時は明治。
岡山の遊郭で、醜い遊女が客の寝物語に語り出す、その身の上話とは――
日本ホラー小説大賞、山本周五郎賞受賞作。

著者: 岩井 志麻子
タイトル: ぼっけえ、きょうてえ
タイトル「ぼっけえ、きょうてえ」とは、岡山地方の言葉で「とても怖い」の意。
岡山弁のやわらかさが、かえって恐怖を盛り上げるという、不思議な効果を与えている本作。
と、とってもコワイのです。
なにがコワイって、
「貧乏ってこんなに恐ろしいのか……!!」
というのが感想。
この遊女の口から語られるのは、決して非現実的な恐怖ではなく、その生まれ育ちの不遇からくる悲惨さなのです。間引きの話や、両親の関係。
貧しさによって、そう生きてくるしかなかった彼女。
そしてラストは、それまでほのめかされていただけの姉の存在が明かされ、一捻り加えた恐怖へと突き落とされます。
ぞっとするラストのはずなのですが、私はそこでやっと
「ああ、ホラーでよかった……」
という、不思議な安堵を感じました。
意外にも若い作者が、どのようにしてこの作品を書くに至ったかは分かりませんが、かなりのリアリティーを持って迫ってくる作品です。
しかし、人間には知らずに済ませてもよい暗闇というものが、あるのではないかと思います。
そういう意味で、オススメとは言えませんが、良作。
「魔羅節」も当時の風俗を味わう興味深さがありますが、こちらのほうがコワイですね。
(評価★★)