鉄人は28番目のロボットしかしT-800は800番目ではないだろう | dvconのブログ

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良い奴だと思ったら悪い奴だったとか、その逆とかも往々にしてあるものだ。

肉マンだと思ってかぶりついたらアンマンだったときの驚きたるや…は、違うか…。

創作物の場合、人気が出ると主人公交代やキャラクターの変更が行われてしまう事も珍しくない。

「うる星やつら」のラムちゃんが当初ヒール役だったのがヒロインになってしまったり、昭和ゴジラもいつの間にか人間の味方になったり、「ターミネーター」のシュワちゃんのT-800も人間側にプログラム変更されてしまう。

 

児童漫画の古典的作品「鉄人28号」は、無敵の巨大ロボットが敵ロボットを次々と倒していく痛快シリーズで、現在のロボット作品の原型といえなくもない。

原作者横山光輝による当初の構想では、短期連載で謎の怪ロボット鉄人28号を主人公正太郎たちが、何とか溶鉱炉に落として退治する予定だったのだが、人気が出てきたため編集部から長期連載依頼があり、路線変更で鉄人争奪戦の末、正義のロボットになり敵ロボットとの対戦パターンになっていった。

悪役転じて…のようなものなのだが、鉄人の場合は操縦機次第で敵にも味方にもなるという設定で話は進んでいき、溶鉱炉で溶かされる運命は免れた。そういえば「ターミネーター2」でも溶鉱炉も出てきたし、プログラム次第で敵にも味方にもなるところは案外ジェームズ・キャメロンは鉄人28号を読んでいたりして。

 

その鉄人の背面ロケットは後から装着したもので、当初鉄人は飛行能力がなかった。

争奪戦の末に一時S国に奪われてしまった鉄人に、S国がロケットを取り付けそれ以来鉄人は自在に飛行できるようになった。

S国とは明らかにソビエトである。鉄人が連載されていた1950年代後半のロケット開発では、ソビエトがスプートニクを打ち上げアメリカをかなりリードしていた。焦ったアメリカのバンガードロケット失敗の連続は、映画「ライトスタッフ」で自嘲気味に描かれている。

 

ロケットとは膨大な燃料を消費して推進するシステムで、スペースシャトルを見れば明らかなように、その機体の大半は巨大燃料タンクであり、燃料を使い切ると切り離されてしまう。宇宙空間に出た後シャトル自体は惰性飛行していくことになる。

ロケット推進とは絶大なパワーを持つ反面、かくも燃費の悪いものなのだが、鉄人のロケットは小型でしかも燃料切れを起こしたことの無い不思議なロケットなのだ。

というより鉄人28号自体が謎だらけの存在ではある。

         

太平洋戦争末期に南海のある小島で日本軍がひそかに開発していた兵器が鉄人だったのだが、その島は米軍の空襲で研究はすべて灰燼と化した。

そして敗戦となり、開発者の誰か一人が乗鞍岳山中に秘密研究所を作り上げ完成させたロボットが鉄人28号になる。その開発者が誰なのか正体は不明のまま話は鉄人争奪戦に移行していく。

最初はとにかく謎の怪ロボットだったので細かい設定はどうでも良かったのであろう。

その鉄人のエネルギー源なのだが最初は雷により稼働を始める描写があったが、それはスターターのようなものなのだろうか、その後はエネルギーが何なのかの描写は全くない。

鉄人自体の大きさも実に不可思議で、10メートル以上の巨大ロボットかと思うと、初期には部屋の中に入っていたりして伸縮自在かと思うくらいだ。

謎と言えば小学生くらいの主人公少年探偵(?)金田正太郎も、学校に通ってないどころか、拳銃の名人で車の運転もできて鉄人の操縦もするというスーパー優等生少年、それこそショタコンアイドル元祖に相応しい。

しかし昔のマンガはこんな調子で良かったのである。実際にそんな少年がいる訳もない、「Akira」の金田正太郎はひとつのアンチテーゼだろう。

正義の味方となった鉄人に向かってくる対戦ロボットで、最大の敵はブラック・オックスだった。電磁波を発生させて鉄人のリモコン電波をカクランさせ操縦不能に陥れる。

このブラック・オックスのフォルムは実にシンプルで、アールデコ風にも思えるモダンなデザインだった。

人気の鉄人は当然ながらアニメーションも作られるものの、初期のモノクロ作品以外は原作を離れて独自の作品となっている。

原作者横山光輝もロボット物やSF的な作品、少女物等バラエティな作品群を描き続けていた時期もあったが、ある時期を過ぎると大河時代劇に興味が移って、画風も変化していくことになった。

晩年は寝たばこが原因とはいえ悲劇的な最期を迎えることになったのは残念でならない。