第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
ロボットと言うとすぐ連想してしまうのが、1950年代にSF作家アイザック・アシモフが提唱したこのロボット三原則だが、どうやら広い意味では人間や動物の動きを真似たオートマタやからくり人形もロボットの範疇に入るらしい。
アトランティコ手稿f.579には甲冑型の自動機械のデッサンが描かれていて、この紙葉には滑車装置や歯車、甲冑のスケッチと共に興味深いテキストが記されている。
「古代ローマにこのような装置があっただろうか?」
ルネサンス期の学者達と同じようにレオナルドもまた古代ローマ時代の書籍を良く読んでいた。アレキサンドリアのヘロン等の記録によれば、古代ローマ時代以前から自動機械は科学者や哲学者達の心を魅了してきたことが分かる。レオナルドもヘロンのことは知っていたに違いない。
1957年にカルロ・ペドレッティ氏が手稿の中のデッサンに注目したのがレオナルドのロボットについての研究の始まりだったが、ようやく2002年になってからNASAの科学者マーク・ロスハイム氏がフィレンツェ科学史博物館との共同作業によって再現模型を完成させている。
そして、こちらは1997年にフィレンツェでガブリエレ・ニコライ氏が再現した“ロボットの騎士”。

この機械仕掛けの人型装置は、この展覧会で展示されて世界を巡回している。
レオナルドが作った自動機械としてもうひとつ有名なものは、ライオン型ロボットである。
ヴァザーリやロマッツォの記録によれば、「フランソワ1世の目前で、レオナルドは精巧な機械仕掛けのライオンを動かした。ライオンは宮殿広間を横切り、歩みを止めると胸を開いた。胸は百合などの花々であふれていた。}この話を裏付けると思われているデッサンがマドリッド手稿Ⅰに記されている。

マドリッド手稿Ⅰf.90v
綱naがneにまでさがったとき、脚dはheの高さにまであがるだろう。そして綱eがfにまで達するとdは再びさがるだろう。

マドリッド手稿Ⅰf.91r
こちらはレオナルド・ダ・ヴィンチ~天才の実像~展でも展示された、ルカ・ガライ氏によって再現されたライオン。当時の自動機械の技術をもとに、こういう設計だったのでは?と推測しているらしいが、何となく腑に落ちない映像ではある。
レオナルドは解剖や運動力学から人間や動物の筋や筋肉、骨の関節部分の仕組みを学び、機械仕掛けの装置を考案した。実際に製作したのかは定かではないが、おそらくスポンサーを喜ばせるために宮廷宴の余興に使用したか、舞台の演出用に使用したと考えられている。