エンジンをかけると思い切りアクセルを踏み込んだ。
爆音が深夜の街に響く。
「うるせえ!」そんな声も全く聞こえなかった。
風が体の中を吹き抜けて行く。
良い事も悪い事も全部、消えてしまえばいい。
あいつの記憶も。
ヘッドライトに照らされた向こうに
両手を広げた男はバイクを避けようともしなかった。
10/20 「風と走る」
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆
西口を出て激流のような人の流れを進んだ。
東口のお気に入りの店に向かっていた時。
「お姉ちゃん!!」
背中に何か温かいものが飛びついてきた。
振り返ると完全に脱色した金色の髪。
栗色の目。微かな薔薇の匂い。
「あ・・・」
ごめんなさいとその唇が開き
一瞬にして彼女は人の波の中に消えていった
10/22 「前触れ」
★*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*☆
深夜、ドスンと何かが落ちる音がした。
目をこすりながら10階の窓から下を見ると地面に伏した影が見える。
遠くから救急車の音が近づいてくる。
私は眠気を抑えきれずまたベットに入った。
12階には背の高いモデルのような細身の女がいたが
その日以来見ていなかった。
だがニュースには何も出なかった。
「何かありませんでしたか?」
ゴミを出す時マンションの清掃のおじさんに尋ねた。
「いいえ」
だが人の影があった辺りには何か血のような跡が見える。
「犬がね、落ちたみたいです」
おじさんはそこを見つめる私に顔を向けずに言った。
でもここはペット不可のはずなのに。
「守らない人がね。多いんです」
10/23
「あの、すいません」
買い物から帰った私は呼び止められた。
まるでリクルートスーツみたいに上下黒。
黒縁のメガネと黒髪のショートヘアの女性だ。
「はい?何ですか?」
セールスって感じでもなかった。
「聞きたい事があります。12階に住んでた人の事なんです」
ふと見ると隅に花束が置いてあった。
10/24
「この人なんです」
そう言ってスマホを差し出した。
そこにはあの綺麗な人と目の前の女性が写っていた。
住んでいた?さっきこの人はそう言った。
「引っ越したんですか?」
私は写真を見ながら聞いた。
「メールが来たんです。昨日突然。引っ越したって」
二人でポストを見に行くと名前の無い場所があった。
10/26
「共犯」