「川の深さは」福井晴敏(講談社文庫) | 水の中。

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人生を降りかけていた、元警官・桃山が拾った若い男女は、複数の敵に追われていた。彼らが握っている「アポクリファ」とは、一体何か。再び姿を消した二人を追いかけ、桃山は国家規模の陰謀へと巻き込まれて行く――。


本作は、デビュー前に江戸川乱歩賞の最終候補作に残った作品を加筆訂正したもの。
事実上のデビュー作は「Twelve Y.O.」になるわけですが、デビュー作には作者の全てが詰まっていると言われるように、この「川の深さは」には、その後の福井作品の要素すべてが入っています。

しかし何と言っても、この作者の作品が愛される理由は、登場人物たちの熱さ、情熱と誇りにあるのではないでしょうか。
作中で何度も言及される「あなたの目の前に川が流れています。その深さは?」という問い。
読んでいるこちら側にも、問いかけられているようです。

ラスト近くに「Twelve~」へと繋がるような加筆がありますが、この作品は「Twelve Y.O.」「亡国のイージス」の原型と見るべき作品です。
福井ファンにとっては読む価値のある一冊ですが、最初の一冊として読むのであれば、先に挙げた二作をおすすめします。

(評価★★)

ちなみに私自身の川の深さは「腰まで」でした。バランスがとれた人間て、つまんなそーな……。
来年は、福井作品を原作とした映画がたくさん公開されるようで楽しみです。でもなんとなくトンデモ作品になってしまいそうな、そんな予感……(外れてくれ)。