「こんなもの…、こんなものがあるから、いけないんだ…。」
虚ろな目で、ぺぺは予言書と勇士の剣を、力なく落とすように捨てました。そして、ふらふらと歩いていきました。
一方では、一行はぺぺを必死で捜していました。
サーラ「ぺぺー、ぺぺー、どこなの~。」
アロク「ぺぺー、いたら返事しろー。」
ゼルベルグ「どこだー、ぺぺー。」
辺りに見渡しながら、少しずつ歩を進めました。岩や木の陰、木の上にも、注意しながら捜していました。
ゼルベルグ「あ、あれは…。」
ゼルベルグは、何かを見つけました。
アロク「こ、これは、ぺぺの予言書と勇士の剣じゃないか。
何者かに、襲われたのか。」
ゼルベルグ「いや、争った形跡がない。おそらく、捨てたんだろう。」
サーラ「えぇ、ではどこに。」
ゼルベルグ「分からない、いつぐらいにここを通ったのか、どこへ行ったかも。
とにかく、捜そう。」
さらにさらに、捜していきました。気付いたら、もう日はかなり傾いていました。
ゼルベルグ「まずいな、もうすぐしたら日が暮れる。早く、見つけないと。」
その時でした。
サーラ「みんな、あそこの岩陰を見て。」
そこには、虚ろな目で空を見ている、ぺぺがいました。
ゼルベルグ「ぺぺ、ぺぺ!おい、しっかりしろ!」
ぺぺ「あぁ…、みんな…。僕に何か用。
僕はもう、戦うのを止めたんだ…。」
ゼルベルグ「何言ってんだ、お前は選ばれしものなんだぞ。
しっかりしろ!」
「パァーーン!」
ゼルベルグは、ぺぺの頬をおもいっきり、はたきました。
ぺぺ「無駄だよ…、そんなことしたって…。」
完全にうわのそらでした。
アロク「お前、どうしちまったんだよ。今まで、あんなに必死に戦ったのに。かげをやっつけて人が死んだのは、誰だってショックなんだ。お前だけじゃない。」
すると、急にぺぺが怒りを露にしました。
ぺぺ「お前らに、何が分かるってんだ!勝手なことばかり、言いやがって!」
ゼルベルグ「ぺぺ、お前…。」
ぺぺ「…………、教えてあげるよ、僕の過去を。」
サーラ「え?」
ぺぺ「僕は……、僕は、王の息子じゃないんだ。僕は、僕がいた城の正当な継承者では、ないんだ。」
アロク「どういうことだ?」
ぺぺ「もう、今から12年も前のことなんだ。僕は、ある村に産まれたんだ。
でも、僕が4歳の時だった。今はもう、滅んだと言われている城のものたちが、僕の村に襲ってきたんだ。」
サーラ「ひどい…。」
ぺぺ「理由は、その城の管轄に入らなかったからで。
それだけの理由で、村は襲われたんだ。そこの城は、領地を次々と支配し、国を大きくするのが目的だった。
自分達の欲のために、僕たちの村は壊滅したんだ!
しかし、運よく、僕と他の3人は生き残ったんだ。その時に、僕と3人が拾われた城の王、今のぼくの義父が無茶をしていた国を、周りの国と同盟を結んで滅ぼしたんだ。」
アロク「そんなことが。」
ゼルベルグ「だからか、燃えていた人たちを見て、逃げ出したのか。」
ぺぺ「あなたたちには分からないだろうけど、僕は平気でかげを……。」
ゼルベルグ「バカヤロー!
平気なもんか。かげを倒したら、人も死ぬなんて、平気なやつがいるか!」
ぺぺ「じゃあ、何であのとき、かげを倒したんだ!必死で逃げて振り切ったら……。」
ゼルベルグ「あの状況で、それが出来たか。
結局、あのときはああするしかなかったんだ。」
ぺぺ「だけど、僕は……。
ごめん、1人にしてほしいんだ。」
3人は、ぺぺが何らかの反応をするまで、待つことにしました。
※この物語はフィクションです。登場人物は架空であり、出来事は実際とは関係ありません。