「既死感」キャスリーン・レイクス(山本やよい訳・角川文庫) | 水の中。

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法人類学者テンペランス・ブレナンはケベック州の法医学研究所に勤める骨の専門家。
手首を切り落とされ、全身を切り刻まれた女性の遺体に、かつて調べた遺体との関連を見出すのだが、担当刑事には取り合ってもらえない。


連続殺人を防ぐために、彼女の孤独な捜査が始まった。



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主人公と同じく法人類学者である作者の、豊富な知識が活かされた作品です。



ですが、これが物語として面白いのかというと、ううううーん……。



カナダのモントリオールという舞台
主人公は離婚して国をはなれたアメリカ人の法人類学者



なかなか個性的な設定だと思うのですが、これが何故いまひとつ面白くない(言っちゃった)かと言えば、
主人公自身の物語が、語られていないからではないかと。
付けたしのようなロマンスもあるにはありますが……

「自分を認めてくれない女性差別主義の刑事と」→「最後に謝罪されて和解する」

くらいが物語の唯一のカタルシスなのですよね。
これはなー、同じ女性である私でさえ、あまり共感できない部分でもあり(仕事相手と上手くいかないのは、べつに性別のせいではないんじゃねえのと……)、ミステリ部分だけで面白く読ませるほどの仕掛けでもなく。



あと少し考えてしまったのが、
同じような枯れた境遇でも、男性より女性のほうがわびしく見える……気がするのです。



タフな女性の孤独な格闘! みたいな説明文がついている本作ですが、そういうかっこよさは感じられず、
主人公テンペの暮らしぶり――仕事漬けで食事は近所のテイクアウト、アルコール中毒だった経験から禁酒、同居人は猫、というのが、余計なお世話ながら、私の目からはすごく侘しく見えてしまうのです。
でも、「これが男性だったらどうだろう」と考えると、少し味わいが違うような気がするのですよねえ……そこがかっこよく見えるのではないかなーという気がするのですよねえ……何故だ。



続編があるそうですが、これ単体で見るかぎりでは、シリーズ物には不可欠であるはずの「主人公の魅力」が感じられないサスペンスですね。