手を伸ばして [ステップ3] | カホルのブログ

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ス/キ/ッ/プ/ビ/ー/トを愛するカホルが思いつきで進めるブログです。
二/次/小/説を始めました。知らない、苦手という方は閲覧をお控えください。
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久しぶりの更新は、
Papillon -coterie-』 のハルカさんと、ほのぼの正統派ラブを自家発電しようぜ!を合言葉に発動したコラボリレー企画です。
本日は第三話す。
このお話は、同日同時刻にキョーコサイド、蓮サイドの話を更新していきます。一話ごとに視点を交代してお話を進めていきます。
不定期更新ですが、よろしければどうぞのんびりお付き合いくださいませ。





[ステップ3] sideRen;は、ハルカさんのお宅でお楽しみくださいね。 








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Side Kyoko



ほんの小さな、だけど確かな恋人同士の証。


「キョーコちゃん、あそこに入ろう」


ゆらゆらと揺れる、付けられたばかりのストラップを目の前でかざしていると、ふいにぎゅっと手を握りしめられた。
指し示され場所に目を疑ってしまった。敦賀さんが、指を差したのはゲームセンター。


「コーン…あそこ、何のお店だか分かってるの?」

「分かってるよ」


思わず尋ねると、勿論と敦賀さんは頷いた。


「写真が撮れたりぬいぐるみを買ったりするところだろ?」 
 

自信満々で答えられて頭痛がしてきた。・・・やっぱり分かっていないのね。
何と説明したものかと頭を抱えていると、片側から冷気が漂ってきた。


「ヒィ」


一体どこでイラツボをついてしまったのか、きゅらきゅらと音がしそうなほどの極上の笑顔を浮かべる敦賀さんに、引きずられるようにしてゲームセンターの中へ連行された。


「・・・・・」


騒々しい音楽が流れる中、呆然と立ち尽くす敦賀さんに恐る恐る声をかけた。


「写真が撮れるのはプリクラといってお遊び的な写真なんですよ。それにぬいぐるみは買うのじゃなくて獲るんです」

未だ茫然自失状態なのか、敦賀さんは私の説明をただ黙って聞いていた。


「それにメインはコンピュータゲームの機械で遊ぶことで…って聞いてます?」


本当に耳に説明が入っているのか疑問に思えてきて尋ねると、再び繋いだ手を強引に引っ張られた。


「聞いてるよ。プリクラはお遊びなんだろ?じゃ、遊びに来てるんだから丁度いいじゃないか」 


にこりと微笑んで、再び財布を取り出して某有名大学の創設者がプリントされた紙幣を出して固まった。勘違いもここまでくると可笑しくてくすっと笑ってしまった。


「ここもお札じゃ無理ですよ」


自分の財布を開いて小銭を取り出そうとして、その手が止まった。そうだわ、忘れてた。


「どうしたの?」

「あー、いえ。私も細かいのがなくなってしまったので…」 


仕方ないので辺りをきょろきょろと見まわした。


「あ、あった」

「これなら俺でも払えるよ」


両替機の前に辿り着くと、お札を取り出す前に敦賀さんに財布を押さえられてしまった。
声をかける間もなく、お札を機械に投入されてしまって、案の定、数枚のお札と大量の硬化がジャラジャラと音を立てて落ちてきた。
両替したお金でぱんぱんに膨れ上がったお財布を、四苦八苦しながらポケットに押し込む敦賀さんに、くすくすと声を立てて笑った。


「ほら、撮ろう」


誤魔化すように促されて、これ以上笑うのも可哀そうなので一緒にプリクラの機械があるコーナーへと戻った。


「…あれ?キョーコちゃんも初めて?」


敦賀さんが、小銭を機械に入れて垂れ幕の中に二人で入った。音声に従い、心もとない動きで機械を操作していると少し驚いたように尋ねられた。


「…はい。あんまり親しい友達がいなかったので…それにモー子さんには断られてしまって」


中学までは、友達と呼べる人は一人もいなかった。初めてできた親友のモー子さんは、恥ずかしがり屋さんだから一緒には撮ってくれなかったし。
敦賀さんはともかく、普通の学生をしていた私が初めてなのはやっぱりおかしいわよね。そう思うと、心配なんてさせたくないのに表情が曇るのを止められなかった。


「じゃぁ、初体験だね。俺もそうだから一緒に出来て嬉しいよ」


優しい声音で、顔を覗き込むようにキョーコちゃんは?とこてりと小首を傾げられて頬がかっと熱くなった。
・・・そっか、もう一つお揃いができちゃった。


「・・・私もです」


この想いを伝えたくて、小さくつぶやくように囁いた。
その直後、私の返事を待ち構えていたようにカウントダウンが始まる。
えっと思った瞬間には、敦賀さんに抱き込まれ頬をぴたりと合わさせられた。私の熱が伝染したのか、二人して頬を染めたままゼロカウント。
そのまま、すぐに次のポーズを求められてどうしようとわたわたしていると、不意打ちでちゅっと頬にキスを落とされた。
待ってぇ!と思うのに機械は待ってはくれない。無情にも、再びシャッターがおりる。


