病院に到着したのは、午後4時過ぎ。
父の病室は病院の5階、角部屋の窓側でした。
高台にあるため、なんと窓からは実家の姿もよく見える位置。
単なる偶然だと分かっているけど、重病の父のために病院側が気を利かせて、わざわざこの位置のベッドにしれくれたのかな・・・などと考えてしまったり。
父にはまだ抗がん剤の投与が始まっていなかったので、見た目的には至って元気な様子。
私が到着するまで母もいましたが、「 ここでバトンタッチね。後でまた来るから。 」と言って、一旦は自宅に戻っていきました。
病室は、6人用の大部屋。
それぞれ病気の程度は分からないものの、小耳に挟んだところ、がん患者ばかりの様子でした。
けど、皆さほど悪い状態には見えず、術後の方もいらっしゃったので、きっと父ほど悪い患者さんはいないのだろうと感じたり・・・
父によれば、互いの病状を気にしてか、患者同士での会話はないとのこと。
父は電話口では気丈なことを言っていたものの、さすがに精神的に堪えている様で、「 晴天の霹靂だよ 」と何度も口にする。
その一方で、「 それより、お前のことが心配で心配で・・・ 」と、自分のことよりも私と夫との仲を心配するので、
「 今まで恥ずかしくてお父さんには言えなかったけど、 実はすごく仲が良いんだよ!夫は私のことが大好きなの、お父さんだって感じているでしょ。 」
と明るい表情で返答。
私はいままで両親の前で夫婦関係をノロケるのが恥ずかしくて(夫も同じ)、両親を含む他人の前ではいつもよそよそしい態度で過ごしていました。
その上、私が夫への愚痴をよくこぼしていたし、結婚して2年近く経つのにまだ子供がいないこともあって、両親が私たち夫婦の心配をするのも仕方がないよね。。。
・・・寧ろ、わがままな私は、両親に自分のことを心配してもらいたかったし・・・
けど、父の病が分かった今、そんなひねくれたことをしている場合じゃないのです。
父には余計な心配させまいと思い、今さらながら夫との仲の良さを細かいエピソードを交えて力説してしまいました。
すると、単純な父の顔がパッと明るくなって、
「 そうだったのかー!なんだ、安心したよ。ああ、良かった!! 」
と満面の笑顔がこぼれたので、ひと安心。
なんで今まで、こういう風に素直になれなかったんだろう・・・。
父はこんなにも素直な人間なのに、なんで私はそういう父のいいところを似なかったんだろう・・・。
今更悩んでも前には立たない後悔ばっかり。
その後、父が入院までの経緯や診断内容を詳しく教えてくれました。
食事はまだ何でも食べれるし、食欲もあるとのこと。
ただ、すでに転移もあるせいか、背中が既に痛む(張る)みたいです。
それでも一見して病人には到底思えないのですが、整形外科医で脊椎・脊髄専門の夫が、
「 背骨などに転移して神経を圧迫した場合、場所によっては麻痺が生じることになるよ。 」
と言っていた言葉が頭をよぎる。
今は元気に歩く父も、いずれ車椅子姿になってしまうのかなと思うと、思わず零れ落ちそうになる涙をこらえるのが大変でした。
でも、父の前で涙は見せず、堪え切りました。