モナ・リザの微笑みが放つ感情をどう表現しているか?というようなテーマのコーナーで、この「ライオン的特長を持つ顔」のデッサンが取り上げられ、ライオンのような気性の人物は、口をへの字にしてまさにライオンに似た表情をしている、というものだ。右下にさらっとだがライオンのスケッチも描かれており、レオナルドが言いたいとこが良く分かる素描となっている。

ひげを剃った男性の頭部の素描とライオンの頭部の簡単なスケッチ
1505~1510年頃(ウィンザー素描集RL12502)
レオナルドは1480年代末にかけて幅広く解剖学や生理学の研究を進めていた。例えば脳の構造を示した図を描き、五感からの感覚が認識される「インプレンシーヴァ」→魂の座「共通感覚」→記憶の領域「メモリア」というように情報が伝達され、処理されていく。そして「共通感覚」から出される命令は「霊:Spirito」と呼ばれる媒体によって支配される器官に運ばれ肉体を動かすと言う考え方を論じている。
また、レオナルドは霊と肉体の外的特徴は直接結びついていると考え人相学も研究した。
そして、ライオンのような顔の持ち主は、ライオンの性格と共通点があるということに着眼している。
こちらは「最後の晩餐」の聖ピリポの習作であるが、「あなたがたのうちの一人が私を裏切ろうとしている。」というイエスの言葉を引き金とした聖フィリポの心の動き(動揺と戸惑いと悲しみ)が、顔の筋肉、唇や目の動き、身振りとして表現されている。

最後の晩餐の聖フィリポのための習作
1495年頃(ウィンザー素描集RL12551r)
1440年にフィレンツェがミラノ軍を打ち破った戦いを描いた「アンギアーリの戦い」の素描では、戦いの狂気の中での兵士の心が読み取れる程の迫力だ。その叫び声、眼差し、額に深く刻まれたしわの一本一本が作り出す陰影…、まるで映画のワンシーンのような臨場感を醸し出しているのだ。

2人の兵士の頭部の習作
1503~1504年(ブタペスト、国立美術館)