主人公はワルいやつだ、という認識しかありませんでしたが。
や、基本ワルいんですけれど、
大変人間味溢れる、魅力溢れる主人公でした。
人外菊さんがお似合いになる(個人の感想です)し好きだし、と書いておりますが、
こんな、俗のカタマリ、ザ・人間もとても愉しい。
終盤での大家さん(彌十郎丈)と、
モメてキレて、
罵り合い、怒鳴り合い、
ヒートアップし見合って見合って、
最後ちゅう❤️する(←ダチョウ)のかと思った。
あのリズム感、グルーヴ、テンション、最高。
◇
場面の転換も多いので、
世話物の醍醐味、お江戸の生活風俗あれこれをめぐる所作やらファッションやらのチェック事項も都度盛り込んであり、
毎場面が観どころ。
そういえば、祖母は美容室のこと「かみいさん」と言っていた。
幼少時から美容室のこと、と何となく理解していたし、特に何もツッコむこともありませんでしたが、
今になって語源、所以を知りました。
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菊さんの新三役は三度目とのこと。
嘗ては、初役をおつとめの際は可能な限り観劇していたものですが。
初演は観られませんでしたが、漸く新三観劇が出来ることに感謝。
菊さんはご結婚されてから一層芸幅が広がり、
挑戦されるお役も一気に多彩になられた(個人の感想です)。
が、その頃、私自身生活基盤が変わり、歌舞伎に拘らず観劇から離れてしまい、
菊さんの1番おもしろい時代を体験できなかったことが悔やまれていたので。
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前回2023年公演時の勝奴役は菊次丈だったそうで、今回も続投。
私にとっては、音一朗丈、のときの方が馴染みがありますが。
今や劇団の筆頭立師。
歌舞伎を観始め、少しずつ色々わかるようになってきた二十代はじめ頃の感想として、
主に菊五郎劇団、澤瀉屋さん一門(二十一世紀歌舞伎組。中日劇場(わたし生まれ育ち名古屋)にて毎年確実に公演があったので。)を観劇しておりますと特に、
お弟子さん方、名題、名題下さん方々による立回り、アクション、アクロバット(?)のご活躍が多く、
でも割とさらっとしか紹介もされず、
早変わり等の吹替などおつとめになっても、その場合パンフレットに絶対お名前が載らない(←コレにはちゃんと理由、意図があるのでしょうけれど。分かっているけど、やっぱりなんだかさびしい)。
無論、メインキャストの役者さん方々あってこそなのですが、
個人的には特に役名のないお役、群舞や大勢の立回り、後見などで活躍していらっしゃる役者さん方々⋯
何なら役者さんに留まらずお衣裳や演奏、小道具、照明などの造り手さん方々のスピリットに至るまで、
舞台観劇では可能な限り隅々まで楽しみたい質なので、
メイン以外にももっとスポットを当ててほしい!と思っていて。
そんな中、
菊さんは、お弟子さん筋も適材適所でどんどん抜擢なさっていて、好き。
お弟子さん方々をお誕生日に姫抱っこしたり、
「遊び仲間でもあります(笑)」と仰る彦さま、好き。
私が記憶している限り、
ナウシカでの庭の主に始まり、ユウナレスカ様、急遽の代役でしたが先代萩の八汐(通常は立役の役者さんがお勤めになる)にキャスティングの芝のぶ嬢、違、芝のぶ丈はその最たる適材適所だった!
贔屓目120%は重々承知しておりますが、
八代目はプロデューサーとしても冴えていると思う。
◆
お熊(米吉丈)にはモデルとなった実在した人物がいるそうで、
それが、え、モデル…?と信じ難い、首飾り事件のド・ラモット夫人を彷彿させるような悪女だそうで、
それはそれで実話、実録側も調べてみたくなったり。
その後、そのお熊と忠七(萬太郎丈)がどうなったとか、
大家さん、人助けに来たのに(なかなかセコかったが)災難に遭ってかわいそう(涙)とか気がかりが残りつつも、
新三と対を成す様な正義のカタマリ・源七親分(錦之助丈)のオトナ対応したのにやっぱり逆襲に来る熱血振りがカッコ良く、
いい感じに口上で結んでしまう歌舞伎の清々しさに丸め込まれた感もあるが(笑。良い意味で)、
結局は気持ちよく劇場を出ることが出来る不思議。
次々にイベントが発生してなかなか忙しくて楽しいので、
是非またリピートしたい作品。