりの過去がツッコミどころがありすぎて恋愛自体も盛り上がらない上に、他の登場人物が物語にまったく絡んでこないのがなあ(サトエリの脇役ぶりなど見ていて気の毒なほど……)。
いっそ「三バカトリオの青春スキードラマ」にしたほうがマシだったのではと、どーしてみんなが駆け寄ってくるのか全く分からないラストの感動シーンを見て思いました(なんなんだろアレ)。


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水の中。-八方


留守にいたします!!

連休なのでスキーに行かされ……いえ行って来ます。でもまだ雪なんてあるのでしょうか、この気温で。

というよりまだ荷物つめてもいないんですけど。

ひー!!


旦那起きたら叱られる……!


でもアレですよね。男子はぱんつ一枚持っていけばいい話ですが(裏返してはけ!)、女子の身はそうはいかないんすよ女子が汚くしてるのは犯罪なんですよああああ面倒くさいったら!


そういえばその昔、知人の男性ですっごい几帳面な人がいたのですが、その人が手帳に出張に持っていくアイテムをひとつひとつ丁寧に書き込んでいるのを見てビビリました。えーとそう、たとえばですね、


Tシャツ(白)×2 とか。 ←色! 色まで!!


なんかもう本質的に私とは出来が違う……

あのー、ビジネス界で「地頭がいい」とか言うのとはまたちょっと違う意味で「うわスペック全然ちがう!」と思うほど賢いひと(思考のスピードが全然ちがうような~)のことも勿論「スゴイわー」と思ったりするのですが。

「根が几帳面」である人に出会うと、もうなんだか全然かなわないような気がしますね……。


あれ何の話でしたか。


ああ荷造りからの逃避だった……も、戻ります。ではまた!





次なる舞台は、鬼束れいも出場するグランプリ・シリーズの大会、スケートアメリカ!
ハードな練習を重ねながらも八木沢コーチへの想いを自覚し、ぎくしゃくしてしまう「まふゆ」だったが……


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な、なんと。
まさかの衝撃の、なんといいますか「完結編」!!



おおおおおー、恐れていたことが……もうちょっと読みたかったところですが、
しかしこの巻の八木沢コーチ×まふゆ×奥さんという三角関係の描き方を見るに、この先どれほど続いたところで何か見どころがありそうという気もしないなー……。



何がダメって、八木沢コーチと奥さんの結婚の理由がアレではなあ……。
彼ら夫婦は元ペアだそうで、ケガをさせて選手として再起不能となった奥さんへつぐないの気持からうんぬん(このへん本人が語ったわけでなく、カバちゃんによる第三者推測ですが)。



いや理由は別にいいんですよ、それでも。
何がダメって「つぐない」→「愛していたわけではない」→「だからノーカウント」みたいな、何か物事をキレイにしよーとしてる、それで無かったことになるとでも思っている、奥さんを悪者ぽく扱う、その少女まんが的キヨラカ理屈をこねるあたり、もうこの先も絶対に大人のドラマなどは読めそうにない、と思ってしまいますね……。



私という読者が妻という立場の人間だからというのもあるかもしれませんが、
だってさー、この奥さん、ちっとも悪くないじゃん。

理由はどうあれ結婚を選んでおきながら、会ったばかりの十代の教え子をスキになっちゃう八木沢のほうが、よっぽど気持ち悪いんですけどー!!

(わかっていたんだ彼女の気持ちは……というモノローグとかもうダメ……)



しかし、恋愛物としてこれほどダメであるにもかかわらず、スポーツ物としていまひとつであるにもかかわらず、それでもこの最終巻はクライマックスとしてかなり読ませるのですよね。おお、さすがベテラン作家さん……どのようなコンディションでもバットにボールを当てて塁に出る! というカンジです。底力を感じます。



すっごい余計なお世話なんですけど、あのー……このせっかくの漫画力を生かすべく、原作付の連載ではダメですかね……。






現場を離れ、クワンティコで教官としての日々を過ごすギデオンに、ある日突然BAU(FBI行動分析課)からの召集がかかる。
「シアトル連続絞殺魔」の仕業と思われる五人目の行方不明者が発生したのだ。
しかもまだ彼女は、生きている可能性があるという――ギデオンは犠牲を食い止めることが出来るのか?

