夜勤の看護士さんが、案内してくれる。
「認知症のご主人が、末期がんで、在宅治療してたんですよ。
無理矢理だったんです。奥さんが連れて帰るって。
帰られる状況では、なかったのに・・。
奥さんも認知症で、子供さんもいない、ご親戚も疎遠らしくて。
居宅事業所のかたがご面倒をみておられましたけど、
大変だったんですよ。
ご主人の点滴は、はずしてしまう、酸素も必要だったのに、これも外す。
それが原因で、呼吸困難になって、何度も救急車を呼ぶ。
110番までするので、ご近所の派出所では、常連になっていたみたいで・・。」
<まさか、この度の原因は・・。>
「そう、とうとう、最悪の結果になってしまって・・。」
<ありえないですよね。何とかならなかったのですかね。>
「皆で努力はしたんですよ。
居宅事業所の職員さんなんか、夜中に何度も呼び出されて・・。
警察立ち会いで、病院に行くと、奥さんから、『あんた、誰や。』って、
ずっとお世話されてた方なんですよ。
もう、みんながお気の毒。」
<あのー、で、今、デイルームにおられる方は・・。>
「そう、その奥さんです。」
<他のご親戚は?>
「連絡しましたけど、来られないみたいですよ。」
(おー、どうしましょう。)
<では、お話を聞いてきますね。>
・・・・・・・・
<○○さん、葬儀社です。この度は・・・。>
「あ、葬儀屋さんやね。家に連れて帰ってくれるんやね、主人を。」
<はい、大丈夫ですよ。帰りましょね。
でね、奥さん、お家に、お仏壇はありますか?
お宅は何宗かわかりますか?>
「そんなん聞いてどうするん。
あのな、うちは、鎌倉時代から続いた由緒ある家やねん。
今さら、宗旨替えは、せえへんで。
あんたのすすめる宗教には、入らへんからな。」
<あ、いやいや、そういう話ではなくて・・・。
宗旨によっては、ご安置の方法が違いますのでね。>
(・・かまくら・・すごい、では、とりあえず仏式やね、
ご出身は新潟か・・、浄土真宗やろか、・・お墓はあるのですかね。・・)
<って、とりあえず、お家に帰りましょう。>
話はそれからやね、明日までに帰れるかしら・・。

✿ 気の使いすぎ。
「今日の式場は、ちょっと狭いから、
祭壇の前で、お寺さん窮屈そうやね。」
「真言さんやから、立ったり座ったり
お作法が、狭いから大変そう・・。」
「ちょっと、お世話してくるわ。」
と、お寺さんの傍で、式装束の袖やら、裾が
曲禄(寺院用椅子)や経机に引っかからない様に
様子を見ているスタッフ。
お寺さんが、お経の作法でその場に立ち上がる。
(あ、それは・・。)
お寺さんが作法を終え、座ろうとした。
「おおっ!」
その場で座るつもりが、椅子が無かった・・。
なんと、見事に尻もちをついてしまったのだ。
(ああー、どうしましょう・・。
気がききすぎて・・、余計な事を・・。
いくら狭いからと言っても、椅子を引いたら
あかんわー。
あとで、お寺さんから叱られますよね、絶対。
勘弁してくださいよー。)
