『恐怖の報酬』日記 酩酊混乱紀行 イギリス★アイルランド★日本〈ほぼ縦断〉 恩田陸(講談社文 | 水の中。

水の中。

海外小説のレビューと、創作を。

「ほんとうにアレに乗るの?!」
飛行機嫌いな著者が恐怖をこめて語る、爆笑酩酊ビール紀行。



「恐怖の報酬」日記―酩酊混乱紀行 (講談社文庫 お 83-6)/恩田 陸
¥600
Amazon.co.jp


旅行へ持って行き、まさに飛行機の中で読んだ本作なのですが


……わからん。


わからん、この恐怖が私にはさっぱり分からんのです。
飛行機とは飛ぶもので、飛ばないほうがよほど困るではないですか。



思うのですが、この「飛行機嫌い」とは、やはりこの方が想像力のある作家さんであることと関係があるのではないでしょうか。
正直に申し上げて、この紀行文、語り口もけっこうカタく、内容についてもそれほど読みどころがあるわけではないのですが(こだわりのあるビール党って少数派だと思う……)、端々に語られる「物語作家としての妄想力」が凄いのです。



風景を見ては、ふと物語の一場面を思い浮かべる。
いつか書く物語のワンシーンだ、と思いながら、胸の奥へそっとしまう。



そういったイメージの断片が旅の随所に挟み込まれていて、「うわーすごいなー」と感心しました。
さすが物語書き。
そして子供のころからきちんと名作を読んできたような大変な読書家であるらしく、マザー・グースから司馬遼太郎から田辺聖子まで、連想される作品がものすごく多彩なのですよね。
旅へ持っていく本についてもひととおり悩む記述があり、そのあたりは本読みとしてもなかなか共感できるところです。




肝心の旅の内容についてはアイルランド編がほぼ大半を占めていて、札幌編、沖縄編と収録されているのですが、
とくに国内編はただのビール語りと言ってよく、なんだろう、文壇のカルチャーとして大酒を飲まないと一人前でないという風土でもあるのかないのかよく分かりませんが、私自身が「乗り物に乗る前に必ずアルコールを買う」というタイプの酒飲みではないせいか(だって移動中の乗り物で小狭いトイレに行くのやだー)、
「ふーん」というカンジでした。


この「ふーん」をこまかく解説すると、


「この旅に同行する編集さんてタフだよなー。酒が嫌いじゃやってられないだろうなー」

という、たいへんサラリーマンな感想になってしまうのですが……それはさておき、物語作家「恩田陸」の持つ物語への愛情とイマジネーションの豊かさがよく分かる一冊です。