「残虐行為記録保管所」チャールズ・ストロス(金子浩訳・早川書房) | 水の中。

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海外小説のレビューと、創作を。

ボブ・ハワードは<ランドリー>の新米エージェント。
英国政府が設立した歴史あるこの組織、
チューリング定理に基づく数学的魔術を駆使してオカルト的国防を行うお役所であるのだが……

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えーとですね、このお話、サイバー・オカルト・スパイスリラーとでも言うのでしょうか。
クトゥールー神話の古きものどもから地球を守れ! というような話なのですが、
主人公ハワードが予算のことで上司にグズグズ苛められたりしながら、命がけで任務をまっとうするという、
オトナのコメディ。



こういうタイプの「数学が魔法に!」というオカルト物は漫画ではけっこう見かけるのですが、
小説でこんなに馴染んだ描写は珍しい……馴染みすぎていて、まあつまり日常的な描写にまで進化しすぎていて、最初は入りにくいほど。
いやー、主人公の理系オタクなうんちく満載で、なおかつアーネンエルベなんて出てくるし、
すんごい面白いです。面白いけど……



長い。



この作者さんのものは「シンギュラリティ・スカイ」「アイアン・サンライズ」と読んできましたが、
この二作は実際にページ数が多いので、「長いなー」と感じるのは無理もないのです。
ところが上下巻分冊であった前二作にくらべたら短い物語であるはずの本作までもやはり
「な、長い……」
と思ってしまったのは、何故なのでしょう。



つーかアレですよ、やはりフツーの作家さんの構成感覚と違うのですよ。
だってフツーはですよ、「こういう物語を書こう」の「こういう」という部分のエピドードに重きを置いて書くわけですよ。
この人はそのへんの感覚がちがう。
本題に入るまでが長く、語りのボリュームも「前置き」と「本題」がまったく同じくらいにぎっちりあって、そしてエピローグはいつも見逃しそうなくらいあっさり終わる。



ものすごく語りの上手い人なので小説として成立していますが、そうでなかったら読めたものではない……という気がします。



つまらないから読むのがかったるい、という「長い」ではなくて
語りたいことが多すぎてヘンな構成になるから長く感じる、のですね。



この物語も「主人公ハワードが現場任務を与えられるまで」の部分はさー、もうちょっとさー、省略してくれたらなあ……などと思うわけです。



なんだかいつもストロスの感想は「長い」だけで終わってしまって申し訳ないのですが、
ホントーに、面白いことは面白いのです。

ひとつの世界をつくる力はものすごくある作家さんなのです。

なのであのー、あともう少しだけ、読み手に優しい構成を希望。



後半に収録されている「コンクリート・ジャングル」くらいの長さが一番いいなあ……。