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習慣で、ついつい三行あらすじなどを書いてしまいましたが、
今回はこのTVシリーズのレビューをしたいわけでなく。




本作「クリミナル・マインド」を観て、非常に癒される自分がいたわけですが、そこに改めて疑問を感じまして、ちょっと考えてみたのです。

以前から「ブロークン・エンジェル」「GANTZ」などの作品の感想でも繰り返し、

「癒される。だけどこーゆー作品に癒されるのは、なんかすごく良からぬ理由がある気がする」

などと書いていた記憶があるのですが……。




そう、この世にはいくらでも、人間の善意を刺激するような「感動的で泣かせる良い物語」があると思うのですよ。しかしヘンな話、私などはこれらに全く癒されず「他人事で泣いてる場合じゃねえし」「カンベンして」という気持になってしまうのですよね。

思うにやはり、これは「自分の日常が殺伐としているから」なのではないかと!



ごくフツーの会社員の私にも、日々いろいろな戦いがあるわけですよ。
社内でも部が違えば利害が対立する場面もありますし、やり方をしくじれば正論が通じないこともありますし、やたら賢い相手にディベートで勝たねばならない場面もあれば、退きつつもここまでは死守せねばのラインもあるわけで、思えばいつも駆け引きしつつ、日常を何食わぬ顔でやり過ごさねばならないわけなのです。
ある日それに疲れて辛くなった人などが、まあちょっと会社に来なくなっちゃったりするのでしょうし、実際そういう気持も分からないではないのですが……。



つまりですね、私がこの作品などを見て感じることが何かというと、
「ああ、ギデオン(主人公)てホンット大変だよなー、何かといえばすぐ連続殺人犯に後ろから狙われちゃうしさー。ああ、わたしなんか平穏無事な毎日でホントよかったなあ……」
という、「自分の日常はこれよりずっとマシなのね」という身もフタもない感想で、幸せの感じ方としては何から何まで間違っているのではないかと思うのですが……。


でもやっぱり癒されます。ねえ。





科学警察研究所、法医第九研究室――通称「第九」。

凶悪犯・貝沼の脳を見たために、室長の蒔をのぞくすべての捜査員を失った第九に、捜査一課の岡部が配属を言い渡される。

「冗談じゃない。MRI捜査なんて覗きと同じじゃないか!」

捜査にも蒔本人へも、反発を覚える岡部だが……


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えー、上のあらすじにある岡部さん主役の過去のお話はさておき。 ←メインパートです



後半に収録されていた「模倣犯(コピーキャット)」。


これは「他人の手口に感化されて犯行に手を染める犯人像=模倣犯」に、自分の姿を重ねる青木の苦悩から始まる物語、ですね。


つまり彼はですね、自分の雪子センセーへの愛や、蒔さんへの……あれここ何だっけ? 「慕っている」でいいのかな? えーと蒔さんに対する好意などがですね、自分のものではないのでは? と疑っているわけです。


自分のものではなく、亡くなった鈴木(雪子先生の恋人で、蒔さんの親友)の脳をのぞいたせいではないか?
鈴木の記憶に感化されたのでは?
いや待て待て待て! そんなはずないもんねーだ!


……というふうに、自分を証明するためにも捜査に奔走するのです(次巻へつづく)。



うーん、動機。
「この気持ちがどこから来ているか」というのは、その想いが強ければ強いほど気になって、まっさらにキレイであってほしいものかもしれませんが。
そういう気持も分からなくはないですが。
でもなー、なにもべつに出発点がキレイでなくたっていいのになあ……と思うのは、私が背中のすすけた大人だからでしょうか。


しかし動機うんぬんは置くとして、実際のところ青木が「この三角関係の一角」に、故人とまったく同じ役割で、まったく同じ位置についてしまったことには変わりないのですよねえ。そっちのほうが問題では。



雪子せんせい→蒔さん→青木→雪子せんせい



この関係性で誰が一番可哀そうなのかなーと考えてみたのですが……私はやはり雪子先生に同情してしまいますね。
わざと憎まれるように振舞うことでしか、気持ちのぶつけようのない彼女ですが、
それにしても前巻での蒔さんの冷たいことったら! 
うーわーダメだ、好きなひとにあんな目で見られるの耐えられない……!



救いがあるとすれば、青木が故人とどれほど似ていたとしても別人である、という部分でしょうか。
前回は悲劇に終わった(事件がらみのせいなんですがー)三人の関係に、
今度こそちがう結論が出るのでは? 
青木だからこその、突破口があるのでは?
今後の青木に、私はすんごく期待してます!



