旅の二日目、せっかくこの季節に伊豆修善寺まで来ているので、かねてより一度愛でたいと思っていた河津桜を見に行くことにしました。修善寺の町を後にして、伊豆半島の真ん中を縦貫する国道136号線から414号線を南下し、浄蓮の滝と新天城トンネルを抜けると、そこはもう河津(かわづ)町(静岡県賀茂郡)です。
河津町までは約1時間でスムーズに到着したものの、やはり一年のうちほんのひと時しか見られない貴重な花ゆえか、平日にもかかわらず町内に設けられた有料駐車場はどこも満車で、順番を待つ長い車列ができています。誘導係のひとに、川をはさんで対岸にも駐車場があると聞いて探し回り、やっと一台分見つけて停めることができました。
車を下りるとそこはもう一面に咲き乱れる河津桜の木の下で、駐車場のすぐ横の“峰小橋”のうえに立つと、こぼれんばかりに川の両岸を飾る花の様子がひと目で見渡せます。
河津桜は伊豆の温暖な気候のせいか、2月初旬から咲きはじめる早咲きの桜で、この日はパンフレットによれば“第32回河津桜まつり”の最終日(2月28日)でしたが、今まさに満開の木もあればまだたくさんの蕾を抱える木もあり、もう一週間くらいはじゅうぶんにお花見を楽しめるような開き加減でした。
河津川の両岸には約850本もの桜の木が植えられ、河津町全体では約8,000本もあるのだそうです。この季節、町全体が桜色に染まるなんて素敵ですね。
ご覧のとおり河津桜は染井吉野にくらべると花弁の色がもう一段濃いピンク色で、より華やかな印象です。
こちらが今も町内で大切にされている河津桜の原木です。個人宅の所有で、由来を読むと、今から67年前の1955(昭和30)年にこちらの飯田家のご主人が、河津川の河川敷の雑草の中から小さな原木を偶然発見し、ご自宅の庭に植えたことが始まりなのだそうです。その後の学術調査で今までになかった園芸新種であることが判明し、1974(昭和49)年に正式に“河津桜”と命名され、河津町の木にも指定されたということです。
見上げると、蕾も花も枝の下向きについていて、満開に咲く様子はまあるい手毬のようで、より豪華に見えます。
桜のトンネル~
河津桜は約1ヶ月と花期が長いのも特徴だそうで、そのおかげで満開のこの景色を見ることができました。夜間には桜並木のライトアップもあり、またこのお花見ロードは河津川が相模灘に注ぐ今井浜まで約4kmもつづいているそうです。河口に近づくにつれて花見客がどんどん増えるので途中で引き返しましたが、早春旅の最後に出会った河津桜、忘れられない記憶のひとつになりました。
yantaro