19世紀後半、イタリアの天文学者ジョバンニ・スキャパレリが望遠鏡で火星観察をしていて表面に縞模様があることを発見した。
そのレポートが英語に翻訳された際に、イタリア語のCanali(溝)を英語のCanal(運河)としてしまったため、人工物である運河があるからには作った誰かがいるに違いないと、火星人の存在がクローズアップされた。
そしてH・G・ウェルズが「宇宙戦争」を書くことでタコ型火星人がポピュラーになる。一頃はこのタコ型が火星人の定番となった。
タコ型とは冗談のようなデザインだが、実はウェルズなりの科学的根拠に基づいていた。
火星の直径は地球の約半分の大きさで惑星軌道は地球より外側なので、太陽系ができた時に地球より早く惑星として固体化し、生物の発生も早かったに違いなく、よって進化過程も地球より長く遥かに進んで頭脳は巨大化し、更に重力は地球より弱いため身体自体は貧弱なものとなる。以上の理屈から頭デッカチのタコ型火星人が誕生した。
外国人の多くはタコに対して悪魔の魚クラーケンのイメージを抱いているようで、恐怖の対象のようだが、日本では食したりする身近な存在としておなじみで、愛嬌のあるタコ型はしばらく宇宙人の代名詞のようになり、漫画とかの媒体でさかんに登場したものだった。
しかしタコ型はあくまでも火星人限定(?)であり、1960年代以降に火星探査などの調査で火星人の存在がほぼ否定されてしまうと、タコの出番は徐々に減っていった。
ジョージ・パルがウェルズ原作を映画化したのが1953年の「宇宙戦争」で、ここでの火星人はタコ型では無く三つ目の不思議な人間型造形だった。
今では宇宙人のイメージはグレイの小人のような感じに落ち着いているようだが、このデザインを急速に浸透させたのはスピルバーグの「未知との遭遇」だろう。
映画「オデッセイ」は火星移住の事故とサバイバルをリアルに描いた作品で、シリアスSFの傑作と言えよう。
似たような設定だが「火星着陸第一号」という映画では、展開がロビンソン・クルーソーとなっていた。因みに原題は「火星のロビンソン・クルーソー」。まだ宇宙計画に夢がありおおらかだった時代の映画なので、ハッピーな終わり方を迎える。
実際に火星移住計画も話題にはなっている。それまで人類は存在するのかなぁ。