(と、あいかわらず三角関係だけを語って終わるこのレビュー……)






ここは功成り名遂げた者の集う砂上の高楼、「沙髙棲(さこうろう)」――
女装の主人に招かれた招待客たちが、今宵も互いに持ち寄った、世にも不思議な出来事を語り始めるのだった。

草原からの使者―沙高樓綺譚 (徳間文庫)/浅田 次郎
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出ました! 沙高樓綺譚Ⅱ! (でイイと思うのですがタイトル……)
浅田次郎せんせいの名人芸の語りで読み手をもてなしてくれる、この作品集。今回のラインナップはといいますと


1「宰相の器」
総裁選にまつわる占いネタ(ちょっと違うか)。
そうか、昔の政治家とは志のある人が目指した使命であったわけですね。まあ時代が違うので、言ってもしょーがないと思いますが……な物語。しかし物語の主役である政治屋さんは特殊なキャラだと思われます(あれでショックを受けるだなんて、むしろピュアではないかと)。



2「終身名誉会員」
財閥最後のプリンスが一文無しになったお話。
あのー、ひとつだけ気になる演出があるのですが、財閥で名前を襲名なんて聞いたことないんですけど、私が知らないだけでしょうか。岩崎家の子孫が岩崎弥太郎を名乗り続けるなんて聞かないし、フツーはないよなあ……歌舞伎じゃないんだし。



3「草原からの使者」
押しも押されぬ生産者兼大馬主が、後継者となった経緯は……?
ハイセイコーのレースに絡めた物語。この物語が一番、シリーズの趣旨とも合っていて面白かったです。さすが表題作。



4「星条旗よ永遠なれ」
日本人女性を妻にした元米軍大佐が語る「男のひみつ」とは?
壮大なアメリカン・ジョーク。いろどりとしてあってもいいコメディだとは思いますが、「真実を語る」という会合の趣旨からすると、もうちょっと……もうちょっとありそうな秘密をプリーズ!(ムリだこれ)



という内容で、それぞれまったく違う四つの語りを楽しませてもらいました。
上でなんだかんだと文句を書いておりますが、この作品集、自分も沙髙棲の片隅に座って楽しんでいるような気分が味わえて、大好きです。まさに現代版百物語。



面白い物語も好きですが、「生きるか死ぬか」くらいの壮絶な打ち明け話にヒヤリとしたいですね。
その3も読めるといいなあ……。





水の中。-22



いえ魚のことでなく。
三月に入って、まだ一度も更新していないことに気づいた自分……
ちょっと忙しいために、ココも書庫も放置ぎみです。すみません。


えーと近いうちにレビュー(浅田次郎せんせいとかー、むげにん新刊とかのー)を更新したいと思います。

それから書庫のほうもやらねば。
と思っているうちに眠ってしまいそうですグー……。 ←ねてる


私は毎朝すんごい乗車率の電車(片足上げると下ろす場所がないくらいの)に乗っているのですがー、ココロがスーパー狭くなっているために、ちょっとぶつかられただけで

「下半身鍛えろや!!」

と瞬時に殺意が芽生えます。イカンです。



ああ、実家に帰って犬と遊んだり、大酒飲んで寝倒れたりしたいなあ。



というグチは置くとして。
こんな無更新ブログにいつも来ていただいて、ホントーにありがとうございます!
最近、あまりに更新レスなので「どこのどちらさまに来ていただいているのでしょうか……?」というのが、かえって気になっていたりするのですが、ここアメブロの解析で分かることも特になく……。
えーと、しいて言うのなら、最近は携帯ユーザーさんにたくさん来ていただいているようですが(改行が多くて読みにくそう……)、何故なのかも分からず。


まあ、どういう層の方に来ていただいているのか分かったところで、ふさわしいおもてなしが出来るわけでもないので、せめて更新頻度を上げていきたいなーと思うしだいです。



でもこれ毎回言っているわ……




水の中。-31



あのー、旦那という人はですね、めったに自分からは連絡を寄こさない人間で。
私自身もそれほど人に構われたいほうではないので、今まで特に気にしてもいなかったのですが。


「よその奥さんはメールとか電話とかたくさんやりとりしてるのに、わたし全然もらってない!!」


と何かのついでにキーッと泣きながら(!)怒ってしまったところ、
携帯電話にメールがくるようになりました。もう三日も続いています。



うーわー、
きもちわるい。



「気持ち悪いって何だよ! だいたい返事こないし!」
深夜に帰宅した旦那がプリプリ文句を言うのです。


そんなことを言われても。


「えー、だって。会社で携帯なんかいちいちチェックするヒマないんだもの……」
「だものって、なら何だったんだあの涙は!!」


そんなことを言われましても……。


何というか、えーと、すみません。
しかし読みそこねたメールを開いてみると、「昼は○○を食べました!」などという、可愛らしくもしょーもない情報が並んでいました。
まあ、こういう他愛もないやりとりこそが家族というものなので、続けたほうがいいのではと思うのですが……しかし。


