改名したい女人たち〜キャラクター座談会 | 前世はきっと平安貴族

前世はきっと平安貴族

歴史大好き!とりわけ平安時代をこよなく愛する私です。
こんなに惹かれる理由はきっと前世で生きていたからにちがいない。
源氏物語ネタをメインに、色々思っている事を書いてゆきます。あらすじとか一切書かずに自分の思いだけを強引に綴ってゆきますので悪しからず〜。

今回登場する女人たち

 

  • 軒端の荻
  • 夕顔
  • 花散里
  • 雲居の雁
  • 真木柱
  • 浮舟
  • 落葉の宮
  • 末摘花

 

計8名。文中ではそれぞれの頭文字で

表すことにする。

 

 

【軒】

「ま~ったくやってらんないわよねッ!

一体何だって千年もこんな名前で

呼ばれ続けなければならないのよ?

 

”軒端の荻”だなんて全然ロマンチック

じゃないわ!」

 

 

【花】

「仕方ないわよ。

だって本名を明かしたら魂を

乗っ取られてしまうかもしれない

時代だったんですもの。

 

物語の中とはいえ、本名を書くのは

ご法度だったのよ。

だから後世の読者たちが便宜的に

”呼び名”をつけたのが私たち、

というわけ」

 

 

【雲】

「いつもながら花散里さまは鷹揚で

物分かりがよろしいこと。

源氏の君にとって都合の良い女に

なるのも道理ですわね。

 

でもお名前の中に”散る”という文字が

入っていることにご不満は無いの?」

 

 

【花】

「そ、そりゃあ正直に言うと

嫌ですわ。

どうせなら”花咲く里”とか、そういう

名前だったら、と何度思ったことか」

 

 

【真】

「”花”が入っているだけでも

いいじゃないの!

私なんて、柱にただ寄りかかっていた

だけで”真木柱”なんていうとんでもない

名前をつけられちゃったんだから」

 

 

【浮】

「わ、私もそんな感じです。

あの時、匂宮と一緒に小舟にさえ乗らな

ければこんな名前にはならなかったかと

思うと・・・。

 

”浮舟”だなんて、いかにも

薄幸そうであんまりですわ」

 

 

【軒】

「その点、夕顔さんはいいわよね。

ちゃんと花の名前だし。

あ~あ、私も花の名前だったら

源氏の君にもっと愛されたのに。

彼ったらあれっきり全然来ないのよッ」

 

 

【夕】

「とんでもございません。

何故私の庭に夕顔が咲いていたかと

いうと、それは食用として実を取る

ためだったんです。

貧しい生活ゆえ、なりふり構わず

だったんですよ。

 

同じような花でも、観賞用に愛でられる

朝顔とでは、優雅さに天地ほどの

差がございます。

ああ、朝顔の君さまが羨ましい」

 

 

【雲】

「私は大臣家の娘という高貴な身分

だというのに、付けられた名前が

”雲居の雁”だなんて納得がいかないわ。

 

たしかに自分の事を「雁の群れから

一羽だけはぐれちゃった子みたい」

とうっかり表現した事もあったけど、

まさかそれが名前になるなんて」

 

 

【落】

「みなさま、それぞれ言い分も

ありましょうけれど、このわたくしの

名前に比べればずっとマシだと

思いますわ・・・」

 

 

【一同】

「あっ!あなたは”落葉の宮”さま!」

 

 

【落】

「そう。私は”落葉の宮”・・・。

これでも皇族のはしくれだというのに

”落葉”・・・」

 

 

【雲】

「その無念さ、お察し致します。

我がきょうだいである柏木が、

勝手に女三宮様とあなた様を比べて

”落葉のような宮”などと酷い言い方を

したのでしたね。

彼の無礼を心からお詫び申し上げます」

 

 

【落】

「こんな名前、どう転がったって

救われっこないわ…。

千年以上もこの名前で

呼ばれてきたけど、もうこれ以上

耐えられそうもないわ」

 

 

【軒】

「”紫の上”とか”葵の上”なんて最高に

羨ましいわよね~。

”朧月夜”も幻想的な感じで素敵だし、

”玉蔓”も美しさを形容する名前だし、

まったく不公平だわ」

 

 

【真】

「そうだわ!いっそのことみんなで

改名しちゃわない?

 

そうね~、私は蛍兵部卿の宮の妻に

なったから”蛍の御方”なんて」

 

 

【雲】

「あらいいわね。じゃあ私は

思いっきりイメージを変えて

”アントワネット・ローズ”に

しようかしら」

 

 

【夕】

「それなら私は"トワイライト・

レディー"なんちゃって」

 

 

【花】

「わ…私はやっぱり”花咲く里”で

いいです」

 

 

【浮】

「みなさま素敵な名前ですね。

私も、もし叶えていただけるのでしたら

”宇治の夢姫”なんて言われてみたいです」

 

 

【落】

「わたくしは”若葉の宮”って

呼ばれたいわ。落葉と違って

瑞々しくキラキラした感じでしょ?」

 

 

【一同】

「キャ~~♪若葉の宮さま~~キラキラ

 

 

 

 

 

【末】

「あのぅ・・・

わたくしはこのままでよろしいわ。

だってこの名前、とっても気に入って

いるんですもの」

 

 

【軒】

「はっ!その声は末摘花さま!」

 

【真】

「え?え?一体いつから

いらっしゃいましたの?」

 

 

【末】

「最初からずっとここにいましたわ」

 

 

【雲】

「んまぁ~何という影の薄さ、いえ、

奥ゆかしさでございますことあせる

 

ところで末摘花さまはどうして

改名なさらないの?」

 

 

【末】

「みなさまには申し訳ないけれど、

わたくしの名前にはちゃんと”花”が

入っておりますし、何より源氏の君が

この名前がわたくしにはぴったり

だとお思いになっていらっしゃる

ようなのよね。

 

そんな源氏の君の愛が感じられて

わたくしもすっかり気に入って

おりますのよ。

 

何だかわたくし1人が勝ち組の

ようでごめんなさいね~ほほ」

 

 

 

【一同のひそひそ話】

「あきれたわ。”末摘花”の意味を

ご存知ないのね?」

 

「赤い鼻を紅い花にかけて、

ものすご~く馬鹿にした名前だと

いうのに」

 

「何だかお気の毒過ぎて困って

しまうわ」

 

「この方に比べたら私たちの名前

なんて全然マシなほうよね?」

 

「そうよ!”末摘花”こそ最悪の

名前よ」

 

「何だか改名なんて、もうどうでも

良くなってきちゃったわ」

 

「そうよね~。じゃあ福ふく屋の

わらび餅でも食べて帰りましょうか」

 

「賛成!行きましょ行きましょ」

 

 

「ごきげんよう、末摘花さま~」バイバイ

 

 

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かくして、1人満足気な末摘花を

残し、女人たちは晴れ晴れとした顔で

帰路についたのであった。