2026年3月18日(水)
東九州ドライブ旅行 鹿児島ラストステージ編
今年は、10年に一度とも言われるほど雨の少ない冬から春先。
それにしても、8泊9日のこの旅。ここまで天気に恵まれすぎていた。
出発前の予報では、19日から崩れるはずだった空模様。
どうやら少しだけ、そのタイミングが前倒しされたようだ。
それならば――と予定を切り替える。
向かったのは、
「いおワールドかごしま水族館」
ジンベイザメがいる水族館だ。
20日(祝日)大阪に戻ったら、海遊館に行こうと思っていたが、どうせ猛烈な混雑は避けられない。
それならば、この旅の途中で、ゆったりと見ればいい。
しかもここは、ありがたいことに障がい者割引で無料。
迷う理由は、どこにもなかった。
朝はホテルの無料バイキング。
サラダに、肉団子、玉

子焼き、ソーセージ、シャケ。
そこにやけに目立つオクラの料理。
調べてみれば、鹿児島はオクラの生産日本一らしい。
そんな土地の恵みを感じながら、ついつい食べ過ぎる。
まあ、旅先の朝はこれくらいでいい。
いい加減にしとけよと心の声は叫んでいたけどね(笑)
鹿児島市内へ向かう道中、雨は静かに降り続く。視界の先にあるはずの桜島は、白い膜に覆われ、その姿を見せてはくれない。
それでも予定通り水族館へ到着。館内に入ると、まずはイルカショーの時間確認――
のはずが「イルカ体調不良」の案内看板。
まあ、そんな日もある。
気持ちを切り替えて、主役のもとへ。
大水槽を悠然と泳ぐジンベイザメ。
その圧倒的な存在感と、ゆったりとした動き。
ここでは大水槽のサイズに合わせ、成長しすぎると海へ帰され、また新たな個体へと受け継がれていくらしい。
命が巡っていく場所。
それはどこか、この旅のテーマとも重なるように感じた。
館内を進めば、
イシガキフグの愛嬌ある姿、
にょろにょろと顔を出すチンアナゴ、
鮮やかな青が印象的な映画でもおなじみ「ドリー(ナンヨウハギ)」。
そして巨大なタマカイとメガネモチウオ。
幼稚園の子どもたちが歓声を上げる中、その視線の先にいたのは――魚の“おじさん”。
おーじさん!おーじさん!とはしゃぐ子どもたち。
無邪気な反応に、思わず笑ってしまう。
やがて大水槽前が賑わい始める。
ジンベイザメの食事の時間だ。
集まってきた子どもたちは、
まるで群れをなす魚のよう。
色とりどりの園服が揺れる光景は、まるでジブリの世界のワンシーンのようでもあった。
大きく口を開け、オキアミを吸い込むジンベイザメ。
あの巨大な体が、こんなにも小さな命で支えられている。
その事実が、妙に印象に残った。
展望フロアに出る。
対岸にあるはずの桜島は――やはり見えない。
思えば前回も、台風直撃の後で、ようやく渡った桜島。
結局、噴煙を見ることはできなかった。
どうやら縁が薄いらしい。
それでも、見えない山の輪郭を想像しながら飲むコーヒーは、
マグマのように熱かった。
ぬるめの設定ボタンがあるわけだ。
ふと気づけば、イルカショーの開催アナウンス。あれ、中止案内看板は昨日のことだったらしい。
地方施設のあるあるだろう。
慌ててイルカプールへ向かう。
都会的な演出や派手さはない。
でも、その分イルカ本来の姿をじっくり見せてくれる。
どこか“やらされている”感じがない。むしろ、楽しんでいるように見える。
その中で、自由に動き回る赤ちゃんイルカがいた。
大人たちの演技を真似て、気まぐれにポーズをとっている。
その姿は、さっきの園児たちと重なる。
最後は全員での連続ジャンプ。
その時は赤ちゃんイルカの小さな体も、しっかりと宙を舞った。
自分の中で、このイルカショーは間違いなくトップクラスだ。
気づけば、午前中いっぱいを水族館で過ごしていた。
でもそれは、予定変更がもたらした“正解”だ。
水族館を後にし、
隣接の桜島フェリー乗り場へ向かう。
車で乗り込む前にフェリーターミナルのレトロなお店で名物の黒豚ラーメン。
温泉たまご付きという、いかにも旅らしい一杯で腹を満たす。
乗り場に着き、乗船を待つ。
空は薄日が差しているものの、
桜島は相変わらず白い膜の向こう。
桜島へはフェリーで約15分程。
客室よりデッキで過ごしたほうが気持ちよさそうだ。
ふと、フェリーの風に当たりながら奥様が一言。
「ねえ、今日のホテルの冷蔵庫に入れてた飲み物、出した?」
――ドキッとする。
実は自分も、ほんの少し前に同じことを思い出していたのだ。
昨夜、寝る前に飲もうと思って冷蔵庫に入れてあったビール。
天ぷらでお腹いっぱいになってしまい、そのままにしてしまったあの一本。
「まあいいか」と心の中で処理していたところだった。
それを、今このタイミングで突いてくるとは。
相変わらず鋭い。
もはや特殊能力の域である。
桜島フェリーターミナルに到着。そこでも、桜島は姿を見せない。
さて、どこへ行こうか。
ターミナルを出た瞬間、目の前に看板が現れた。
「恐竜公園」
――行くしかない。
しかし、上り坂途中の壁に書かれた「恐竜はいない」の落書きが、すべてを物語っていた。
誰もいない、広い公園に点在する、どこか痛々しい恐竜の石像たち。
「――なんで恐竜公園にした?」
そんな疑問を残しつつ、広々とした遊歩道を一周して、静かにその場を後にする。
結局桜島は姿を見せず、今日の目的地の鹿屋市へ。
訪れたのは、
自衛隊基地に隣接した、鹿屋航空基地史料館。
屋外に並ぶ歴戦の機体は、風雨にさらされながらも静かに佇んでいる。
かつて空を駆けた存在たち。
そして館内には、本物の零戦。
胸が高鳴る一方で、
神風特攻隊の資料が突きつける現実。国のために命を落とした若者たち。その重さは、今の平和な日常と強く対比される。
同じ空間にいたアメリカ兵の一団。若い彼らは何を思ったのだろう。
簡単に答えは出ない。
ただ、この事実は忘れてはいけないのだと思う。
宿へ到着。町で一番大きな大平温泉。その大浴場で体を温める。
そして夕食。
お刺身、鶏の照り焼き、天ぷら、骨付き豚。
ご飯と味噌汁の、素朴な定食。
豪華ではない。
でも、この旅も7拍目。この位がちょうどいい。
一日をゆっくりと振り返りながら、箸を進める。
外は雨。
少し肌寒い夜。
それでも明日は晴れ予報。
それも、少し暑くなるらしい。
街には、すでに咲き始めた桜。
季節は、確実に進んでいる。
この旅も、終わりが近い。
少しの寂しさと、
それ以上の満足感。
そして――
この旅が終われば、再起動。
衣替えとともに、気持ちも切り替えていく。
準備は、もう整いつつある。
静かな夜の中で、そう感じながら目を閉じた。