ぺぺは目をつぶり、耳に意識を集中しました。
微かな動きを、感知していました。
そして、闇に剣を突きだしました。
それは、僅かに手応えを感じました。
クロウド「ちっ!」
舌打ちはしましたが、姿は現しませんでした。
他の2人も、ぺぺに習い、目をつぶり、耳に意識を集中しました。
静寂の中に微かな音を、聞いていました。
サーラが上に向かって、羽根で作り出した剣を投げました。
上からドス黒い血液が、落ちてきました。
そして、クロウドが落ちてきました。
クロウド「き、き、貴様らぁぁぁーーー、もう許さん!」
クロウドは、両手を広げ、両手が羽根に変わり、耳がとがり、頭からは2本のつのが現れました。
足は、鳥のようになり、爪は鋭くとがっていました。
クロウド「ぐあああぁーーーー!」
叫び声をあげると、一行に向けて炎を吐きだしました。
ぺぺ「みんな、走れ!
呪文を唱えてられない。」
何とか、みんな火傷を負うのを免れました。
サーラ「ぺぺ、ゼルベルグ、何とかクロウドを引き付けられないかしら。」
ぺぺ「どうするんだい、サーラ。」
サーラ「何とか気持ちを高めて、もう一度変身できるか、試してみる。」
ぺぺ「分かった。」
ぺぺとゼルベルグは、左右に分かれ、クロウドに向かっていきました。
ぺぺは、呪文を唱え、次々と火の玉をぶつけていきました。
ゼルベルグは、片腕で何とか応戦していました。
サーラは、平和を願い、気持ちを高めていきます。
クロウドを、絶対に倒すという強いきもち。
気持ちをどんどんと高めていきます。
すると、羽根が黄金色に輝き、口は嘴(くちばし)に変わり、爪も鋭くとがり、耳もさらに鋭くなりました。
サーラ「キョキョーーーン!」
サーラは、一吠えすると、真っ赤な炎を吐きだしました。
クロウドも対抗し、炎を吐きだしました。
炎は、双方の真ん中でぶつかりました。
ぺぺも、剣を構え、クロウドに向かっていきました。そして、剣を投げつけていきました。
剣はクロウドの体に突き刺さり、クロウドの体からは煙があがっていました。
クロウド「ぎゃあーーーー!き、き、貴様ぁーーー、こ、こ、これが……、勇士の剣か。
か、か、からだが、熱い。焼けるーーーー。」
ぺぺ「その剣には、アロクを始め、多くの人の思いが込もっているんだ。
人の気持ち、特に平和を願う気持ちは、お前らの野望には負けないのだ。
強く純粋な思いは、叶うのだ。」
クロウド「フフッ、
だけどな、また必ず復活してやるからな……。
………。」
ぺぺ「何度でも倒して、根をあげさせてやるさ。」
ゼルベルグ「終わったか。」
サーラ「キョキョーーーン!」
サーラは、一吠えすると、元の姿に戻りました。
サーラ「さあ、帰りましょう。
その前に、アロクを忘れないでね。」
ぺぺ「ああ、僕の城の近くに埋葬するよ。
2人も、来るかい。」
ゼルベルグ「俺は、俺の居場所を探すよ。」
サーラ「私は……。」
ぺぺ「おいでよ。」
サーラ「でも…。」
ぺぺ「大丈夫。天使とかそんなの関係ない。」
サーラ「ぺぺ…。」
ぺぺ「さあ、帰ろう。
ゼルベルグ、また何処かで会おう。」
ゼルベルグ「ああ、じゃあな。」
ぺぺとサーラは、城に帰りましたが、ちょっとしたことがあったようです。
家来「ぺぺ王子、実は大変なことがございまして…。」
ぺぺ「何か、あったのか。」
家来「申し上げにくいんですが…。」
ぺぺ「申してみろ。」
家来「実は、ここも邪悪なものが襲ってきまして。その時に、母子をかばった王が傷を負いまして…。」
ぺぺ「まさか…。」
家来「残念ながら……。」
ぺぺ「その母子は無事か。」
家来「はい、無事に暮らしております。」
ぺぺ「なら、良かった。
名誉の死を遂げた王に、敬意を表します。」
家来「王子……。」
ぺぺ「大臣を呼んでくれないか。」
家来「はい、ただいま。」
暫くして、大臣がやってきました。
大臣「何でございますか、ぼっちゃま。」
ぺぺ「大臣、このぺぺをこれからも、支えてくれるか。」
大臣「唐突に何をおっしゃいますか。この大臣、何時でもお力になりますぞ。」
ぺぺ「では、たった今から私が王になる。妃は、サーラだ。」
サーラ「ぺぺ…私。」
ぺぺ「サーラ、天使とかそんなことは、関係ない。
純粋に、君が好きなんだ。私と共に、この国を守ってくれないか。」
大臣「是非、そうして下さいませ。」
ぺぺの視線は、サーラを一直線に見つめていた。
サーラ「……はい。」
※この物語はフィクションです。登場人物は架空であり、出来事は実際とは関係ありません。
登場人物
ぺぺ…とある国の王子。幼い頃に村が襲われ、今いる城の王に助けられる。のちに予言書を持ち、勇士の剣を手にし、勇ましきものになる。
アロク…予言書を持つものの1人。幼い頃に家族に捨てられ、ある夫婦に助けられる。ぺぺと同じく、呪文を唱えることができる。クロウドを倒しに行く途中で、ぺぺを助け自らが犠牲になってしまう。
サーラ…見た目はほとんど人間と変わらない姿だったが、満月の夜に勇ましきものになるもの(ぺぺ)と口づけをかわし、月の光を受けて一人前の天使になる。気持ちが高ぶると変身し、羽根は剣や弓矢にすることが出来、涙は傷を癒すことが出来る。
ゼルベルグ…剣術と棒術の使い手。予言書を持つ1人。過去は謎に包まれている。最後の戦いで、左腕を失った。
クロウド…邪悪なものを束ねている長。邪界の王子でもある。人の虚の部分を実体化させ、かげと言われる新たなる仲間を作り出した。ぺぺたちとの戦いでは、姿を闇に隠したり、悪魔のような姿に変身した。
オスモロス・タートル…伝説の生き物。甲羅がところどころ赤く光っており、勇士の剣の門番。ぺぺによって、頭上の岩壁を崩され、頭を強打したが、気絶しただけで数時間後、何事もなかったかのように動き出した。
邪悪なもの…悪魔のようなものから、限りなく動物に近いようなものまで、様々な姿がある。基本的に声を発し、中には呪文を唱えるものまでいる。
かげ…人間の持っている“汚れ”などが、実体化したもの。下等から上等なものまでおり、上等クラスになると、人間と見分けがつかない。上等クラスになると、人間から“汚れ”などを引っ張り出し、実体化させ仲間を増やすことが出来る。また、かげが死ぬと、そのかげを引き出された人間も死んでしまう。