気づかないフリで相手を責める私のほうこそ、実はかなりマメでない星のもとに生まれた人間だったりする、この事実。


返事……めんどくさい。 ←さいてい




メトロポリタン美術館で開催されたヴァチカン至宝展。
テンプル騎士団の衣装をまとった四人の襲撃者が馬に乗って現れ、全てを破壊して宝物を持ち去った。
その場に居合わせた考古学者テスは、騎士のひとりの呟きを耳にしていたのだった。
「ウェーリタース・ウォース・リベーラビト……」
という、思いつめた呟きを。

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えー、ヴァチカンがらみの物語というと、「ダ・ヴィンチ・コード」を思い出される方もいるかと思われますが、
実際のところ、この「テンプル騎士団の古文書」については、コンセプトが同じ(キリスト教にまつわるナゾを追う、という)であるというだけの、先行作品とはまったく違う謎とテーマを扱った、類似作でもなんでもない! 作品でございます。



それも、あちらほど荒唐無稽な謎解き遊びではなく、かなり現実的な――



えーと、あまりネタバレするのも営業妨害ですので、一言で申し上げるなら
「イエスが聖者でなかったとしたら?」
というお話。


そしてそれだけでなく、
「だとしたら違う未来があったのではないか?」
という可能性に言及しているわけですね。


聖者でなかったら~の部分は、わたくしの日本人感覚で言うのなら、今さら驚くことも暴くほどのことでもないと思うのですが(キリストがただびとで何が悪いんだか、仏教徒な私にはさっぱりわからんちん……)、後者の「違う未来」については「それはスゴイ!」と唸ってしまいます。

この発想はスゴイ。




しかし……しかしですね、
類似作ではないと言いながら、あえて「ダ・ヴィンチ・コード」と比較させていただきますが、


現実的であっと驚く発想!(すごい)
息もつかせぬ冒険アクション!(危険がいっぱい)


という派手な見所があっても、尚ですね、読み物としての面白さは――本作のほうがかなり下回る、と思います。



あっちのほうが、小説として面白い。
何故だ。何故なんだ。
聖杯だのアナグラムだの無茶かましてるあっちのほうが、どうして読んでいて面白いのか。
「テンプル騎士団~」はこのまま映画化したら、ものすごくワクワクするドラマになりそうなのに、何故。



つまりアレだ、「小説として」、面白くないのです。
ここが不思議なところで、「ストーリーがつまらない」というのとは、これが少し違うところなのですよね。筋立てが悪いのではない、キャラクターの造形がまずいというのではない、つまり……


あのう、つまり……言いにくいのですが、つまり

小説家の実力の違い、つまり「こっちの作家さんのが物語るのがヘタである」というだけの話になってしまうのです。



そうすると、「では小説の面白さって何だ」という話になってしまうのですが、
これは実はとても細かなことの積み重ねであって、「ここが上手だから面白いのだ!」と一言で言い切れるような問題ではないのですよね……。
セリフのタイミング、言葉の選び方、出来事の起こる順番、どの位置ににどのような個性を持つキャラクターを配置するのかという選択などなどなど。



そうですね、ただ単に「へたくそ」で終わってしまっては申し訳ないので、本作のいまひとつな部分を挙げるとすれば、


キャラクターに魅力がない(設定はあるのですが、とくに活かされていない。ライリー捜査官は父親のことを克服できたのか? ヒロインのテスも野心以外の個性は語られていないし、犯人ヴァンスも敵対するキャラクターもあくまで物語のための脇役で、彼らなりの人生があるようには読めない、ので登場人物に感情移入してハラハラするということが出来ない)。


テーマの扱いが中途半端(「真実を明かさない」という選択が悪いわけではなく、要はその選択に説得力がないわけです。テスがさー、島の人々の優しくされたからくらいの理由で「やっぱりやめとくわ~」って、えええー、アンタあれだけライリーを裏切っておいて何を言うんじゃ!!)



うーむ。前者はさておき、後者はなー、こういう物議を醸しそうなテーマを選んでおきながら、ただの話題づくりかよ最終的には日和るのかよ!! みたいな気がしてしまうのですよねえ。
「この真実が明るみに出て、世界が変わる」ところまで書かなくては、このセンセーショナルなテーマを扱う意味などないと思うのですが。
そもそも中盤でヴァンスがネタバレしてしまっているわけで、その後の展開で新しい事実が判明するわけでもなく、我々読者は何のためにこの旅に付き合っていたのか……。



おっと、良いところも挙げておかねば!
えーと本筋とは離れたテンプル騎士団のエピソードが一番面白かったです(マルタンのほうが主人公たちより感情移入できる不思議……)。
あと、冒頭のメトロポリタン美術館の襲撃など、絵になる場面がたくさんある物語なので、映像化すると凄くカッコいいだろうなーと思うのです。


これは小説より映画で見たかったなあ……。