それから、2年後…。
店は、相変わらず繁盛していました。
オーナーは、新しい試みを導入していました。
飛空艇と同じく完全予約制です。
それは、馬車での食事でした。
馬車でしか食べられない限定の弁当があり、それを馬車の中で食べながら、観光スポットを観光するという試みです。
これがまた、大好評でした。
飛空艇をもう1台造り、2号店を出すプランに代わるものを、オーナーは色々と考えていました。
そして、考えたすえに出したのが、馬車でした。
最初は、3台から始まり、今では5台にまで増やしました。
こちらも、8ヶ月ほどの待ちが出来るくらいまでに、繁盛していました。
もちろん、馬を操る人を雇わなければいけませんが、それを差し引いても大繁盛でした。
そして、お店の5周年記念が近付いてきました。
今回は、オーナーがある人を呼んでいるそうです。
ネイル「今回の記念日は、お店と飛空艇は同時営業にはしていません。それには、特別な思いがありまして、飛空艇にも深く携わっていただいた人です。
それでは、飛空艇の元整備士、ハイドロさんです。」
ハイドロは、オーディエンが亡くなってからすぐに、弟子たちに自分の仕事を任せ、身を引きました。
やはり、オーディエンとだから出来る仕事だと、思っていたからです。
ハイドロ「皆さんとは、初めましてですね。昔、この飛空艇の整備をしていました、ハイドロです。
私は、実はこうやって実際に飛んでいる、この飛空艇に乗るのは初めてです。
オーディエンは……
乗ることはありませんでした。
しかし、私の記憶の中には、オーディエンは健在です。あいつの思いとともに、今日はこうやって挨拶をさせていただき、この飛空艇に乗っています。
今回もご利用いただき、ありがとうございます。」
ネイルは、ハイドロの言葉に思わず、泣きそうになりました。
飛空艇の営業が終わり、店の方に飛空艇の従業員たちは、顔を出しました。もちろん、ハイドロも一緒です。
実は、飛空艇とお店の営業時間をずらしたのは、ハイドロのためだったのです。
オーナーの計らいに、ハイドロは感動しました。
オーナーを始め、従業員一同は、生きている間にハイドロに自分達の料理を、お店などをみてもらいたいと、そう思うようになりました。そして、5周年の記念に呼ぼうということになりました。
ハイドロは、嬉しくて涙を流しました。
そして、一同は沢山の手土産をあげ、感謝を述べました。
それから1年後に、ハイドロは亡くなりました。
89歳でした。
それから、年月が流れ……
オーナー「本日は、10周年記念日にお集まりいただき、誠にありがとうございます。この度、新しくオーナーに就任しました、ネイルと申します。
本日は………」
これからも、画期的なアイディアと、アットホームな感じで店は続くでしょう。
初代オーナーのヤークがそうしたように。
そして、空飛ぶレストランも、ハイドロとオーディエンの思いを乗せて、ヤークの夢を乗せて………。
-完-
この物語はフィクションです。登場人物は架空であり、出来事は実際とは関係ありません。