『六月大歌舞伎』2025 参 | D-DST

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独り言。

『菅原伝授手習鑑・寺子屋』


当月松竹座でも上演中の熊谷陣屋や伽羅先代萩などでも同様かと思われますが、

現代社会に於いては先ず起こり得ない、ハードな物語ですが。

しかし、
寧ろ現代だからこそ、遭遇し得ない出来事への感情移入⋯

小太郎と秀才を取り巻く登場人物たちの葛藤、慟哭、
また、恐らく己の運命を悟っていたであろう小太郎の覚悟へ、
より強く思いを馳せることができるのではないかと思います。


忠。義。礼。信。
観ている我々日本人なら、何かしら響くところがあるはず、と。

家族揃って笑顔で、
もっと違うことで「よくやったね!」と褒め合える現代に生きることが出来るありがたさ。

そんな事を考えながら観劇しておりました。


当初は六月公演は見送る予定でしたが、思い切って決行して良かったです。

寺子屋の松王丸を、菊さんで観劇出来て良かった。


相変わらず眉の表現、瞬きのタイミングまで緻密に計算された芝居。

動き自体は大きくないが、
その分、ひとつひとつの所作に込められた圧が際立つ。

近年の、時代物でも荒事系や骨太なお役を完全に見送ってしまっていたので。
いつの間にかココまで来られたのか、という感慨深さもしみじみと。

萬太郎丈も不遜で豪快な大きさが小気味良かった。
悪役なのに。


涎くくり親子(精四郎丈&片岡亀蔵丈)は、ほっと出来るクッション要員。
歌舞伎の笑いって、くどくなくてさらっと、しかし的確で気持ちが良い。


千代(時蔵丈)の扇扱いも情感伝わるところで、
所作そのものも美しく魅入ってしまいました。