- くらもち ふさこ
- α (上) (ヤングユーコミックスワイド版)
↓下が文庫版の表紙画像です。
この「α(アルファ)」「+α(プラスアルファ)」は、くらもちふさこ先生の2003年作品。
このたび文庫化したものを読んだのですが、えー、これは漫画in漫画なわけで、正確なところは「劇中劇」ではなく「作中作」なのですが、ついそう呼びたくなるのは、やはり題材が「俳優たち」と「彼らが演じるドラマシリーズ」であるからでしょうか。
4人の役者が演じる、SFあり学園物ありの短編ドラマが6話。
その4人の役者たちのバックステージ・ドラマが6話。
それぞれを一冊にまとめた、非常に珍しい構成なのですが……これ、わたくしの個人的な好みからすれば、やはりこの「ドラマ」と「役者たちのドラマ」は時系列順に交互に並べてもらったほうが、「ひとつづきの作品」としては読みやすいのですよね。
しかしあえてドラマ部分を独立した一冊にしたあたりに、作者さんの自信がうかがえます。
だってですよ。ヘンな話ですが、「作中作」というものは、正直なところ、あまり単体で完成されていなくてもいいのですよね。
好きなアイドルが出ているドラマを見るようなもので「わー、こんなカッコしてる!」「わー、こんなセリフ言っちゃってる!」みたいな楽しみ方が可能なわけで、ちょっとしたアナザー・ワールドをのぞかせてくれればそれでよく、べつに作品としての完成度などはハナから求めていないわけなのです。
……なのになあ、まるで短編集のようなカタチで、先に「ドラマ部分」を読ませておいて、あとから「こういう事情だったのですよー」という、もうひとつの意味づけをするとは、いやースゴイ発想ですね。
実際のところは、この「α(アルファ)」というTVドラマシリーズ――という設定の6つの物語、やや観念的すぎて
「こんなんドラマになるのか?」
などとチラッとよけいなことを考えてしまったのですが。
うーん、ドラマか。
私が視聴者だったら……だったら、ちょっと困るなコレ。
よほど好きな役者さんが出ていないと見ないなコレ。
えー、せっかくですので、この6作をご紹介しますと。
α1話。 (これ一話ごとのタイトルがないのか! あったほうがステキだなあ……)
SFぽいファンタジー。
不思議な生き物と、お姫さまと、ひとの心が読める異星人との物語。
ラブストーリーなのですが、すみません私の脳ではちょっと理解しにくい……ええとつまりコレはハッピー・エンドなのでしょうか?
(わからん)
α2話。
現代物コメディ。
二浪している女子大生の芳乃さん、メカ音痴を克服しようと携帯電話を買いに出かけるのですが――
すみませんコレが一番ダメだ!! 言いたいことは分かるのですが、「こんなこと言う女子大生いねえ!!」とか「携帯がメカかよ!!」とか気になって気になって、ストーリーに集中できません。
それにですよ、私がこの電器屋さん(男)だったら、彼女の部屋に一歩足を踏み入れたとたん
「やべえ!!」
と青ざめると思います。
だって……だって、開けてもいない電化製品の箱が山のよーにあるんですよ。メカ音痴とかもうすでにそーゆー問題じゃないと思うのですよ……。
たとえるのならスティーヴン・キングの「ミザリー」級の恐怖。
よく逃げ出さないで恋におちたりできるものだよ……。
α3話。
現代物ホラー。
伯父の葬儀に田舎へと帰る兄と妹。その家には「川で溺れ死んだイトコ」にまつわる忌まわしい記憶があって――
これは分かりやすいサスペンスで、どんでん返しがあって楽しいですね。
ぞっとするほどこわくて、だけど愛のあるお話。
α4話。
SF(?)ラブストーリー。
旧式な宇宙船のただふたりのクルーである「艦長」と「ポチ」。武器のない船で二人が選んだ攻撃方法は「体当たり」……?
いやー、これは可愛らしいオチのついた小品。
でもこの6作品の中では、これが一番ドラマ性がないかもですね……。
ううーん。これを本当にテレビドラマ化したら、なにをどう頑張っても15分作品にしかならんだろうな……。
α5話。
英国もの。
没落貴族スペンサー家の盲目の奥様に、忠実に仕えつづけるメイドのゾウイ。彼女の唯一の楽しみは、「架空の日記」をつづることなのですが……
この5話だけがテレビドラマではなく「舞台」という設定なのですね。
「善良な正直者が報われる」という、ありがちな展開ではありますが、優しい結末を持ったおとぎ話。
α6話。
現代学園もの。
問題児の香本(男)は、来年から共学になる予定の女子高へ放り込まれる。猫をかぶりながら、女の子たちの人気者となっていく彼だったが、意外なことで正体がバレてしまい――
おお! こういう繊細な空気の物語はお家芸というか、やはり素晴しいですね!
最後の「おはよう」という挨拶ひとつで全てを語るあたりとか、なかなか真似できない感性です。
「+α」という役者さんたちの物語のほうで、役者のひとりが「これは好きなやつと初めて口をきくっていうシーンだろ」と解説しちゃってますが、それがなくとも充分に伝わってくるストーリー。
……と説明してみると、この作中作である6作、上でも言っているとおり、やや観念的ではありますが、バラエティに富んでいて面白いですねえ。
ただ残念ながら、この裏側にある
「役者たちのドラマ」という、もうひとつの物語が、
「役者たちの才能がぶつかりあう演劇ドラマ」
ではなく、
「大物俳優を父にもつお嬢さん女優が演じることに目覚め→失恋するまでの成長記」
という、すげー王道なセンシティブ少女まんがであるので、せっかくの舞台設定がもったいないような……。
せっかく個性的な人物がそろっているのに、「四人が主役」という形のドラマになっていないのが惜しいところ。
いや、私はこのお嬢さん女優である妃子ちゃん(←かわええ!)の失恋とゆーラストはとってもいいと思うのですが、そんな内容だったら、何もこんな凝った構成にしなくても、フツーに読ませてくれればいいんじゃねえの、と思ってしまうのですよね……。
うわー、実験的で面白い構成だな、とは思いますが、感心しておわり、という。
ちょっぴり残念な物語でした。
それにしても、この作中作というもの、読み手に幾重もの魔法をかけてくれる、不思議と心ひかれる手法です。