スノーシューを履いてたっぷり積雪のある山を歩く。
普段なら頭の上にある木の芽が目の前に飛び込んでくる。
その中でてかてか輝いている冬芽がある。
トチノキの冬芽(頂芽)だ。
実際、指で触れてみるとねばねばしている。しばらくこのねばねば感が取れない。
なぜ、これほどまでまるでポマードで固めたようにてかてかさせなければならないのか。
一説には、冬芽を食害や乾燥から守るというのがある。
なるほどこれほど粘着性が強ければ動物にしろ野鳥にしろ食べる気にはなれないし、食べようとしても無理な話だ。
さらに山道を歩いていく。
ブナの冬芽に出会う。
細長い水滴形だが、よく見るとうろこのような芽鱗に覆われている。
これをめくっていくと18から26枚もあるようだ。
これもまた用意周到とも思える冬芽だ。
当然食害から守られるだろうし、これだけの芽鱗に覆われていたら寒さからも身(芽)を守ることができるだろう。
芽鱗に覆われているのはブナだけではない。
イタヤカエデやウリハダカエデなどのカエデ科やブナやクリなどのブナ科それにガマズミやツクバネウツギといったスイカズラ科などにも見られる。
さらに歩き進むと裸の冬芽もあった。
例えばエゴノキだ。
まるで食べてくださいと言わんばかりの裸芽である。
だが、よく見るとその裸芽のすぐ下には、小さな突起のようなものが見える。
これが予備芽である。
たとえ、冬芽(予備芽に対して主芽という)が食べられたとしても予備芽が発動する。
本当に用意周到なのだ。
さらに歩き進めるとモフモフの毛に覆われた冬芽に出会える。
タムシバやコブシといったモクレン科によく見られる姿だ。
まるで寒さから身を守るため厚手の毛皮コートに覆われているように見える。
これが春になると毛がすっかり取れ、大きな白い花を咲かせるというのだから本当に見事と言える。
クリの木に出会うとしばしばまだ若い木(幼木)や枝先の葉が枯れていても落ちないでいる姿に出会う。
クリやブナなどブナ科にしばしば見られる枯凋性(こちょうせい)という性質だ。
これもまたはっきりとしたことはわかっていないようだが、一説には冬芽を食害などから守るためのようだ。
冬芽は、樹木にとって大切な命のカプセルだ。
それだけに冬芽を守る姿は多様で実に工夫されている。