[創作 アランSS] 真夜中の決意 | てんじゅのひとりごと

てんじゅのひとりごと

主にイケメン王宮の呟き、自身の創作のブログになります。私自身、妄想好きなので創作は暴走するかもしれませんが、そのあたりは温かい目で見て頂けると光栄です。最近はイケミュをきっかけにRush×300の結城伽寿也君にもハマっていますwww

『父さん、母さんっ・・・・・』

満月の光に照らされたベッドに横たわったまま深い眠りに落ちたアランの頬に一筋の涙が伝っていた。
叫びたいのに声に出せない苦しさにアランは思わずはっとして目を見開いた。

そこは見慣れた自分の部屋の天井だった。

(夢・・・か・・・)

体を起こすと頬に冷たいモノが伝う事に気付いたアランは指でそれを拭った。そこで初めて自分が涙を流していた事に気付く。

顔を上げると開けっぱなしのカーテンから満月が光を放っていた。月明かりで灯りを点けなくても十分部屋の中を見渡せた。静まり返った自分の部屋は何だか寒くてアリサが居ないだけでこんなにも違うのだと実感させられる。

時計を見ると時はもう真夜中。アランにとってこれだけ眠り込むのは珍しい事だった。

久しぶりに夢で見た「あの日」。

(今日は満月・・・か・・・)

アランは満月を見上げそっと瞳を閉じる。
すると意識が自然と「あの日」に引き戻されていった・・・。



真っ赤に燃え盛る自分の家。この小さな手には体温の無い冷たくなった両親の肌の感覚しか残っていない。

さっきまでこの手に抱いていた両親の亡骸すら抱える事が出来なかった・・・

(くそっ・・・・・!!)

アランは両親の肌の感触が残る手をぎゅっと握り地面に叩きつけてその場に蹲った。

今朝まで当たり前にいた両親が何故目の前で冷たくなっているのか・・・

夢か現実なのかが分からず唖然としているうちに自分達も炎に飲み込まれ、冷たくなった両親を置き去りにして逃げるのが精一杯だった。

両親を手にかけた人間はもちろん憎い。でもそれ以上に騎士になる事を目指していたにも関わらず肝心な時に何も出来なかった自分に腹が立って仕方がなかった。

(この手で大切な人を守る事は愚か葬る事すら出来なかった・・・)

俺は自分の無力さを痛感した。大切なものを守りたくて騎士を目指していたのに、その大切な人達を目の前にしても何も出来なかった自分。子供だから仕方ないなどという言い訳はしたくない。騎士になる事を掲げながらも俺は「騎士」の本質を理解していなかった。

剣術には自信があった。周囲からも見込みがあると言われ自分に驕りもあった。

このままいけば自分は強い騎士になれる・・・

それまでの俺は強くなる事、騎士になる事を安易に考えていた。
でも本当はそうでない事を奇しくも両親の死によって知る事となった。

剣術がいくら上手くても大切なものを守るのには全く役に立たない事。
剣を振るうだけが騎士ではない事。
そして『強い』という事は決して「力」だけではないという事・・・。

あの時ほど「強くなりたい」と思った事はない。初めて自ら強く望んだ事だった。

両親が何かの陰謀に巻き込まれた事はあの光景で一目瞭然だった。
本来なら怒りの矛先は両親を手にかけた人物に向くはずがその矛先は自分自身だった。
真実なんてどうでも良かった。

俺にとっては両親を失った事が現実でそれを救えなかった事が真実・・・
気がつくと俺は大粒の涙を零しながら夜空に向かって言葉にならない声で泣き叫んでいた。


その後、俺はレオと共に叔父の家に引き取られた。俺は善意ぶった叔父の笑顔に胡散臭さを感じ俺達を引き取った事にも裏があると思い叔父の言う事は一切信用していなかった。それはレオも感いているはずなのに、それでもレオは叔父に人当たりが良くて俺にはレオの事もだんだん理解出来なくなっていった。

ある日俺達はその事で衝突した。その時初めてレオが自分と守りたいモノを守る手段が違う事を知った。一緒に騎士になるとばかり思っていたのに、いつの間にかレオは違う方向を向いていた。挙句、このクロフォードの家を継ぐとも言い出した。

宮廷官僚の家柄だったにも関わらず両親は「騎士になる」という俺達の夢を応援してくれていた。そんな協力的な両親の口からこの家を守って欲しいという言葉を聞いた事が無い為、家を継ぐという選択肢は俺の中に存在すらしなかった事だった。

レオの口から聞かされた時は頭に血が上るほど腹が立った。亡くなった両親が望んでいた「騎士」という夢を捨ててまで官僚になる意味が何処にあるのか俺には分からない。

しかし「官僚になる」と言ったレオの表情に俺は引っ掛かりを覚えたがレオはすぐ表情を変えて「だからお前は騎士になれ」と不気味なほど穏やかな笑みを浮かべながらつけ放すように俺の背中を押した。

ここはもう自分の居場所ではないと確信した俺は後日叔父の家を飛び出した・・・。


そっと瞼を開いて高く昇った満月を見つめていると足元にふわりとしたモノが触れた。
視線を落とすと眠っていたはずのアーサーがアランの足元に体を擦りつけていた。

「悪い、アーサー。起こしたか?」

その場にしゃがみ込みアーサーの頭を撫でると嬉しそうにアランの頬を舐め回すアーサー。

「お前、くすぐったい・・・」

月明かりの下でじゃれ合ううちに疲れたのかアーサーは胡坐を掻いたアランの足の中に丸くなって大人しくなった。そんなアーサーの体を撫でながらアランはあの時の事を思い返す。

レオの俺をつけ放すような「あの笑み」の意味・・・

今となっては聞く事もはばかれるがレオは何らかの意図を持ってあの時、叔父の元に残ったのだと俺は思っている。それが何なのかまだ分からない。
アリサから聞いた「レオは眠れていない・・・」という事も気にかかる。

あいつは何に苦しんでいる?
ヘラヘラしたあの笑顔の裏に何を隠している?

俺が目を背けた両親の死の真相と真実をあいつはもしかしたら何か掴んでいるのかもしれない。

だとしたら・・・

あいつだったらどうする・・・? 

もし俺なら・・・


そこまで思ってアランはアーサーを撫でる手を止めた。


もう大切なものは絶対失わない。アリサはもちろん・・・

「あいつ」も・・・

アランは窓から降り注ぐ月の光を浴びながら心の中で呟いた。

~END~


お読み頂きありがとうございました。

この部分のお話は本当に個人の妄想の域でしかない事なので読んで思う事、感じる事は多々あると思いますがあくまでこれは私の妄想ですので、何度も言いますがそこはご了承下さいw

とある歌詞を元に・・・と書いたけど、このSSの元になった歌詞はきっとご存じの方は同じ年代かもwwwwww

マッチの「ミッドナイトシャッフル」♪ 年末に歌番組で懐かしさに浸っていたんですが、よくよく歌詞を調べてみたら悪くないな~と思って妄想に浸って考えてみた( ´艸`)

アランが「あの日」の事をどう捉えているのかは本編では一切触れていなくて、意外にあっさりしてるのかな?とも思うんですが、やはり当時は子供だった訳でそうそう割り切れる事ではなかったはず。

そこで思ったのはきっとあの時凄く自分を責めたんじゃないかと・・・。守る事に凄く拘っているのは本編でから十分お分かりになりますよね。

そんなところからこんなSSにしてみました。

レオSSもありますのでよろしかったらそちらもどうぞ~(*^▽^*)

「レオSS」