レスター手稿f.1rには、地球から太陽までの距離と地球の大きさを発見したのはレオナルド自身であると書かれているが、その答えはこの手稿には書かれていない(失われた手稿のどこかにあるのかも知れないが)。

レスター手稿f.1r
地球から太陽までの距離を最初に証明し、暗室に穴を開けて一筋の太陽光線を通すことによって、その量を発見し、さらに水球の中心によって地球の大きさを発見したのは、私である事を記録する。
ここでは、太陽が我々の半球の真ん中にあるとき、いかにして東西の相対する地域が同時にそれぞれ水に太陽を映すか、ということを示している。北極と南極も同様である。もし我々の半球でこのように円周上に住人がいるならば、どのような場所でも、動く人も静止している人も、太陽が水に反射するのを見る…。
レオナルドは、ガリレオのように望遠鏡を使って観測をしていなかったので、地球を宇宙の中心とする「天動説」に基づいた考え方をしている。マドリッド手稿Ⅱのレオナルドの図書目録には「プトレマイオスの宇宙論」があり、古代ローマ時代の天文学をベースにしていたと思われる。

プトレマイオス的宇宙
プトレマイオスの宇宙論は地球が宇宙の中心にあって、太陽やその他の惑星が地球の周りを回るという、アリストテレスやヒッパルコスなど、それ以前の古代ギリシアの天文学の集大成である。
球体である地球の周りを、月、水星、金星、太陽、火星、木星、土星、恒星の天球という順番で円を描いて回転しているという宇宙観は、コペルニクスが現れる16世紀まで続いた。
最新のテクノロジーを手にした私たちがイメージする現在の宇宙観とはどういうものか?IPMU(数物連携宇宙機構)の村山斉博士の著作「宇宙に終わりはあるのか?」によれば、137億年前のビッグバンの残り火を観測することが出来、更に宇宙の膨張は加速している。ハッブル望遠鏡等で数十億年先の銀河まで撮影可能で、しかもこの宇宙の質量=エネルギーを占める星や銀河の割合はたったの0.5%で、残りは水素やヘリウム原子が4.4%、ニュートリノ0.1~1.5%、暗黒物質と呼ばれる目に見えないもの22%、そして正体不明の暗黒エネルギーが73%という結論になっているという。
私たちの暮らす地球は時速1674kmで自転しており(赤道付近)、秒速30km(時速10万8千km)で太陽の周りを公転、同時に秒速220km(時速79万2千km!)という途方もないスピードで銀河系を回っているのである。そして銀河系はアンドロメダ銀河、大マゼラン雲などからなる局部銀河群を含む「おとめ座超銀河団」に属している…。個人的には、地球が動かない天動説の方が安心な感じがするが…。
古代ローマ時代から2000年以上を経て、もうすぐ宇宙創世の謎の一つが解けるかも知れない。
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