昼間は仕事、夜は学校へ通い、母の世話にも忙しいサイちゃんこと才谷駿。
自由になれるのはハンドボールをしている時間だけ――しかし大事な公式戦を前に、母親がまた自殺未遂を起こしてしまうのだった。
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(なんで画像がないのじゃ!!)
ううーむ。
サイちゃんとこは母子家庭というよりは、無理心中の生き残りなわけですが、今回明かされたところによると「無理心中というよりは殺人事件」であったそうで。
サイちゃんママが立ち直れずに自殺を繰り返すのは、夫が子供たち(つまりサイちゃんの幼い弟妹ですね)を手にかける現場に居合わせてしまったから、なのですね……。
悲惨すぎるエピソードなのですが、しかし。
どう考えても全編にわたって引きずりそうなこの問題、意外にも主人公は80ページ目くらいで立ち直ってしまうのですよ。
なんかもうスゴイ。
サイちゃん、いや塀内センセーってスゴイ。
――自分は死を選んでおきながら、俺には強く生きろて言うんか。
弟たちを道連れにしながら自分を置いていったのは、つまりそういうことなのだろう。父親はもういないのだから、最後の愛情だと受け取るしかないじゃないか、と。
こ、これはねえ、普通であれば物語の最後の最後にようやく脱け出して出てくる結論だと思うのです。
フツーだったら、いやフツーフツー言うのはよくないか、私であったなら、かなりの時間を経なければ、父も、そして自分に負担ばかりかける母のことも、赦してなんかやれないと思うのですよね……。
ううーん。これが良いのか悪いのか、本作のタイトルは「明日のない空」ですが、登場人物たちは苦労しながらもみんなとっても良い子たちで、思いやりがあって前向きで、あまり絶望というものを感じさせないのです。
いや、そーゆー子はいいよ。好きですよ。
でも本作のようなお話で、それでいいのだろうか?
後半の「ガッツの姉・瑶子ちゃんがキャバクラデビューする? どうしよう!」のエピソードにしてからも、手に手をとってウフフアハハ逃亡という、わけわかんないくらいの明るい決着がついちゃってますけど、いいのかそれで。
あえて「辛く苦しく恵まれていない青春」という状況を選んでいるわりには、作風のせいかさっぱり暗くも悲惨にもならないこのお話。
これでいいのだろうか……。
ハンドボール話もあまり今後の発展があるようには思われないし、どうするのだろう……。
(たぶん塀内センセーご自身の個性として、いつまでもウジウジグズグズ悩むとか苦しむとかが無いのだろうな……骨太だな……)