ぺぺは、次の階に向かいながら、ふと予言書を取り出し目を通した。
「邪悪なるものに襲われるとき、大切なものを失うだろう。」
こう、記してあった。
後ろを振り向くと、アロクやゼルベルグも、予言書に目を通していた。
しかし、誰も何も発することなく、次の階にたどり着いた。
ゼルベルグ「何だ?」
石のテーブルがフロアの中央にあり、そこには女性が横になるように、座っていた。
胸元はかなり広く開いた服を着ており、こぼれそうなほどの胸の谷間が見えていた。
スカートは、かなり短く今にも見えそうなほどだった。
そして、女性は手招きをした。
ゼルベルグは、手招きに導かれるように、女性に近づいていった。
ぺぺ「ゼルベルグ、これは、罠だ!」
しかし、ゼルベルグの耳にはぺぺの声は届いていません。
ぺぺ「完全に誘惑されてる。」
そう思うと、体ごとゼルベルグにぶつけていった。
ゼルベルグ「イテテテ。
ぺぺ?なぜ俺をぶちかました?」
ぺぺ「ゼルベルグ、駄目だよ。あいつの手招きを見ると、誘惑されるから。」
ゼルベルグ「………俺は、誘惑されたのか。」
女性「あ~ら、残念。もう少しだったのにね。
そこの、くそ坊やが邪魔しなければね!」
女性は、邪悪なものでした。女性の目が赤く光ると、ぺぺ目がけて光線のようなものを発射しました。
アロク「バカヤロー、ボーッとしてんな!」
今度は、アロクがぺぺに体当たりしました。
アロク「ぐあああ~っ!」
ぺぺは、その瞬間がスローモーションのようにみえました。
光線は、アロクの体を突き通りました。
あっというまに、体からは鮮血が吹き出し、口からも大量に吹き出しました。
運悪く、心臓を貫いていました。
アロク「………ガボガボッ。」
言葉になってませんでした。
アロクは、懐から予言書を取り出し、指を指しました。
ぺぺ「駄目だ、見るなんて。まだ、終わっちゃいない。掟を……サーラの涙で傷を閉じたらさ……
まだ、戦いは終わってないんだ!アロク……
駄目だ!目を閉じちゃ
……だ、だ………
ううっ
だめだ……ってば……
アロクーーーーーー!
嫌だーーーーーー!
ああぁーーーーー。」
しかし、目の前にはまだ敵はいます。ぺぺは、涙ながらに剣を抜きました。
眼孔鋭く、邪悪なものを見ました。
そして、アロクとの旅を思い出し、その思いを剣に込めていきました。
今までにないくらい眩く光ると、その光がそのフロア全体に広がろうとしていました。
ゼルベルグ「サーラ、目を閉じるんだ。目をやられてしまうぞ。」
ぺぺ「おおおおおーーーーー!」
光は、フロア全体に広がりました。邪悪なものは両目を抑えて、のたうちまわっていました。
邪悪なもの「き、きさまぁーーーーーー!」
邪悪なものの背中が開き、中から何かが出てきました。それは、巨大な蛇のようなものでした。
邪悪なものは、口を大きく開くと、牙から液体を発射しました。
ぺぺは、素早くかわすと、さっきぺぺが立っていた床から湯気が立ち、床が溶けていました。
邪悪なものは、次から次へと発射していきました。
ぺぺは、巧みにかわしていきますが、少し疲れが見え始めました。
邪悪なもの「ハハハ、ほら逃げないと、溶けちゃうぞ。
じゃあ、そろそろ終わりにしようか。」
邪悪なものはそういうと、額に当たる部分にも目があり、大きく開きました。そして、3つの目を大きく開くと、目が赤く輝きだしました。
ぺぺは、剣を構えながら、呪文を唱え始めました。
ぺぺ「光の力を司るものよ。我の剣にその力を込めたまえ。」
すると、剣が今までにないくらい光り出しました。
ゼルベルグ「サーラ、また目を閉じろ。」
邪悪なものが3つの目から光線を出し、その光線は途中で1つにまとまり、ぺぺに向かっていきました。
ぺぺも剣を一振りし、光を放ちました。
邪悪なものの光線と、ぺぺの放った光が“間合い”の真ん中でぶつかりあいました。
邪悪なもの「負けるかぁ!」
力を込めて、少し押しました。
しかし、ぺぺも負けじと、剣に思いを気持ちを込めていきます。
両者は依然、互角です。
しかし、ここでサーラが、薄目を開けながらぺぺに近づき、ぺぺの背中に手を当てました。
サーラはこころの中で、
「私の思いも剣に届いて。」
そう願いました。
すると、少しずつぺぺの光の方が押し始めました。
邪悪なもの「押し始めただと?こしゃくな!」
さらに、邪悪なものは、力を込めました。
しかし、それでもぺぺの方が押していました。
気付けば、ゼルベルグもぺぺの左の手の甲に、自分の手を沿えていました。
みんなの思いは、1つでした。アロクの思い、アロクの命を奪った、目の前の敵を倒すという思い、それが剣に伝わっていきます。剣は、3人の思いをのせることで、この世でみたこともないくらいの輝きを放っていました。
邪悪なもの「ムムム、これまでか。」
そういうと、一気に剣の放つ光が光線を押し返しました。
邪悪なもの「うおおおぉーーー。」
次の瞬間、邪悪なものは一瞬のうちに黒焦げになっていました。
ぺぺは、その場に倒れこみ、サーラやゼルベルグもかなり息を切らしていました。
サーラ「……ハァハァ、
ぺぺ……ぺぺ……
だいじょうぶ?」
ぺぺ「………………う……………うぅ……………なん……とか……。」
ゼルベルグ「……………うっ…………つつっ……。
こんかいは………
何から何まで
つらいぜ………。」
3人は、改めて動かないアロクを見て、声を上げて泣きました。
邪悪なものがいようと、この時ばかりはそんなことすら忘れて、ひたすら泣きました。
※この物語はフィクションです。登場人物は架空であり、出来事は実際とは関係ありません。