「な、な、な、な・・・」


あまりの出来事に口をパクパクさせていると、今度はその口をはむりと塞がれた。そして、またパシャリ・・・。
ぷしゅーっと音を立てて、脳内がパンクしている間に、敦賀さんはうきうきと恥ずかしい写真に落書きをしていた。
あれよ!首から上を見なければいいのよ!そう切り替えて私も画面に落書きを施していく。やってみると、これが結構楽しい。


「これ何?」


悪戯心が湧き上がって、つい書いてしまった秘密のマーク。夢中になって書いていたから、見られていることに気付かなかった。せっかく治まっていた頬の熱が再び集まってくる。


「な、何でもないです」


どうやら敦賀さんは、このマークの意味を知らないみたい。慌てて消そうと思ったのに、それよりも先に敦賀さんに決定ボタンを押されてしまった。
なんでこんな恥ずかしい事をしちゃったのかしら!そして、意地悪な敦賀さんにむぅっと唇を尖らせた。


「もう!強引なんですから」


まだ印刷したてで、ほかほかのプリクラを見ると見たことのない言葉。大きく二人をハートマークで囲って、何かメッセージが書かれていた。


「えっと…『AMORE A PRIMA VISTA』??」 


・・・イタリア語?聞いたことのない文章だわ。


「イタリア語で『一目惚れ』って意味だよ」 


さらりと言われたセリフにぽんっと頭から湯気が出るかと思った!


「あぁあぁ、大丈夫?」 


全然心配そうではない声で労わられてむきーっとかみついた。

 
「つ、コーンはいちいちキザなんです!!」 
 
「あははは」 


紅い頬を押さえながら、もう絶対あの傘のマークの意味は教えてあげないんだから!と心に誓った。恥ずかしさでいったらどっこいどっこいなのは棚に上げて。


「ほら、次に行こう」 

真っ赤になった頬を押さえていた手を取られ、ずるずると引っ張っていかれる。


「え?え?」


照れくさくて悶えているうちに、敦賀さんは意気揚々と、ガラス張りのケースの中に可愛らしいぬいぐるみの入ったボックスにコインを投入した。

… 
 
…… 
 
……… 


「ぷっ」 


敦賀さんは黙々とボタンを操作し、上へ下へ、左へ右へ、ひたすらクレーンは動いて、ぱんぱんに膨れ上がったお財布は、どんどん、ぺたりと凹んでいくのに、ぬいぐるみはまるで根が生えたように宙に浮くことすらなくて、我慢できずに噴出した。


「今度は私がやってもいいですか?」


実は、結構自信があるのよね。かわいいモノは大好きだけど、なかなか経済的な余裕がなくて、よく、これにお世話になったのだ。安い金額で、欲しいモノが手に入る夢の箱なのよね!


「・・・キョーコちゃん?」

「無駄にいくらも使えないんです!!」 

「はい…」 


声をかけてきた敦賀さんをぴしゃりと黙らせる。しっかり集中しないと、獲物に逃げられちゃうわ!
奥行、幅、ぬいぐるみの位置、アームの幅。見た感じでは、バネがちょっとゆるめよね。お客が入るところはこれだからイヤだわ!
しっかりと見極めて、コインを投入。ゆっくりと、今までびくともしなかったぬいぐるみが持ち上がる。穴に落ちるまでは油断できないから、息を呑んで見守った。
ぽすりと、取り出し口にぬいぐるみが落ちてきたところで、達成感から笑みが零れた。


「見てください。獲れましたよ」


苦労して、獲得したぬいぐるみは愛着も違う。かわいくてぐりぐりと頬ずりした。
よかったね、と一緒に喜んでくれた敦賀さんの表情はちょっと複雑そう。
ううう。ムキになりすぎちゃったかしら。呆れられちゃったかなと、不安になっていると腰に腕を回されてパンチングマシーンの前まで連れてこられた。


「コーン?」


不安になって上目遣いに敦賀さんを見上げると、いたずらっ子の表情でにこりと微笑まれた。


「1位を獲ったら女神の祝福のキスをちょうだいね」 

「ふぇ?え?わ、私から?!」


とんでもないおねだりに、頬を朱に染めて、わたわたしていると敦賀さんはOKも出していないのに、勢いよくパンチングマシーンに拳をめり込ませた。


バチコーーーーーーーーーッン!!!!!!バキッ 


「「え?バキッ?」」 


不可解な音がして、敦賀さんと声がハモった。・・・パンチングマシーンは、倒れたまま戻ってくる気配がない。


「きゃっ」


体がいきなり宙に浮いたかと思うと、すごい勢いでゲームセンターから連れ出された。まさかのお姫様抱っこで、ゲームセンターをトンずらした事実にじわじわと笑いが腹の底から込みあがってきた。


「あははははは。もぅコーンたらめちゃくちゃ」


困ったように佇む敦賀さんの横でひとしきりお腹を抱えて笑った。
こんなにゲームセンターが楽しかったのは初めて。きっと好きな人と過ごす時間は、どんなに格好悪い姿を見せられても、どんなにムードのない場所でも、とても素敵な時間に変わるのね。
・・・あのお店には二度と行けないだろうけど。