マルコ・ポーロの東方見聞録 | レオナルド・ダ・ヴィンチのノート

レオナルド・ダ・ヴィンチのノート

万能の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチの活躍を紹介していきます。

アンブロジアーナ図書館の副館長ピエル・フランチェスコ・フマガッリ氏による講演会に触発されて、全訳マルコ・ポーロの東方見聞録「驚異の書」fr.2810写本(岩波書店)を読んでみた。この写本はフランス国立図書館所蔵の中世フランス語版で、ジェノヴァの牢獄の中でマルコが物語作者ピサのルスティケッロに書き取らせたとされる原本にきわめて近い位置にあるもの。

有名な日本についての記述はfol.72にある。

サパング(日本国)は東方の島で、大洋の中にある。大陸から1500マイル離れた大きな島で、住民は肌の色が白く礼儀正しい。また偶像崇拝者である。島では金が見つかるので、彼らは限りなく金を所有している。しかし大陸からあまりに離れているので、この島に向かう商人はほとんどおらず、そのため法外の量の金で溢れている。

実際のところマルコ・ポーロは日本には来ておらず、中国で聞いた噂話を書いたらしい。
1271年にイラン・中央アジアを経て上都へ、皇帝フビライに謁見。その後、17年間元に仕え、中国周辺の各地を巡り、揚州では3年間行政官を務めた。1292年、泉州からイランのイルハン朝を経て帰国したという。この長い旅の記録の中には、このようなものもある。

レオナルド・ダ・ヴィンチのノート-東方見聞録f.29v

fol.29v
樹木の生い茂った丘と、岩山の突出部が交互する風景の中央に、3つの驚異の民が描かれている。これらの無頭人や影足人や一眼巨人たちは、テクストではほとんど述べられてはいないが、むしろカンピシオン(甘州)地方と甘粛行省のエルギユル王国の間に広がっている荒涼とした未開の地域を想起させている。そこでは「夜の精霊がしゃべる」のが聞こえてくるという。

$レオナルド・ダ・ヴィンチのノート-東方見聞録f.55v

fol.55v
カラヤン地方には、見るだけでぞっとするほどの巨大な「大ナミヘビ」や大蛇がいるという。これらの爬虫類は「頭の近くに2本の短い脚がある」というが、おそらくガンジスワニの一種であろう。これらの大蛇は画家の絵筆によって伝統的な龍に変貌しており、ちょうど中世の想像力が、伝説的幻想に富むプリニウスやソリヌスのような古代の証言を混入しながら好んで作り上げたイメージにそっくりである。


レオナルド・ダ・ヴィンチのデッサンにもドラゴン等の想像上の動物が登場する。これはウィンザー素描集RL12496の「河川の航行についての寓意」。舟、木のマスト、舵手(狼?)、羅針盤、鷲と地球儀は、それぞれ教皇、皇帝、フランス国の権力、メディチ家、スフォルツァ家あるいはボルジア家の象徴的表現であるとして様々に解釈されてきたが、レオナルドも何か古代の書物からインスピレーションを得ていたのかも知れない。

$レオナルド・ダ・ヴィンチのノート-ウィンザー素描集_河川の航行についての寓意