「皇国の守護者 四巻」伊藤悠(原作・佐藤大輔) | 水の中。

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味方の撤退のために、約束の刻限までの時間を稼ぎきり、ついに降伏した新城直衛
死闘の末、生存者二十名に満たない部下をつれて
俘虜となった彼に、

帝国軍カミンスキィ大佐が投げつける残酷な真実。


「無益な勇戦をしたものだ――貴官の友軍は昨日のうちに撤退を完了している」


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いやー、この巻は直衛魅力がバリバリですね!


人使いは荒いし、なに考えてんだかサッパリ分からないし、腹もいいかげん黒そうだし。

だけど、こんな地獄で誰かについていくとしたら、やっぱり新城直衛がいい。


……と思わされてしまうですよ、うーん。



「カリスマ」と言ってしまえば簡単にすぎるのですが、最悪の状況下でのリーダー・シップ。
これについてはエンデュアランス号の奇跡などを思い出してしまうのですが……
(えーと、映画にもなったかと思いますが、南極で遭難して二年も漂流しながら全員を生還させた英国のシャクルトンとゆー、すごい隊長のお話)



どうしようもない事態となると、人は判断を放棄してしまったりするのですよね。
だって、頑張りつづけるのは大変なのですよ。
疲れたら悲観的にもなるし、集中力だって切れてくるし、諦めたほうが、ずっとラクになれるわけで。
だからこそ、優秀なリーダー、状況をコントロールできる冷静さと諦めない粘り強さを持った人格が上に立つことが必要なのでしょうね。アテにならなくなった個々の人間にかわって、意志を代行する存在があるのなら、その集団は機能するわけです。
この物語で言えば、それは新城直衛なのですが……



地獄のような戦闘のさなかであっても「故郷のようで心休まる」とうそぶいてみたりする、皮肉で複雑な人物として描写されるこの主人公。
作中で猪口曹長が「いい人だよ。信頼に値する」とシンプルに言っているとおり、本質的には「いいひと」なのだろうなあと思います。あのくらーい情熱も、数々の理不尽なできごとに対する「腹立たしさ」から来ているのではないかな、と。


おっと四巻の内容からそれてしまいましたが、
戦闘が終結する緊迫の第四巻。
いいところで終わってしまっていますが、原作では語られなかった兵藤少尉たちの最期についてのこまかいエピソードがありそうですね~。
知りたいような知りたくないような……(か、かなしい)。